「ココ(故郷)じゃなければ、何処でも良かった…」フォーチュンクッキー デブータさんの映画レビュー(感想・評価)
ココ(故郷)じゃなければ、何処でも良かった…
英語さえ通じるなら、アメリカじゃなくたって。
米軍基地で通訳をしていたアフガニスタン人女性のヒロイン。
米軍撤退に伴い、再びタリバン政権化となり、敵に与したとされ【裏切り者】のレッテルを貼られ、
命からがら“運”良くアメリカに亡命出来た。
たった一人…遠い異国の地で、彼女はサンフランシスコのフォーチュンクッキー工場で働いている。
普段から気丈に振る舞い、平気そうな顔をしていても、毎日不眠症で夜が長い。
予約殺到の心療内科ボランティア診察を、“運”良く受けられ、彼女自身は…睡眠薬さえ貰えれば解決できるだろうと、カウンセリングには乗り気じゃなかったのだが、
カウンセラーは見抜いていた、無自覚なPTSDだと。
基地での勤務中、タリバンから襲撃され米兵が死ぬを見た、米兵がタリバン兵(同国人)を殺すのを見た。
地元では自分は裏切り者扱いで、自分のせいで親兄弟に危害が及ぶかもしれない…それなのに、自分だけ【運良く】アメリカに来れてしまった。同じ通訳仲間は二人共タリバンに殺された…
自分だけ…今は平和なアメリカに居て、バイトしながら何とか安全に生きている。
自分だけ幸せになっていいのか?
自分だけ誰かに愛されていいのか?
そんな自分が誰かを好きになっていいのか?
そんな重苦しい気持ちを、
ズッと胸の奥にしまいながら…
平静を装い、誰にも苦悩や苦労を語らず今に至る。
そんな彼女に起きた転機。
先に述べたカウンセリング。
そして、フォーチュンクッキー工場で長年、おみくじの文言を書いていたおばぁちゃん従業員の突然死。
彼女が、おみくじ分の後継に指名された。
最初はたかだか短文、簡単だ!と思っていたが、これがなかなかムズカシぃ。
短過ぎず長過ぎず、上品過ぎず下品過ぎず、難し過ぎず簡単過ぎず…丁度好い人生訓みたいな名文を思いつかなきゃならない…
いつの間にか、忘れた…喜怒哀楽。
たかがフォーチュンクッキー🍪されどフォーチュンクッキー。
一歩一歩と少しずつ、前にも後ろにも動けなかった彼女が、進み出す。
本人すらも分かってない彼女の哀しみの深さを、誰も分かってはあげられない。
そう云う意味で、世界中の誰しもが独り。
ただ、どうにか互いに寄り添う努力は出来る。
そんな御噺。
