紅楼夢(こうろうむ) 運命に引き裂かれた愛のレビュー・感想・評価
全5件を表示
儚さと美しさ
学生時代に、岩波文庫で読んだ作品(たぶん、あと四冊程度読み残している)
我ながら、よく読んだものだと今でも思っている。思わせぶりな内容に、引きずられながら読み進んだ記憶がある。
もう長い年月が経っているのに、画面に出てくる賈宝玉・薛宝釵・王熙鳳・襲人、なんとなく記憶の隅から蘇ってくるのが不思議だった。(なんで襲人なのかは不明)
そして、春になるといつも思い出す林黛玉の「葬花吟」(葬花詞)が描かれていました。
一面の花びらを寂しく林黛玉が片付けていく所は、今以て脳裏にいつも浮かんできます。
また、なんと言っても冒頭の、食事の場面は圧巻でした。私の敬愛する学者が紅楼夢の食事の場面を論文に書いていらっしゃいましたが、中国でも紅楼夢の中の食事の場面は研究対象となっているようです。紅楼夢の愛読者は「紅迷(ホンミィ)」と呼ばれ、熱狂的なことが知られています。食事の場面だけでなく、至るところ論文なども多数書かれているのでしょう。
こういった映画するには触れるべき所も多かったと思います。それを一本の映画にするには、苦労が多かったのではないでしょうか。少し舌足らずなところが有るような印象も残りますが、儚さと美しさでまとめられていた気がします。
原作の挿画のような、役者さんを起用し、美しく仕上がっていました。
群像劇なのに公式サイトのキャスト紹介が雑すぎ
『三国志』『水滸伝』『西遊記』と並ぶ中国四大名著のひとつ『紅楼夢』を映画化。
いつか読もうと思いつつ、はや幾歳月、まさか映像作品を先に目にすることになろうとは。
バトルが中心の他の三名著とは異なり、若い男女の悲恋が物語の骨格。
財政的に傾きつつある名門が閨閥利用して生き残ろうとするさまはヴィスコンティの『山猫』を連想させるが、野心家のタンクレディと違って賈宝玉は一途でセンシティブ。
一方の林黛玉は宝玉の素直さが受け入れられずにすれ違ううち…。
原作の賈宝玉は昔の日本でいえば元服前の少年。だから若いキャスティングになったんだろうが、筋書き以上に見ていてオジサンはじれったい。
実年齢ウン歳のチャン・ツィイーがドラマ『上陽賦』で10代の役やってたぐらいだから、もちょっと配役の年齢層上げてもよかったという気がするのだが…。
多用された大邸宅の空撮は大家の威厳や虚栄の寓意なのだろうか。
音楽も映像も美しかったが、演出にもう少し緩急が欲しかった。でも、大作小説原作で張藝謀みたいな悠長な撮り方してたら三時間楽勝で越えそう。
原作を読んでからもう一度観なおしたい作品。
我ながら変わってると思うけど、昔から悪役や脇役俳優が好きで、中国人俳優のリンポン(林鵬)もその一人。ドラマ『項羽と劉邦 King’s War』や『海上牧雲記』に出てた人。
いろいろ調べて同姓同名の女優さんがいることは知っていたけど、この方だったんですね。
清王朝文化の再現に酔う
紅楼夢(こうろうむ) 運命に引き裂かれた愛
ストーリーの中味より如何にも中国らしい建物、庭園、衣装、景色が素晴らしかった。
上海、蘇州、北京などの枯れ果てた景色を見て来たので、
当時の生きた景観が天然色で見事に再現され、当時の階級格差や礼儀作法などの風俗が艶やかに感じ取られたのが感動した。
でも、女性達の言葉遣いや男性に対する仕草はぞんざいではないかと、今日の中国と同一性に感心してしまう。
まあ、
よくぞ懐古趣味的となる清王朝文化の絢爛豪華を再現できたものだ。
保守の息吹き感じる。
( ^ω^ )
紅楼夢(こうろうむ) 運命に引き裂かれた愛
清朝の貴族社会で繰り広げられるな荘厳な人間ドラマをつづった中国の名作古典文学「紅楼夢」を、「孔子の教え」などの女性監督フー・メイが映画化。
運命に翻弄される3人の若き男女の美しくもはかない愛と悲劇を、壮大なスケールと映像美で描き出す。
祖先の勲功により代々高官を輩出する賈家一族に生まれた青年・賈宝玉(か・ほうぎょく)は、家長である賈母・史太君の寵愛を受け、何不自由なく遊び暮らしていた。
しかし賈家は華やかな暮らしを続ける一方で、宮廷からこれまでの債務を取り立てられ返済方法に困っていた。ある日、江南の塩政大臣・林如海が、莫大な財産とひとり娘の林黛玉(りん・たいぎょく)を残して他界する。黛玉は母方の祖母である賈母を頼り、栄国府での暮らしを始める。宝玉と黛玉は強くひかれ合いながらも素直になれず、すれ違いを繰り返す。
一方、宝玉の叔母である薛夫人一家も、訳あって賈家を頼り栄国府を訪れる。その娘・薛宝釵(せつ・ほうさ)が身につける金鎖には、宝玉の持つ「通霊宝玉」と対になる句が刻まれていた。
紅楼夢(こうろうむ) 運命に引き裂かれた愛
紅楼夢之金玉良縁 A Dream of Red Mansions
2023/中国
( ^∀^)
時代背景
『紅楼夢』(こうろうむ、原題:紅楼夢)は、中国の清朝時代(1644年~1912年)を背景に書かれた長編小説です。
具体的には、18世紀中頃の清朝中期、康熙帝や乾隆帝の治世が反映された時代が舞台と考えられています。
作者の曹雪芹(そうせっきん)は、清朝の官僚階級の家庭に生まれ、作品には当時の貴族社会や文化、風俗が詳細に描かれています。
### 時代背景のポイント:
1. **清朝(1644年~1912年)**:
- 『紅楼夢』は清朝の繁栄期に書かれました。この時期は、経済的・文化的発展が顕著で、特に江南地域(長江下流域)の都市文化が花開いていました。
- 小説の舞台である賈氏一族の大邸宅は、当時の富裕層や貴族の生活を象徴しており、豪華な暮らしや複雑な人間関係が描かれています。
2. **社会構造**:
- 清朝は満洲族による支配体制で、漢民族の伝統と満洲族の統治文化が混在していました。
『紅楼夢』には、科挙制度(官僚登用の試験)や封建的な家族制度、身分階級の影響が色濃く反映されています。
- 女性の地位や婚姻制度も物語の中心テーマで、儒教的価値観や家父長制が背景にあります。
3. **文化的特徴**:
- 当時は詩や文学、芸術が盛んで、登場人物たちが詩を詠む場面が多く登場します。これは清朝の知識階級の教養を反映しています。
- また、仏教や道教の思想も物語に影響を与えており、運命や因果応報のテーマが織り込まれています。
4. **曹雪芹の背景**:
- 曹雪芹の家は、清朝初期に繁栄した漢民族の官僚貴族でしたが、後に没落。この経験が『紅楼夢』の栄華と衰退のテーマに影響を与えたとされています。
- 作品は、作者自身の人生や当時の社会の変遷を反映した自伝的要素を含むとも解釈されます。
### 補足:
『紅楼夢』は単なる恋愛物語ではなく、清朝の社会構造や文化、哲学を深く掘り下げた作品です。その詳細な描写から、18世紀の中国社会を理解する貴重な資料ともされています。
全5件を表示