劇場公開日 2025年6月27日

「なんとも言えない愛おしさが漂う」フォーチュンクッキー 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0なんとも言えない愛おしさが漂う

2025年6月26日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

ジャームッシュやカウリスマキを思わせるオフビートなドラマでありながら、決して二番煎じというわけではなく、主人公ドニヤの感情がことのほか抑制されているのには理由がある。舞台はアメリカの中でもアフガニスタンからの移民、難民が数多く暮らす街。当然、ドニヤも言い知れぬ「過去」を抱えているわけだが、それを大袈裟に明かしたりはせず、あくまでセリフの中で香らせながら、静かに”いま”を紡いでいく。そのやりとりが面白い。身の回りの仲間たちも派手さはないが、みな実直に日々を生きる人たちばかり。そして何より、フォーチュンクッキーの「文言(メッセージ)考案」の仕事を通じてドニヤの感情が徐々に前向きな変化を遂げていく様が素敵だ。彼女がどうか幸せでありますように、と応援せずにいられなくなる。シンプルで簡潔。それでいて個々のキャラへの愛情がこみ上げ、モノクロームに滲む優しさと柔らかさがずっと心に留まり続ける名作である。

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牛津厚信
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