エディントンへようこそのレビュー・感想・評価
全69件中、1~20件目を表示
アリ・アスターが広げたハイコンテクストな風呂敷
アリ・アスターにしてはコメディタッチなのが意外だったが、後味はやっぱりアリ・アスター……エンドロールで胸の中が薄灰色の雲に覆われた。
中盤まではコロナ禍のアメリカの田舎町の様子が淡々と描かれる。マスクについてのやり取りなど、日本もアメリカも大差ない。周囲の人間の描写が断片的になされるが、点と点が繋がらない段階なのでやや冗長に感じる。ホアキン演じるジョーの家庭環境には同情するが、主人公なのに今ひとつ感情移入出来ない。なんか適当に市長選に立候補して、部下に選挙活動手伝わせたりするし。
ジョーがホームレスを撃ち殺してから、ようやく気持ちが物語の波に乗った。
この物語では、現実に存在するいくつかの対立軸が描写される。コロナ禍におけるマスク。陰謀論。人種間の対立。
社会問題を映画のテーマにする場合、大抵はいずれか片方の主張に正義の色付けがなされる。ところが本作ではそういった偏りがほぼないように見えた。
監督がやりたいのはいずれかの主張に軍配を挙げたり解決策を提示したりすることではなく、対立そのものを俯瞰して滑稽なものとしてこき下ろすこと、分断を深めてゆくアメリカ社会の愚かさを浮かび上がらせ、馬鹿らしいこととして嗤うことなのかもしれないと思った。
「お約束」を避けた展開が、意外性を生むと同時にこちらをモニョらせる。
主人公のジョーは「この町にコロナはない」と言ってノーマスクを主張するが、結局感染してしまう(途中から咳をしたりコーヒーの味がわからなくなって吐き出していたりした)。殺人を犯し、その罪を部下になすりつけようとした後は、正体不明の暗殺者に追い回され瀕死の重傷を負わされる。こうした彼の受難は因果応報として描かれているのかと思いきや、ジョーは半身不随とはなるが生還し、思惑通りエディントンの市長になる(ここで、取って付けたような解決ムードの感動的な音楽が流れたのは笑った)。
彼の殺人行為は裁かれない。プエブロの捜査官がアルファベットの書き癖から彼が犯人だと見破り、ジョーの卑劣な行為への裁きを期待させるが、彼はジョーと暗殺者の撃ち合いに巻き込まれて死んでしまう。
ジョーを襲った暗殺者たちは、あまりにプロ集団過ぎてアンティファと言うには違和感を覚えたが、その正体についての明確な説明はないままだ。
唯一まともで善良な人間だったプエブロの捜査官(次点はジョーの部下2人、それ以外の登場人物は皆どこかおかしい。でもアメリカに実際いそうだから怖い)の死。ジョーは妻ルイーズをカルト教祖ヴァーノンに寝取られ、自分とのセックスを拒んでいた彼女がヴァーノンの子を宿すという屈辱を目の当たりにした。
爆発から生還したかつての部下のマイケルは暗い荒野で射撃の練習をする。もしかしたらジョーによって濡れ衣を着せられたことに勘づき、復讐の準備をしているのかもしれない。
正義が葬られ、最も身近な人間関係にさえ繕えない分断が残ったまま物語は終わる。
正直、風呂敷が畳まれていない感がある。ラストに未解決の事項を残したり顛末をボカしたりして観客に考えさせる、という手法はよくあるが、それが効果を発揮するのは匙加減次第だ。観る側の好みとの相性もあるだろうが、私にとって本作はとっ散らかったまま終わったという印象が拭えない。
人種差別、アンティファ、BLMなどアメリカの社会問題が羅列されるが、それらの要素について監督なりに紐解くことなく絡まったまま差し出されたような気分だ。このとっ散らかって何も解決してない感が近年のアメリカなんですよと言われてもそれは報道など現実の情報からわかることで、監督がその現実をどう咀嚼したかをもう少し踏み込んで見たかった。作品で描かれた社会の空気を体感しているアメリカ国民なら、また違った感想になるのかもしれないが。
俳優陣は皆素晴らしくて、ホアキンの必死な中に微かにコミカルさの漂う演技などは人間味にあふれていてとてもよかった(人を殺し出してからは全く共感出来なかったが)。演技面での満足感と脚本面での消化不良のアンバランスが悩ましい。
予想外の展開
人気が無いのか、公開から一か月を待たずに上映終了となりつつあり、年明けにあわてて鑑賞。
コロナウイルスのパンデミック時期、マスク着用、外出禁止を巡る対立。
アメリカでもそうだったのかと思わせる出だし。
コロナを巡る町の人々の対立とその後の葛藤を描くヒューマンドラマと思いきや!
パンデミックよりもその時期にはやった陰謀論を主軸にした戦いに発展。
最後はランボーやターミネーターでしか登場しないような大型機関銃の撃ち合いまで発生。
市長殺害の罪を同僚に被せようとした展開までは理解できたものの、何か重要なシーンやセリフを見落としたのか、大爆発が起きたあたりから、その後の展開に理解が追いつかず、そのまま予想を超える大騒動に!
理解が追いつかないまでも、派手な撃ち合いやヤケクソとも思える展開は楽しく鑑賞できました。
ストーリーをきちんと把握できるよう、配信が始まったら改めて観直してみようと思います。
アメリカだと本当にありそう
とにかく面白かった。ちなみにエディントンは架空の街らしい。アメリカだとこんな人いそうだなぁと、妙にリアルに感じる話。何せ大統領が「陰謀論は実在する」とオフィシャルに言う国なので……。人々のやりとりに重きが置かれるだけのストーリーなのかと思いきや、後半にかけてのアクションはスリル満点。素晴らしい映画だった……。A24の映画にハズレなし
【ストーリー】
メキシコ州の田舎町のエディントンで保持的な保安官のジョーが、データセンターを誘致する市長と対立して、そのまま市長選に立候補。「妻が市長に妊娠させられた」と噂を広めようとするも、それが嘘だと分かり窮地に立たされる。遂には市長を殺し、その疑惑を高校生の女の子や自分の部下の黒人に着せようとするも失敗。なぜか、白人至上主義者から命を狙われ何とか生き抜くも、寝たきりの状態に。その状態で妻の母親と2人暮らしをしながら市長として暮らすことに。最後には自分の妻を奪ったカルトの教祖のビデオで彼女が妊娠していることを知り絶望にくれる…
コロナ×マスク×喘息…
私も喘息でマスクすると咳が悪化するので、マスク全盛期時代は辛かったです…保安官…一緒だね…
と同情的な目で見ていたのですがもう何が何やら何がどうなってこうなったのか。
最初のフラフラしてる人誰だったんだ?
保安官がああなるのか…と思ってみてたのですが…
ワケわからんかったので、まあいつものアリアスターさんだと思うとしか言えない。
ガンショップからマシンガンぶっぱなして出てくるところがお気に入り。
初めてのアリ・アスター作品鑑賞
主人公ジョーの妻への愛には「共感」が感じられない。この「共感無き愛情」を断罪することが、監督のメインテーマなのかな、と思いました。
黒人保安官マイケルの、留置場から爆弾までの軌跡の分からなさ。あえて銃ではなく爆弾なのは、銃よりも足が着きにくいから?
データセンター賛成派があまり主張しない=暗躍、を匂わせていると思われ。
ラスト近く、動画に映るルイーズの隣には、ルイーズに似た顔の中年男性。待て待て・・・父親は亡くなっているはずじゃ・・・まあ深掘りせずにおこう。
母親ドーンは陰謀論者なのに、ちゃっかり恩恵をこうむっている。周りを引っかき回して自分は無傷。どんな信念でも、無いより有る方がマシ、ってことかな?なんとなく、トランプ氏っぽいキャラという印象。
、、、という感じで、私もすっかり疑心暗鬼ワールドに迷い込まされたのでした。
5年前のアメリカ
5年前のアメリカの現状は町山智浩さんのBS朝日の番組が一番よく伝えてくれていた。なのでアンティファも分かったし、ブラック・ライブス・マターも、ジョージ・フロイドさんのことも知っていて、コロナもあったし、ディープ・ステイトのこともジョージ・ソロスが資金提供する闇の左翼国家集団だと知って混沌としてた記憶がある。というか今でもその中のいくらかは続いてるけど。
今もそうだけど5年前のアメリカってトランプだったし、今だって関税だのエプスタインファイルだのパレスチナだの入国規制強化だのわけわからんくなってる。わけわからん奴が表に出てくるとそれは波及するのを間近でみた。日本もそうかもしれない。コロナでもマスクつけたくない人が自由の国アメリカを否定するのかとかキレてたオヤジがでてきたり、黒人やアジア人や中米からの移民に対する人種差別が再燃したりするんだなって思いました。全てファウチが悪いとか言ってたり混乱しまくりだった。今だとアンティファやBLMや極右集団プラウド・ボーイズみたいのがどうなったのか全くわからない。でもアメリカ全体がそうじゃないだろうし、行ったことないからわからんけど。
ニューメキシコというメキシコに隣接した州の架空の街で妻の元カレという異常な設定の現状ヒスパニックの市長が幅を利かせ、主役の保安官のホアキンが、日ごろからムカついていた鬱憤が爆発するところから風が吹けば桶屋がもうかる式な流れでカオス状態に。わけのわからない義理母はネット後追い世代で情報リテラシーがないため陰謀論にはままり、怪しいヒッピーくずれのインフルエンサーと繋がりを持ち始めるし、ネイティブアメリカンの保留地とも隣接し、捜査にわって入ってくる彼らへの怒りも爆発。
アメリカの闇を全面に出していくところが最高。混沌とした街からコロナを持ち運んだ浮浪者を喘息持ちだから生命の危機を感じたのか個人的な病気を理由に殺害しても何の気にもならなくなり神経がマヒ。
そして人種差別全開。銃を撃ちまくって浮浪者どころかヒスパニックの市長もその息子も殺人OK、黒人の部下に罪をなすりつけ、留置されたその黒人は脱走。しかし謎のテロ組織に爆殺される。アンティファとかニュースキャスターが言ってたけど、アンティファは人種差別反対だから逆だろ。アメリカは経済大国、優れた国だけどカオスになるとどうしようもない。しかしそのカオスがいつまた過熱するかわからない。アメリカって本当に面白いですねえ。
。
小さな街の狂気
ホアキン・フェニックスの役柄が
見苦しくて、あたふたしながら残念な
保安官が面白くはまっていた。
妻もカルトにのめり込み不思議なピリピリ感の二人。
小さな街が狂気まみれ、不安が募るSNS。
ネットの嫌な部分が明るみに出てる。
そして、まるでネットで炎上したイメージの
銃撃戦。罵声の罵りあいと火消しと脱走。
人の本心が壊れていく様を垣間見る。
不安と狂気を混ぜ込み練り込んだカオスな作品。
日常が普通で無くなる怖さは、人でした。
今だからこそ俯瞰で考えることのできる作品
前作、「ボーはおそれている 」からホラーとは別のジャンルで作品を制作しているアリ・アスターだが、ホラーに限らず、後味の悪さが健在である。
本作はコロナ禍での出来事を描いている。
当時、未知の感染症として扱われていたコロナ感染症でこれまで未経験だった緊急事態宣言下での生活は何かとストレスがたまったのは記憶に新しいのではないだろうか。
マスクをしない者を見つけては魔女狩りのように吊るし上げていたり、普段政治に興味のない人達が、マスク着用や緊急事態宣言などで強制的に干渉された結果、陰謀論などに嵌ってしまう人たちもいる。
同時期に起こったBLMもそのストレスのはけ口として利用されていた。
だが、BLMでの活動家の中には黒人は見当たらない。
黒人の為の活動のはずだが主導しているのは白人であり、相変わらず黒人には発言力を与えられていない。結局のところ保守派の白人とリベラルの白人の衝突であり、それ以外の人種は蚊帳の外なのである。
物語の舞台のエディントンは アメリカの縮図のような 町だが、
俯瞰してみると短期間でこれだけ多くのことが起こったのかと考えさせられてしまう。
本作のアリ・アスターの矛先はコロナではなく、翻弄される人間であり、人間の醜さである。それを観たときにこれまでのホラー作品とは違った後味の悪さを味わえるだろう。
主人公のホアキン・フェニックスが頑張る。見ていて、だんだん感情移入してしまった。
これがなかなかよく出来ている。
とても面白く見た。
展開はある意味「ドント・ルック・アップ」みたい。こちらはSFではないけれど、最後の展開が。あり得ない。で面白いラスト。
主人公のホアキン・フェニックスが頑張る。見ていて、だんだん感情移入してしまった。(普通は感情移入しない話だと思う。個人的に「分かる」気がして感情移入してしまった)
で、展開があり得ない話だけど、やたらリアルで見入ってしまう。で、後半は、素晴らしくよく出来たアクション映画。
SNSやコロナやブラック・ライヴズ・マターや新興宗教(?)やら、現代アメリカの2020年当時の問題をてんこ盛りにして架空のエディントン市にぶち込んで、その中でホアキンさんが色々と頑張る(市長選に出たり)。
ブラックコメディで、面白い。(笑いは出ないけどね)
翻弄されてしまうホアキン・フェニックスに主演男優賞を上げたい。もうなんか好きになってしまう。
(下半身まで露出するし。あれは大丈夫なんだね映倫的に)
で、エマ・ストーンが出てくるシーンは少ないけど、彼女がよく効いている。ホアキンさんを翻弄する。悪女だね〜。好きだけど。
つながる無数の点
人は一つの目でしか真偽や正悪を判断できない。
その定義も人の数だけある。
だから歴史や伝聞から学び、正しい道を歩もうと主張する。または理解者を求める。
もしくは、対立する。
ではそれらの無数の正悪や定義が、多数の人の間で偶然に一致したとき何が起こるのか。
本作ではコロナウイルスはあくまで、世界の諸問題を浮き彫りにする舞台装置に過ぎず、人種差別や不法入国者、先住民問題、性暴力の被害者・加害者、その子孫や友人・家族、果てはただ見聞きした者が織りなす営みを、アメリカとメキシコの国境を舞台に描かれている。
これらの当事者は、自身の経験の輪郭を伝えることで第三者に理解してもらわなければ、自己の否定や、さらなる未来の被害者につながる。
第三者は、外側から見聞きした当事者の断片的なイメージに少なからずのレッテル付けをして、都合よく取捨選択をして生きている。
そうすることしかできない。
この2つのそれぞれのストーリーに論理的な正しさを求めることは不可能である。
なぜならこの世界にはこの2つの人間だけではなく、その背景を隠れ蓑にしている者や嘘をつく者までいるし、当事者が感情論を排して正確(これすらも何が正しいのかというパラドクス的)な背景を描写できているかすらわからない。
人間一人の目線を点とするなら、自分は好き勝手に他人の点をつなげてストーリーにする。
無論自身もその点の一つ。
この、人間の数だけ存在する個性的な点と点を、個々人の目線で都合よくつなげることで、あたかもだれかが操作しているように"きれいな線"が出来上がってしまい、その本来は一致することのない"個性的な線"が"偶然"にも多くの他人と一致してしまうことで、陰謀論がバックボーンとして成立してしまった悲劇がこの映画のストーリーであり、そして今もスクリーン外で続く歴史の一側面でもある。
陰謀は神の行いであり、政府の画策であり、人一人の目から作られる人類の営みである。
人は物事を単純に捉えすぎるし、複雑に捉えすぎる。
「ボーはおそれている」でも感じた、
胸がざわつく、とらえどころのない終劇。
私ははどの当事者でもないので、登場人物たちの点と点を勝手につなげてこんな解釈をした。
とてもいい映画だったと思う。
忘れてはならない出来事
コロナ禍で店に入るのにマスクをしないといけない、警察に取り押さえられた方が命を落としてしまう悲劇、便乗した過激なデモ
こういうのが実際にあった出来事で見ていて辛くなる前半
後半、優しかった保安官の主人公が変貌していく姿に襲撃者の非情な罠に傷つく主人公たちや凄惨な銃撃シーンが圧巻
ラストの主人公が一命をとりとめたけれど家族からは拒絶されるようなことを感じさせ、彼に利用されて留置所に送り込まれた黒人警官が怒りに燃え銃を撃つシーン
これは「やられた側は爆弾の傷のようにずっと残っているんだ」コロナウィルスが流行り始めた時期の酷かった対応、これらは忘れてはならないそんなメッセージを感じた。
思ってたんと違うW
正直言ってよくわからん作品。
アリ・アスター作品は初見だが、こんな感じなのか?
A24だから期待して観に行ったのになぁ。
それぞれの正義が対立して激化してブチギレて保安官がマシンガンぶっ放す、
的な感じなのかと思いきや、アンティファ?テロリスト?は?なんで?
俺がテロリストでも、ガキどもが騒いでいる程度の片田舎のデモに肩入れなんかしねぇ、つーのW
なんかなぁ、題材はなかなか良いアイデアだと思ったのに、シナリオがなぁ。メチャクチャやん。
エンドロール始まった途端に多くの観客が席を立ったのがウケたW
つまらなかった作品
映画が始まってから30分ぐらい経過した時から、つまらなくなってきました。
市長とその息子が殺された後は、その後の展開が、楽しみになってきてワクワクしながら鑑賞しましたが、終わってみれば「なんじゃこの映画は?」という感じでしたね😭。
私の前方で鑑賞していたカップルが、場内が明るくなった後「やたら長くて意味不明だったなぁ」と会話していたので、
私は「無駄なお金と時間だったなぁ」と聞こえるように呟いたら、「そうですよね」と会話が弾んでしまいました。😅
ここ数年のエマ・ストーンの演じている役柄は、訳わからん役が多い気がします。
現代の西部劇。この町で正しいのは俺だけだ。
1.はじめに:アリ・アスター監督との相性
❶アリ・アスターの長編監督作品中、日本では本作を含め5本が劇場公開されているが、全て2時間を超える長尺である。
❷内、ディレクターズカット版の③を除く全作をリアルタイムで観ている。マイ評価は下記の通り。全体の相性は「中」。
①2018年 『ヘレディタリー/継承』 127分、監督/脚本、2018.11公開、♥2018.12.鑑賞98点。♥マイベスト。
②2019年 『ミッドサマー』 147分、監督/脚本、2020.02公開、♥2020.02鑑賞 60点。
③2019年 『ミッドサマー ディレクターズカット版』 170分、監督/脚本、2020.03公開、♥未鑑賞。
④2023年 『ボーはおそれている』 179分、監督/脚本/原案/共同製作、2024.02公開、♥2024.02鑑賞40点、2024.02リピート30点。
⑤2025年本作 『エディントンへようこそ』 148分、監督・脚本・共同製作、2025.12公開、♥2025.12鑑賞70点
★予算40億円弱の本作⑤は、前作④よりは遥かにましだが、もうちょいだった。
2.マイレビュー
❶相性:中。
★現代の西部劇。この町で正しいのは俺だけだ。
➋時代:2020年~2021年。
❸舞台:ニューメキシコ州の小さな町、エディントン(架空)。コロナ禍でロックダウンされている。
❹主な登場人物
①ジョー・クロス(Joe Cross)〔ホアキン・フェニックス、50歳〕:保安官。いつもカウボーイハットを着用。コロナ禍で、市長・テッドがロックダウンを実施し、マスクの着用を義務づけるが、選択の自由を主張し、マスクを着用せず、再選を目指すテッドと対立し、選挙戦に自ら出馬する。しかし、旗色が悪くなり、挽回しようとテッドをSNSで告発する等の策をめぐらす中で、狂気の世界に突入していく。テッドと息子のエリックを射殺して、アンティファ(アンチ・ファシズム)の犯行と仕向ける。秘密刺客に襲われるが、生き延びて、意識はあるが動けない状態で市長となり、データセンターが建設される。
★ジョーは、エディントンに新型コロナを持ち込んだと推定されるロッジと濃厚接触していたことから、ジョーも感染していたと思われる。
②テッド・ガルシア(Ted Garcia)〔ペドロ・パスカル、49歳〕:市長。ヒスパニック系。IT企業を誘致すべく画策している。コロナ禍で、州知事からの指示に基づきロックダウンを実施し、マスクの着用を義務づけるが。これに反対する
ジョーと対立する。息子のエリックと共に、ジョーに射殺される。
③ルイーズ・クロス(Louise Cross)〔エマ・ストーン、36歳〕:ジョーの妻。かって保安官だった父から性的虐待を受けていた。母のドーンの影響を受け、カルト集団の教祖ヴァーノンに傾倒し、ヴァーノンと共に家出する。
④ドーン(Dawn Bodkin)〔ディードル・オコンネル、71歳〕:ルイーズの母。コロナ禍になってジョー夫妻と同居。カルト集団の教祖ヴァーノンに傾注。最後、動けなくなったジョーを世話し、傀儡として利用する。
⑤ヴァーノン(Vernon Jefferson)〔オースティン・バトラー、33歳〕:カルト集団の教祖。幼児虐待に関する陰謀論を展開して支持者を増やしている。
⑥ガイ(Guy Tooley)〔ルーク・グライムス、40歳〕:保安官補。
⑦マイケル(Michael Cooke)〔マイケル・ウォード、27歳〕…若い保安官の見習い。黒人。仮想通貨に関心を持つ。テッド殺しの容疑をかけられる。最後まで生き残こり、復讐の機会を待つ。
⑧エリック(Eric Garcia)〔マット・ゴメス〕:テッドの息子。BLM(ブラック・ライブズ・マター)運動を支持。
⑨サラ(Sarah)〔アメリ・ホーファーレ、22歳〕:BLM運動を支持する若い女性。
⑩ブライアン(Brian Frazee)〔キャメロン・マン、24歳〕:エリックの友人。サラに片思い。狂ったジョーが、秘密刺客に襲われたところを助け、その動画をSNSに投稿したことで人気インフルエンサーとなる。
⑪バタフライ(Officer Butterfly)〔ウィリアム・ベルー、42歳〕:先住民の役人。テッド殺しはジョーの仕業と見抜くが消される。
⑫ウォーレン(Warren)〔キング・オルバ〕:ニューメキシコ州知事の経済アドバイザー。データセンターの誘致を画策する。
⑬ロッジ(Lodge)〔クリフトン・コリンズ・Jr.、54歳〕:市外からやってきた浮浪者。疫病神。バーで暴れてジョーに射殺される。
★ロッジは冒頭にも登場しており、エディントンに新型コロナを持ち込んだと推定される。
❺考察
①舞台はアメリカ南西部のニューメキシコ州(注1)。この地は、多数の映画の舞台になっているが、西部開拓時代は「法と秩序」がキーワードだった。
ⓐ西部劇は、市民・開拓者(パイオニア)、保安官(シェリフ)、無法者(アウトロー)の3者の中で、単なる無法者の戦いだけでなく、「法とは何か」、「正義とは何か」といった根源的な問いを、西部開拓という舞台を通して描いたものだった。
ⓑ中には、『明日なき追撃(1975)』のように「法と秩序を守る者が、自らの権力欲で失墜する」という、従来の勧善懲悪とは異なる異色作品もあった。
ⓒ1960年代から1970年代には、賞金稼ぎや復讐に燃えるアウトローなど、善悪の境界が曖昧な主人公が活躍する「マカロニ(スパゲッティ)・ウェスタン」もあった。
ⓓ「正しさ」が個人の判断に委ねられてきた時代と場所だったと言える。
(注1)ニューメキシコ州(出典:アメリカ留学 全米50州ガイド、Wikipedia)
ⓐ面積は全米50州のうち5番目に大きく、日本よりも少し小さい。北をコロラド州、西をアリゾナ州、東をオクラホマ州とテキサス州に接し、南はテキサス州とメキシコとの国境に接している。土地のほとんどが標高1,200メートルの高地にある。かつてはネイティブ・アメリカンと呼ばれる先住民族が住んでいたが、16世紀半ばに黄金を求めてスペイン人が探検、入植を始め、州の名の通り「新しいメキシコ」と呼ばれるようになる。ヒスパニック系の人が州の人口の半数を占めていて、ネイティブ・アメリカンの人たちも比較的多く住んでいる。
ⓑニューメキシコ州を舞台に、映画史を代表する傑作西武劇『駅馬車(1939)』はじめ、多数の映画が製作されている。
ⓒ2,024年度アカデミー賞で作品賞他最多7部門を受賞した『オッペンハイマー(2023米・英)』に登場した「ロスアラモスに研究所」と、世界初の核実験が行われた「ホワイトサンズ実験場」はこの洲にあった。
ⓓアリ・アスター監督にとってもニューメキシコ州は故郷と言える。1986年NY生れのアリ・アスターは、ロンドンを経て、10歳からニューメキシコ州アルバカーキに定住し、青春時代を過ごしている。ロックダウンまっただ中の2020年にもニューメキシコで過ごしていて、本作はこの経験がベースになっている。
②主人公ジョーの問題は、家庭内の不和とコロナ禍による規制で、自由が損なわれている、これでは保安官として「法と秩序」が保てない、だから権力のある市長になって「正義」を守ろうというものだ。「この町で正しいのは俺だけだ!」と思い込んでいるのだ。それが、多数決ではかなわないとなると、銃による実力行使となり、それを契機に、狂気の世界に突入していく。その結果、市長に当選し目的を果たすが、生きる屍同然で、意識はあるものの動けない状態となってしまう。
③その背後には、プライベートジェットで刺客を送り込んだり、犯罪を敵対グループに擦り付けたり、選挙を有利に支配する等の「巨大な影の権力」があることが暗示されている。
★10月に公開された予算200億円の超大作『ワン・バトル・アフター・アナザー(2025米)』では、白人至上主義の秘密結社「クリスマス・アドベンチャラーズ・クラブ」の存在が描かれていた。
❻まとめ
①深読みすると、本作にはアリ・アスターの蘊蓄(うんちく)が色々込められているようである。
②例えば、主人公の名前、ジョー・クロス(Joe Cross)の「Cross」は「十字架」、「交差点」、「Joe」は「ありふれた名」で、正義を信じて疑わない平凡な市民が、コロナ禍なる世界の交差点に於かれ、狂気の世界に突入していくことが暗示されている。
③しかし、浅学菲才の小生には、全部を理解することは無理であり、描かれた映像から判断するしかない。
④その内容は、コロナ禍、SNS、BLM(ブラック・ライブズ・マター)、ヒスパニック、アンティファ(アンチ・ファシズム)、カルト集団、銃規制、IT産業、刺客を送り込む秘密組織等々、現代のアメリカが直面する様々なテーマがテンコ盛りされた目まぐるしいものになっている。
⑤しかし、結果として、何が言いたいのか?消化不良に終わった。
⑥特に後半のマッドワールドにはついていけなかった。
⑦何度もリピートすれば理解が深まると思うが、それだけの魅力がなかった。
イデオロギー不在の暴走
今作が初アスター。
見る前から嫌な映画職人というイメージがあったが、実際見た感想としては全くそのとおりで非常に満足した。
予告ではジョー保安官(ホアキン・フェニックス)とテッド市長(ペドロ・パスカル)が市長選を戦う話かと思っていたが、あまりそういう雰囲気ではなかった。
物語の軸は陰謀論やSNSに振り回される人々で、コロナ禍のマスク付ける/付けない論争から最終的にテロリスト襲撃までなだれ込む展開は大胆でけっこう好き。
お気に入りはテッド市長と終盤のテロリスト。
テッド市長は悪人ではないが、外面の良さに比べて息子への当たりが妙に強いなど端々の言動で何となく嫌な奴に見える。特に選挙CMのいけ好かない感じは絶品で、PR映像としてはパーフェクトなのに全く応援したい気持ちが湧いてこなくて感動する。これは本当に凄い。
色々あってエディントンに乗り込んでくるテロリスト達は断片的な背景や思想しか見えなくて不気味だが、飛行機の中で「やってやるぜ〜」的にアップをしている場面が妙に可愛くて微笑ましい。
終盤、テロリストの仕掛けた爆弾が、こんなに!?というくらい迫真の大爆発を起こすので、思わず笑ってしまう。
この爆発を契機に一気にラストまで駆け抜けるので、ここから先はメチャクチャやるぞ!という意思表示ではなかろうか。
エンディングの着地は、こんなに嫌な終わり方があるのかと絶句を一周してうめき声が出た。
総じて「嫌なもの見たな」と「結局なにを見せられたんだろう?」という思いは否めない。
しかし「パンデミックはあるが、それはこの町とは関係の無い事件だ」と言うジョーの言葉には、けっこう牽制されるものがあった。
コメディ&ホラー
なんとも評価し難い一品。
面白いかと聞かれたら、あまり面白くないと答えるだろうが、見始めたら最後まで気になって見てしまう。
ただし、プロットやストーリーがかなり複雑に絡み合っており、会話の中で出てきた人物やちょっとしたSNSの投稿などをきちんと見て覚えていないとなんのことかわからなくなる。
途中まではだるくて眠かったが、ある日突然デモが始まり、そこからテッド殺害へと怒涛の展開で、突然ホラー映画へと変貌していった。全体的に演出は素晴らしいのだが、このテンポの悪さが気になる。
なんの意味もない、支離滅裂なデモ。
白人の少年が、「白人優勢反対」などと言い出し、親に突っ込まれる始末。
女性の言うことも意味不明で、ネットに溢れている言葉を繰り返すだけ。
要は全ては、コロナで溜まったフラストレーションを吐き出しているだけなのだ。
そんな愚かしい人間どもの話なのだが、
コメディで終わるかと思いきや、大掛かりな罠にはめられ、クライマックスではなかなかド派手な立ち回りを見ることができたし、姿が見えないスナイパーはいつでも怖い。
しかし、ジョーが殺人を犯したことには変わりはない。彼は罪人だ。私は、彼が裁かれて終わるのだと思っていた。しかし、障害者として彼は生き残ってしまった。
いや、わざとだろうか?
アリ・アスターに言わせれば、あんな姿で好きな女が別の男の子供を身ごもっているのを見る方が、罰に値すると考えたのかもしれない。
大衆は愚かで、ステイホームすればSNSや陰謀論に踊らされる。まるで自分が特別な使命でも持ったのかのように振る舞う。さして、意味のない市長選挙に、気に入らない奴に勝つという目的で出馬してしまう。
さて問題の女「ルー」は、一見複数の男をたぶらかす悪女のように見える。だが、彼女の主張はどこまでも正しく潔白だ。
彼女が憎むのは、以前に性加害をしてきた人間であり、ジョーでもテッドでもない。
そしてアリ・アスターの作品に流れる「結局女は潔白で強い」が今回もまざまざと感じ取れた。
私はペドロ・パスカルがとても好きなのだが、あまり彼が活躍できなかった気がして非常に無念である。最後まで市長選を戦ってほしかった。
反面、黒人の警察官や、最後なぜかヒーローになってしまう少年などが目に留まった。オースティンバトラーはとてもイケメンなのに、あまり出てこなくて活かせてないと感じた。
可笑しさ不足
陰謀論者ディスに溢れたブラックコメディ。
確かに一部の陰謀論者たちは滑稽に映ってたし、予想外のスペクタクルさも持ち合わせているからエンタメとしては申し分なく楽しめると思う。
ただ、コメディであるからにはもっと可笑しさがなければいけないんじゃないかとも思った。
物語上仕方がないとはいえ、オースティン・バトラーなんかはその頭の悪さをもっと全面に押し出して欲しかった。
義母が陰謀論を熱烈に信じてるって設定がノイズにしかなってない印象。
ホアキン×スナイパーというのは思いの外組み合わせがいいんだなと気づかせてくれたのは大きい収穫だった。
メタ・リカ
コロナ渦のアメリカ、小さな町エディントン。ロックダウンの不自由さの中で、本編主人公の保安官ジョーは現市長テッドとマスクの着用をきっかけに対立。
ジョーは突然、市長選に立候補する。
人っていつからか人の話を聞かなくなっちゃいましたね。
平場の議論ならまだしも、有識者会議などでもお互いが自分の主義主張に終始する場面、よく見かけます。
少し前の「ワン・バトル・アフター・アナザー」、さらに「メガロポリス」「シビル・ウォー」も特にここ数年(もっとかな)のアメリカを、それぞれの形で暗喩していました。
ただこの「エディントンへようこそ」はもう少し直喩的。
だからこれまでのアリ・アスター作品の様な「ちょっと何言ってるか分かんないんだけど」程はないと思います。
コロナ渦に加えてジョージ・フロイド事件、それらにまつわる事実の拡大解釈を煽るSNSやカルト集団。
個人々は混乱し、町は混沌。そして起こる殺人事件。
劇序盤でジョーは保安官でありながら、コロナ渦を「自由」に行動している事が分かります。
そしてその自由を掲げて市長選挙を戦っていくのです。
しかし結果として彼はだいぶ「不自由」になります。
ここ、かなり皮肉効いてますね。(笑)
起こる殺人事件にしたって、元をたどればただの男女の痴情のもつれという有り様だし。
主演のホアキン・フェニックス、最初誰だか分からなかった。相変わらず何かに混乱している人物がよく似合う。
エマ・ストーンの使い方は少しもったいない気がしました。
オースティン・バトラー、気持ち悪くて良かったと思います。
ちなみにレビュータイトルは某バンドとは関係ありませんので、あしからずご容赦を。
P.S 今年の映画館鑑賞はこれで最後です。
読んで下さった方、ありがとうございました。
毎回見てくださっている方々、お名前は上げませんがとても励みになっております。
それでは少々早いですが、良いお年を。
すごく面白い
当時はマスクしてないと人権なかったですよね
他県ナンバーの車に対するイタズラや
強制的にワクチン接種しないといけない雰囲気もありました
劇中でもマスクをしていない老人に対して暴言まがいの言葉を投げかけていたり、それを正義として拍手する周りの人々、マスクしていない保安官を撮影しネットに晒しあげたり
もちろんあの時は人々のコロナへの恐怖がピークのときでした。私自身もマスクしないで出歩いている人を危険視していました。それを客観的に見ると恐ろしく、また変に感じて面白かったです
ロックダウン中の不安と退屈に苛立ち
更にsnsのめり込む人々
陰謀論にハマる保安官の妻
マスクするしないで市長選をする保安官
ジョージフロイドの事件を筆頭に人々は
有り余るエネルギーをネットでバズっているBLMの抗議活動にシフトしていきます
コミュニティと繋がりを感じるために抗議活動しているようにも見えました。
また登場人物の持つコンプレックスを別の問題の責任にすることで自分の欲求を満たそうとしているようにも感じました。
ジョーが演説をするシーンでもテッドに対して事実無根の発言をしまくって評価を下げようとしたり。
全編に渡りsnsを操作する描写が多く含まれており、人々を煽動するツールとして描かれています
黒人保安官のマイケルが荒野で射撃練習をしているシーンでテッドの息子に対する怒りが明確に表現されていたように感じます。少なくともわかりやすく何かやりそうな雰囲気でした
でもテッド親子を殺したのはジョーであり
切り取られた一部を見て物事を決めつけてしまうsnsの現状を表しているのかなと感じました
ジョーの隠蔽工作と捜査官との小競り合いがまた面白い
物語終盤アンティファ(左派テロリスト)に追われ、ランボーばりに対抗するジョー、冴えない青年がアンティファの一人を殺しジョーを助け、snsで崇め立てられるようなインフルエンサーになってしまうなんとも異様な展開で思わず笑ってしまいました。でもこんなことも起こり得るのかもしれませんね。
結局データセンターは完成しAi生成を使ったフェイクニュースがネット社会に更に広がりを見せ、もう誰も止めることはできないのでしょうね。
ジョーカー、ボーは恐れているといいホアキンが逃げ回るシーンめちゃくちゃ好きなんですよね笑
2時間があっという間でした!
全69件中、1~20件目を表示
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。









