「鄙びた宿の主人と、書けない脚本家の話し」旅と日々 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
鄙びた宿の主人と、書けない脚本家の話し
とても風変わりな映画でした。
妙な味があります。
ロカルノ映画祭で最高賞の「金豹賞」と「ヤング審査員賞」を
W受賞したことと、
授賞式で河合優実が涙を流した。
この2点で、とても期待して観に出かけたのですが、
優実ちゃんの涙は何だったのでしょう⁉️
寒そうな大荒れの海で波に飲まれそうになって泳いでましたけれど、
死ぬほど寒くて、荒れてて怖かったことを思い出したのかしら?
①パート1、
つげ義春の「海辺の叙景」が原作です。
小さな画面、スタンダードサイズ(1.33:1)とかです。
前半の夏のパートと、後半の冬のパートに分かれていて、
河合優実は、夏パートの、主人公の脚本家のシム・ウンギョが
脚色した映画の中の主人公の女性です。
海辺で一人の青年と会話を交わして、台風みたいに荒れた海で泳ぐ。
この映画では女の子と青年の心理描写は特にないのです。
青年は沖に流されたのか?
泳いでいってしまったのか?も生死も不明。
②パート2は、
同じく“つげ義春“の漫画「ほんやら洞のベンさん」が原作です。
「冬の温泉宿の旅」をするシム・ウンギョさん。
アポ無しで宿に泊まれずに遥か山を登り、
廃屋みたいな営業してないみたいな宿に泊まる話し。
寂れた温泉宿の主人が堤真一です。
ロケ地は庄内地方のあつみ温泉らしいです。
このパート2の方は、パート1よりストーリー性があり、
温泉の主人は、妻と幼い娘に逃げられたらしく、
妻は大きな庄屋のようなお屋敷に住んでいて、
そこの川の二百万もする錦鯉をべん造さんが
盗みに行って警察に通報されたりします。
幼い娘が家から出てきて「お父さん、何してるの?」と聞くと、
「大きくなったなぁ・・・」などと頭をなぜたりします。
夏のパートのロケ地は神津島とか、前浜海岸、名組湾とトロッコ湾・・・
などで、かなりロケ地は広範囲に渡り風景には拘り抜いた様子です。
映像は美しいかと聞かれればば、夏のパートは異国風というか
“韓国とかかなあ?“と思ったりもする
ごつごつした岩肌の崖とか、見たこともないことのない
景色もありました。
つげ義春さんは旅と「鄙びた温泉」が好きだったそうです。
あと「蒸発」に興味があり、鄙びた温泉に住み着いたりしたとか。
とても古びた写真を見ているような映画でした。
食べるシーンが多いのですが、うどん屋の温かいうどん以外は
謎の食べ物ばかりでした。
例えば海辺で青年が女の子に勧める海女をしている
祖母の作った「みつ豆」
(磯の香りがするそうです)
「ほんやら洞」の食事はすこぶる粗食でした。
でも方言をくぐもって話す堤真一さんのべん造は、
何とも言えずに趣があり流石に堤真一さんでした。
シム・ウンギョさんは、いつも思うのですが、
日本人には絶対に出せない何か、があるのですね。
河合優実ちゃんは、ただ存在するだけで、その人の人生を感じさせる
稀有な不思議な魅力がありますね。
皆さん、“何か”があると期待して観るのですよね。残念ながら観念の形象化には成功していないと思います。いかにも欧州受けのする日本映画。たけしなんかもそうですが、興収なんか気にしないなんて、アメリカではソッポを向かれるだけ。来年、誰もおぼえていないのでは?
シム・ウンギョンはホントに上手いですねえ。日本でも韓国でも評価が高いんだから凄い。堤真一はわたしはあまり好きな役者ではないのですが今回は良かった。たぶんアップが全くないのが功を奏した、顔で演技しちゃう人ですから。
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