「【"どうしようもなく、幸せになりたい。”今作はアメリカ軍通訳として働いていたアフガン女性がフォーチュンクッキー製造に携わりながら、ptsdを克服する様を描いたラストが静かに沁みる作品である。】」フォーチュンクッキー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【"どうしようもなく、幸せになりたい。”今作はアメリカ軍通訳として働いていたアフガン女性がフォーチュンクッキー製造に携わりながら、ptsdを克服する様を描いたラストが静かに沁みる作品である。】
■カリフォルニア州フリーモント(今作の原題は”FREMONT”である。)のアフガニスタンコミュニティで暮らすドニヤは、母国で行っていた米軍通訳時代の仲間の死や、米軍に協力していた事で一部から非難されていた体験が原因で、不眠症に悩まされている。
勤め先のフォーチュンクッキー製造工場で、単調な仕事を行う中、ついクッキーに”どうしようもなく、幸せになりたい。 電話番号・・”・・の紙を入れてしまうのであった。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・モノクロで序盤は淡々と物語は進む。彼女の同僚のチョイ太った親切な合コンに誘ってくれる女性、フォーチュンクッキー工場の主の中国系男性との会話がポツンポツンと交わされる。
因みに中国系男性の妻は、少し彼女に意地悪である。
珈琲の自販機が壊れた時に、彼女に2ドル50セントで珈琲を売るのである。
・その中で、徐々に明らかになるドニヤがアフガニスタンで暮らしていた時に受けた心の傷。
ドニヤはナント8カ月も心療内科の順番待ちをしている。だが、ある日、知り合いのキャンセル番号を持って心療内科のセラピストの診療を受けるのである。
そして、セラピストは”困るんだよね。”などと言いつつ、彼女にジャックロンドンの名作”白い牙”の話をしたり、自分で考えたフォーチュンクッキーに入れる文言を彼女の前の机に並べたりするのである。
・彼女は或る日、意地悪なフォーチュンクッキー工場の主の妻の言いつけで陶器屋に鹿の陶器を取りに行き、街の外れの自動車整備工場にオイルチェックのために立ち寄り、親切な自動車整備工の青年と出会うのである。
そして、青年はタダでオイルチェックを行い、珈琲を彼女に勧めるが彼女はやんわりと断るのである。
だが、彼女は青年にランチに誘われると一緒に行き、離れた席に正対して向かいお喋りをし、一緒に工場に戻って来ると最初は断った”無料”の珈琲を青年と一緒に飲むのである。そして、彼女は青年に鹿の陶器をお礼に上げると、青年は”欲しかったんだよね。”と言いそれを貰うのである。
その時の彼女の表情は、今までにないほどに、穏やかなのである。
<今作はアメリカ軍通訳として働いていたアフガン女性がフォーチュンクッキー製造に携わりながら、ptsdを克服する様を描きながら、フォーチュンクッキーに導かれたかの様なラストの親切な青年との出会いが、静かに沁みる作品なのである。>
<2025年8月3日 刈谷日劇にて鑑賞>