「フォーチュンテラーのささやかなフォーチュン」フォーチュンクッキー sugar breadさんの映画レビュー(感想・評価)
フォーチュンテラーのささやかなフォーチュン
惹句にあるジャームッシュのような小洒落た感じやお気楽さは見当たらない。移民を描くという意味ではカウリスマキだが、シニカルさやクスッと笑えるようなコメディ色は薄い。クッキーのメッセージが爆発的にヒットするとかサプライズもない。
もっと真面目で慎ましく、淡々とした作風である。
主人公ドニヤはいつも不眠症に悩み、不意に涙が出てしまうこともある。やはりアフガニスタンを逃れてきたという背景が大きいようだ。精神科医とのやり取りもぎこちないが、母国でのつらい体験の端緒をうかがい知ることができる。
一方アメリカでのコミュニティは狭く、日々の単調な生活は閉塞感が強い。ドニヤ本人も多くは語らず、控え目で踏み込みことはしない異邦人。そんな彼女だが、時々垣間見えるのは、心内に秘めている意志の強さや不条理に対する怒りである。
ラスト20分ぐらいから、白黒画面が輝きはじめる。ひょんなことから好転するのも人生の一面だ。
小さいながらも心に残る作品。
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