「自由への疾走は胸を打つ」脱走 kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
自由への疾走は胸を打つ
この手の映画の脱走の目的は、自由を求めるものが多い。収容所や刑務所から脱走するものが多いが、本作は北朝鮮の人間が韓国(たまに中国もある)へ脱出する、いわゆる脱北という行為を描いたもの。すべての脱北パターンを知っているわけではないが、軍人のそれは相当過酷に見える。それほど深掘りしなくても脱走したくなる環境だということは理解できるから、背景とかをあまり丁寧に描く必要がない。脱北もののアドバンテージだ。
軍の宿舎から逃げるだけでなく、きちんとトラブルを用意して飽きさせない展開にした脚本は嫌いじゃない。ありがちといえばありがちな展開とも言えるがそれなりに緊迫感があった。北朝鮮らしいというか、軍人らしい行動の描き方がなかなかうまい。
さらに好感が持てたのは色恋沙汰をあまり絡めていないこと。ある意味絡めていると言えるが、恋人に会いにとか、女性兵士との恋みたいなものが描かれなかったのはいい。ギュナムとヒョンサンの関係性に意外と深みがあるのもよかった。ただでさえ生きづらいのに、北朝鮮ではさらに生きづらそうだなと想像できる。
北朝鮮の兵士たちは銃やライフルの射撃が下手すぎだろ!と思うシーンもたくさんあったりするのは御愛嬌。それでもギュナムの自由を求める姿に心を揺さぶられた。こんな映画を作って南北関係がギクシャクしたりしないのだろうかと心配になる。これも時代の変化ってやつなんだろうな。脱北映画は辛くなる物が多いが、これからも作られていくのだろう。観て受け止めていきたい。