ザ・ザ・コルダのフェニキア計画のレビュー・感想・評価
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タイトルだけだとよくわからんが、近作では飛び抜けてとっつきやすいのでは?
もはやコマ撮りアニメであろうが実写映画であろうが、外に出てロケ撮影するのではなく撮影スタジオにセットを建てて一分の隙もなく映像をコントロールするようになったウェス・アンダーソン。箱庭的な美意識は揺らぐことはなく、観ていて息が詰まるような感覚に陥ることもあったが、本作はいささかネジの外れた親子の絆と冒険のお話という一本筋が通っているせいか、よりリラックスして楽しめた。妙な寄り道ばかりしているように見えるのも、人によっては退屈かも知れないが、そういうディテールにこそ神が、いやアンダーソンが宿っていたりするし、Netflixの短編以降、そういうムダなディティールに遊び心が戻ってきたように感じていて、本作の寄り道もいちいち愉快。まあこの辺の印象は観る側がアンダーソンに何を求めているかで大きく変わるとは思いますが。でもベニシオ・デル・トロ演じるザ・ザ・コルダが無茶苦茶だけど飛び抜けて魅力的なキャラであることは誰もが賛成してくれるのはないか。娘リーズル役のミア・スレアプレトンももともとウェス・アンダーソンの大ファンというだけあってどんなテンションの演技が必要なのか完璧にコントロールしていてみごと。
アンダーソン流の不意を衝くアクションに驚かされる
アンダーソン一座の巡業の季節がやってきた。近年は豪華キャストが横一列に人間模様を織りなすタイプが多かったが、本作では家族、そして傍若無人さと愛嬌を併せ持つ家長が旋風を吹かせる懐かしいスタイルへと回帰。だが、見せ方や取り扱う題材は従来とやや異なる。私が驚いたのは、その鮮烈かつ独特なアクションだった。とりわけ冒頭の飛行機爆破に至っては、いわゆる大作系のカタルシス的アクションとは次元の異なる、突然何が起こったか分からなくなるほどの瞬間的演出によって機能美と衝撃、双方の効果を提示してみせる。その後も幼子が放つ無数の矢といい、突如はじまるバスケの試合といい、アンダーソン作品に単なる精緻な構図の絵巻物とは別の、動的衝動がもたらされているのを感じる。時折、展開が速すぎたり、情報量が多すぎたりして咀嚼する時間が足りなくなるが、父娘が織りなす人生を変える旅路は味わい深く、ドタバタの先に待つ風景に心奪われる。
今度は、ほぼミッションインポッシブルw
シニカルで知性を感じる台詞回し、能面演技、明度の高い色彩描写、幾何学的な画面内配置。One and Only のウエス・アンダーソン ワールド全開。個人的には好きな監督のトップ10には入るウエス・アンダーソンなんですが、コレは彼の作品の中でも上位に入るんじゃないかと。
およそ、人間的な部分が、ガッサリ切り落とされてるのではないかと思われるザ・ザ・コルダが、内面に隠し持っていた信念を実現する過程で、実の娘じゃない娘への愛で人間性をも取り戻す。フェニキア計画とは、彼の人間回帰の計画であった、と言うのが物語の建て付け。
なんですが。ですが。
能面演技なんですよね。セリフは一見難解、って言うほど難しくも無いけど、直接的表現は取らず、シニカル。なんで、物語のシリアス度は戯曲的に婉曲化されていて、リアリズムはほぼゼロな訳ですよ。
ここのところが、ウエス・アンダーソン作品の好き嫌いを分けてるのは間違いなく。独特の彩色表現で、今風の人や若い人の人気は高いと思われますし、業界内、特に役者さんからは絶大な支持を受ける彼。契約の場面に卓についてる面々の豪華さには、思わずニヤついてしまいました。
面白かった。
とっても。
ウエス・アンダーソンとベニシオ・デル・トロで寝てしまうとは!
ウエス・アンダーソンもベニシオ・デル・トロも好きなので軽く楽しみにしていました。
プライベート・ジェットの最初の墜落まではいつものウエス・アンダーソンでわくわく見ていたが、その先急失速。
一風変わったシチュエーションと人、そのやりとりと間となんとも言えない笑いの空気と、さくっと入れ込まれた風刺を楽しむ、のがウエス・アンダーソンの持ち味で、作りこみありありのパステルカラーの背景も好きなんだけど、今回は奇抜が過ぎてスベった模様。訳が分からず気持ちが付いていかない。
同じことをしつこく繰り返す(バスケットボールのシーンとか)、そもそもプライベートジェットが墜落するパターンも繰り返しで、墜落と墜落の間の話は突飛すぎるのに平板で間延びしており、飽きてしまった。
常連も新顔も俳優さんの顔ぶれは豪華なのに、宝の持ち腐れ(腐ってはいませんが)でいまいち活かされず。紅塩出るさんはさすがにまあ良しとして、スカヨハは特に彼女じゃなくても良いし、カンバーバッチの奇妙奇天烈な役はもはや無残の域で気の毒になった。なんじゃああれは。
私の誕生日でしたのに。。。
それでもやっぱり唯一無二
独自性がありすぎて評価がしづらい
ウェス・アンダーソン監督の作品は今まで何となく好みではない気がして、足が遠のいていたのだが、今回はそこそこ評価が高く、ベニチオ・デル・トロが主演ということで鑑賞。
結論としてはやはり好みではなかった。
コメディとしての独自の世界観は確立されていて、好きな人は待ちに待った作品。そうでない人は全く興味なし。そういう作品なのではないか。
ただ、根底にあるのは家族のつながり、父と娘のつながりの話でそのあたりは分かりやすかったのではないか。
そして、収穫は修道女見習いの娘、リーズル役のミア・スレアプトン。父親ザ・ザ・コルダとリーズルの掛け合いは映画を引っ張っていく役割を果たしていた。
終幕に向けてどんどん父親に似ていく娘。ラストは何と微笑ましい。
最近のアンダーソンはビジュアルでしか楽しめない。
驚きが減ってきたけどまあ、
ウェス・アンダーソンはムーンライズ・キングダム以外全部観ていますが、個人的にはグランドブタベスト〜フレンチディスパッチまでがピークだったかな…
(ダージリン急行までのストーリーの有耶無耶さがちゃんと起承転結な話を作るようになったというか…アステロイドシティからまた初期化された気がする)
めっちゃ好きだけど信者にはなれないんだよね
万人受けをハナから狙ってないのに、誰にも作れない映画を作るから本当に鬼才なんだけど
とはいえタイトルロールの映像には感嘆したし、現実には重い題材(インフラ整備に搾取される現地の人とか意図的に操作される物価とか遺産は渡さないけど才能があれば利用するであろう養子とか)をとぼけた台詞とキュートな映像でフラットに挟んでくるのは相変わらず可笑しいし
資金提供のパーセンテージがどんどん無理になっていくのに笑ったし
主人公と娘?と秘書?のリズミカルなセリフのバレーボールが軽快だった
今までマイケル・セラがこの監督に起用されてなかったのが不思議
あの世のシーンの役者さん全員認識できなかったけど、もう一度見て確認したいと思うほどではなかったのよね…ネトフリとかて配信で見られるようになったら確認してみます
芸術とファッションと、少し哲学
この作品は、ファッション系の雑誌で多く取り上げられていて知りました。
ウェス・アンダーソン監督は、名前も知らなかった素人です。
作品のサイトにも、本物のルノワールを美術館から借りていたり、カルティエやプラダが協賛しているとあったので、ほとんど美術目的で鑑賞しました。
予告編で「ファミリーコメディ!」と紹介されていましたが、コメディというほどポピュラーな感じはありません。
自家用飛行機で資金集めに奔走し、飛行機が墜落しても撃たれても全然死なない、商談も何故かバスケの勝負で交渉をまとめるなど、ツッコミどころは確かにありますが。
むしろ、チェ・ゲバラ似の共産革命家が登場して協働したり、修道女が持つ宝石付きの十字架のネックレスは果たして神の意に沿うのか、など宗教・思想に絡めたエピソードで、ストーリーに深みを持たせていると思います。
ザザコルダが新たな人生へ進む結末も、哲学的。
気楽に見れるオシャレ映画と思っていましたが、予想外に深い内容で、ウェス・アンダーソン監督は鬼才だと感じました。
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後日談。
ウィキペディアでウェス・アンダーソン監督のプロフィールを見たら、『ダージリン急行』の監督だったとは。
テキサス大学で哲学を学んだ、とあり、なるほどと思った。
アメリカでは映画は開始5分で意味が伝わらないと売れない、と聞いたことがあるが、本作もどちらかと言うと、商業的成功と言うよりは、ミニシアターに馴染む作品ような気がする。
滅多に行く機会のないシネコンの大スクリーンで見れたことは幸い。
芸術作品として見ればイイ
ついていけない
ニヤニヤ小ネタ健在
ウェスだあ。前半ずっとニヤニヤしっぱなし。ザザの家、攻撃してくる子ども、飛行機の中の電話、輸血、最初の坑道の会合場所と試合、アステロイドっぽい街も出てきた。懐かしい色合い!アステロイドは途中から置いてかれたけど今回はどうだ?
また前作とは違う路線で、しっかりストーリーがある。ラスボス?もいてまるでアクション映画ではないか。だが早口かつ高度な会話が続き始めの方に頭使いすぎて途中で眠くなってしまった。面白かったんだけどなあ。そして色合いや絵画のような画角はやっぱり綺麗!
爆弾、18分?間に合うね、のセリフ好きだった
トムハンクス、スカーレット、カンバーバッチやはり出てくると興奮する。でも娘ちゃん役も良かった!ケイトブランシェットの娘?すごい。
そして本物のマグリットやルノワールの絵飾ってたのすごすぎる。good picturesではなくmasterpiece を買え、というザザの教えへの信憑増。
教訓。ウェスは元気な日の日中に行くべし。
芸術的だった、というしかない
私は何かを評価するときに「芸術的」という言葉を安易に使うのは好きではない。いわゆる芸術的という言葉が使われる場合、「よくわからないけど、何かすごそう」と感じるときだろう。そのよくわからないこと、すごいと思ったこと一つ一つを言語化しようとせずに、芸術的という一つの言葉で片付けるのは、あまりに暴力的で傲慢である。と、偉そうに語ってはみたものの、この映画を観終わった後の私の感想は、「芸術的だったな」である。しかしそれで終わってしまえば、自分のことが嫌いになりかねないため、一つ一つ具体的に書いていく。
まずストーリーについて。この映画は、ストーリーや会話のテンポが速く、全てを完璧に理解して観ようとすると難しい。おおまかな流れを感じ、登場人物それぞれの目的や、構図を点で捉えていくと、なんとなく掴めてくる。また、わかりづらく感じる原因の一つに、時代、国はもちろん、宗教、文化に根ざして作られており、映画全体にそれらが色濃く反映されている点が挙げられる。
この映画は大きな一つの目的のために、様々な場所で全く同じことをする。そのため、同じようなシーンが何度も繰り返され、同時に同じ音楽が繰り返し流される。何度か目にはその音楽が聴こえてくると、次の展開が容易に想像でき、段々と笑いが込み上げてくる。この同じようなシーンの繰り返しで、映画全体に一貫性を生み、それが時々破壊される。唐突なギャグや小ボケ、アクションである。しかしそれらも繰り返されるものも多々あり、そうすると伏線回収のような役割が見えてくる。これもまた一貫性を生んでいる。
この、ストーリーの緩急や間は、それ以外の点にも色濃く出ている。実はこの映画の核となる部分は今まで書いてきたストーリーではなく、それ以外の要素なのかもしれない。まずは映像表現である。前述したように、ストーリーや会話のテンポが速く、掴みづらい。しかし、この映画は内容とは直結しない、あってもなくても大して影響がなさそうなシーンに、かなりの時間を割く。単なる生活のシーンや入浴のシーンを、斬新な構図の定点で長い時間見る。聴衆はただ見るだけではなく、何かが起こりそうな気がして緊張感を持って、集中して見る。そうすると、そのシーンは鮮明に頭に残るため、ストーリーにおいては意味がなくても、映像表現においては無意味ではなく、とても効果的になる。そして、何より映画全体に強い緩急を生む。
次にセットについて。私が今まで観てきた映画にはないような世界観で、屋内や屋外、海外、飛行機の中など様々な場所が描写されているが、何か全て箱庭のような、良い意味で、作り物感が強く、しかしチープを通り越して、世界観を築いていた。また、劇中に飾られていた絵画や使われていた音楽への強いこだわりが垣間見え、そういった強いこだわりが伝わってきたからこそ、単なるチープさでは終わらずに、世界観に昇華できたのかもしれない。
最後に音楽について。劇中で多用されていたのはイーゴリ・ストラヴィンスキーという作曲家の音楽である。クラシック音楽界の中でも取っ付きづらく、あまりメジャーとは言えない作曲家だが、非常に効果的に使われていた。ストラヴィンスキーの音楽の特徴の一つに心理描写がある。それも、ときめきや、感動といったキラキラしたものではなく、おどろおどろしく、恐ろしいものである。しかしその特徴を捉え、そのまま映画に当てはめたことで体にスッと入ってくる。また、ストラヴィンスキーの音楽は非常に耳に残る。前述した、映画全体への一貫性という点では模範解答である。私が驚いたのはエンドロールである。まさか「火の鳥」の終曲を持ってくるとは思わなかった。聴いていて気持ちの良い曲だが、劇中には一切使用されていなかったため、「ここで出すか」と呆気に取られた。
様々な視点でこの映画について評価してみたが、これは「芸術的」と評する他ないだろう。しかし、私が最も評価しているのは聴衆を置いていかなかったことである。芸術的と評される作品は、聴衆を置いていくものがほとんどだが、あくまでも大衆向けの映画に仕上げつつ、ところどころで強いこだわりも見せた。非常にバランスの取れた良い映画だった。その点では芸術的ではなかったのかな。
本物でできた愛すべき偽物
いつもの
今回もウェス・アンダーソン初心者から脱却できなかった。
可愛いけど難しい
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