キムズビデオのレビュー・感想・評価
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驚異的な成果を出した無邪気な猪突猛進
キムズビデオという伝説のビデオ屋にまつわる数奇な物語は非常に面白いし、面白がるだけではいられない切実さでキムズビデオのライブラリー救出を成し遂げた監督たちの行動力と情熱には心から感服する。のだが、ドキュメンタリーとしては、キムズビデオのライブラリーがどれだけの価値があるものかを検証したり、キムさんの謎の素性を掘り下げたり、あまりにもバカバカしいシチリアの事情を俯瞰的に捉えることより、映画オタクの自己実現が優先されていて、とても個人的なドキュメンタリーだと思えばそのアプローチもありなのだが、どうしても作り手がテンション上がってヒャッハーとなってる感じが、言葉を選ばずにいうとどうしても鼻につく。これはフィクションですよという体のビデオ奪還作戦のくだりも、そこはハイストムービーとして面白そうに撮ってくれないと映画そのものへのオマージュにならないと思うのだが、残念ながら致命的に面白くない。まあ、それだけ無分別に猪突猛進ができたからこそあのライブラリーを救えたのかもしれないので、手段を選ばず成果を出すことの必要性という点で、とても貴重なサンプルケースではある。
夢と現実を見つめたカメラ
レンタルビデオ、配信の為にすっかり街からは姿を消した。
そもそも、DVDが主流になった時点で、ビデオテープは姿を消していった。
普通に保存していても劣化していく。
あんなに沢山あったビデオテープは何処へ行ったのか?
何となくインド映画「エンドロールのつづき」を思い出した。あちらは映画のフィルムの行方を描いた名作でした。
そして、この作品、そんなノスタルジーにも近くなった想いを刺激するドキュメンタリー⋯と思ってたんですが、⋯途中からは明らかにモキュメンタリー⋯自らの夢に近い想いを描いたのでしょう。
気持はわかりますが、ちょっと雑かなぁ。
#キムズビデオ
奇妙な運命
中高大で高いので映画館よりテレビやレンタルビデオ屋を使っていたので、キムズビデオのしなぞは天国かと!まあ、英語はダメですが。
金欲しさのイタリアのド田舎のマフィアと市に騙され譲った膨大なビデオコレクションが放置されまさに宝の持ち腐れになるのをレスキューするドキュメンタリー。
ラストはこんなに大団円になるのかと思ってしまうけど、今や過去の遺物なレンタルビデオでも文化的価値は計り知れない。
ニューヨークに帰還し安住の地を見つけたビデオなキムさんの笑顔にこちらもニヤリ☺️
Rental
レンタルショップに足繁く通っては同じ映画を借りたり、8時だよ全員集合を借りまくった頃がとても懐かしいなと思うくらいには歳を重ねました。
コロナ禍を機により配信の媒体が強くなり、レンタルショップが弱くなってしまった昨今ですが、アメリカに存在したマニアックな映画を多く集めるレンタルショップ"キムズビデオ"の行方を追うドキュメンタリーで、元々会員でもあった監督が駆け回るといった感じの作品です。
キムズビデオのビデオはイタリアに移っているはずなのに情報が会員にも明かされずのままなのがウズウズしてしまう監督が現地に行って、なんなら乗り込んで中を確認したらあら大変、ガッツリ不法侵入なのはこの際目を瞑るとして、中を見たら杜撰に放置されたVHSが散乱している状態でこれには思わずパニック。
ほいでもって普通にアラートが鳴って住人もやってきてとドッタンバッタンしながら、警察も介入してきたりとでもう大変な状況が監督の慌てっぷりからも伝わってきました。
監督が一向にイタリアの現地語を喋らず英語で喋り倒していたのにはイラッとしました(接客業で日本語を喋らない観光客をたくさん見てきたので)が、現実と空想の境目が分からなくなるほどのめり込んでいると言われたらしゃーないかと思ってしまいました。
そこからは政治問題だったりがガンガン絡んでいきながらも、名作傑作の映画のオマージュも入ったり、キムズビデオの再建に向けた動きだったりと駆け抜けまくっていくのがドキュメンタリーとは思えないスピード感がありました。
ただ作中の映画の大半を知らないというのが致命的でイマイチ感動や感激に乗り切れなかった感じはありました。
ゴダールとかも有名な監督なんですけどリアルタイムで追えてない&そこまで自分はハマってないというのもあって、神格化されてもピンとこないというのが正直ありました。
実際気になった作品もあったのでそれは収穫なんですが、既存の映画頼りの映画という枠は抜け出せなかったかなとは思いました。
しかしレンタルショップというものを風化させないという強い意志を感じましたし、やはりレンタルショップだからこそ感じられるあのワクワク感はいつまで経っても忘れられないのでより長く続いてくれればなと思いました。
自分もあんな感じで棚にDVDを並べてみたいなぁと改めて思いました。
新生キムズビデオにも行ってみて〜。
鑑賞日 8/12
鑑賞時間 14:00〜15:35
素晴らしい情熱。映画としては並。
よい内容だが思い込みが過剰なのが残念。
上映が近場なら見てもいい。高い交通費をかけてみる映画ではないかと…。
撮影者らしきデイビッド氏の心情を、過去の名作を引用して代弁するモノローグが多用される。それがどうもクドくてテンポが悪い。
よい点として後半の奪回作戦の手前までドキュメンタリーとしておもしろい。追跡捜査のようなノリ。そこまではとてもいい。そこまでは…。
個人的に気になる点が2つある。
1つは、数年前に日本でも絵画窃盗でニュースになった『スガルビー氏』をこの映画内では誤植の『"ズカ"ルビ』と表記している。関係者は誰も気にしていないのか。
2つめは、現代のイタリア・サレーミの人たちの扱いがひどい。まるで無責任で能天気な自覚のない悪役のように見える。映画内で描かれなかった部分には多大な協力と苦労があった筈。
もし日本の自治体だったなら、ビデオのようなサブカルはとっくに処分されていただろうし、最初から許可なしで撮影をしているのも問題。放置責任は過去の『ズカルビ』市長にある。事情を把握していない現代のサレーミの人たちにとって、不法進入と窃盗をする撮影者は狂信者にしか見えなかったと思う。もっと中立な目線が欲しかった。
【”ドキュメンタリー”『キムズビデオ』、最高に楽しめた】
1980年代後半から2000年初頭までニューヨークでカルト的な人気を博していたビデオレンタル店”キムズビデオ”があったそうな。
ゴダールから無名監督の作品まで、あるいはアート系からポルノまで、世界中から5万本以上のインディーズな作品ばかりを集めた一大コレクション。しかもかなりの数の海賊版が含まれ、FBIが家宅捜査に入って押収したこともあるという。
経営者は、朝鮮戦争後に渡米・移民した韓国系のキム・ヨンマン。露天の野菜行商からスタートしてクリーニング店経営を軌道に乗せ、やがてその店内で怪しいビデオレンタル商売を始めた。
しかしご想像の通り、ネット配信の普及とともにテープやDVDと言った物理メディアのレンタル市場は急速にシュリンクし、キムズビデオは閉業を余儀なくされ、キムはその膨大なコレクションを一括して引き取って管理してくれる主体を公募する…。
後年、かつてのレンタル会員で今や映画監督となったデヴィッドは、一時は連絡が取れなかったキムを苦労して見つけ出し、コレクションの行方を突き止めた。
名乗りを上げたのは、イタリアはシチリア島の小さな村サレーミだった。文化保護に熱心な市長(厳密には村長だろうが「市長」と訳されていた)が村興しのために受け入れを表明、コレクションを収蔵する資料館を作る企画だ。開館の暁には、かつてのキムズビデオ会員が訪れれば無料貸し出しを保証し、選定した作品をパブリックビューイングで楽しめる映画祭を開催するというオファーだったのだ。
そしてデヴィッドはサレーミへ旅立ち、”ビデオ資料館”を訪れてみたが・・・。
コレクションは10年以上も劣悪な保管状態で放置され、訪れる人もなく、もちろん映画祭など開かれてもいない。万事、当時の市長が政界返り咲きのために話題性のあるネタとして利用しただけであり、しかもマフィアと繋がりが噂される有力者に管理を任せて村の予算を流し込んでいるらしい、ということが見えてきた。
デヴィッドはその前市長、現市長、有力者、マフィア撲滅委員会などに突撃取材を何度も試みるが、市長からははぐらかされ、やんわりと脅迫紛いのことまでされる。
悲憤慷慨したデヴィッドは、ついに仲間とともにサレーミ村の仮装カーニバルの夜に資料館のコレクションを奪還するという暴挙を決意する。
「資料館を舞台にした映画撮影」との名目で市長から許可を取り、ヒッチコックやチャプリン、ゴダールなどの仮面をつけて顔バレしないようにして保管庫を破り、トラック1台に詰めるだけ詰め込んで、夜陰に乗じて密かにコレクションをニューヨークに送り出してしまった。
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・・・とここまで観て、その映画マニアたちの痛快な暴挙を大いに楽しみながら、よくぞこれで本当にマフィアに消されなかったな、と思いつつ、途中から「・・・ん?・・・おかしいぞ」と思い始めた。
最初の訪問でシチリア方言しかわからない村民とのコミュニケーションに苦労しながら探していくあたり、手持ちカメラの映像も含めて真に迫っていてすべてがドキュメンタリー”タッチ”だが、「コレクションを奪った翌朝の空っぽになった保管庫」の光景が映るのを奇異に思う。
なんで? 夜のうちに運び出して逃げたはずでは? のんびり朝の保管庫を撮影している場合ではないでしょう・・・?
これ、帰宅後に調べてみると、キム・ヨンマンもキムズビデオもサレーミ村も実在し、市長が受け入れを表明したがサレーミではないどこか(誰か)が引き取ったことまでは事実らしい。
が、結局コレクションの存在は未だに不明。
もちろん、サレーミに乗り込んでビデオを奪還する話はフィクションで、前市長、現市長、マフィア疑いの有力者もフィクション。
村の闇を暴こうとして消された?マフィア撲滅委員会長の件もフィクション。
あー危うく騙されるところだった(笑)。
しかし、実に楽しいウソだった。
それだけドキュメンタリー”タッチ”の作り方が上手い。映像技術や演出という意味でもあるけれど、ギリギリ「ありそうでもあり、なさそうでもある」ウソを巧妙に組み立てているところが二重に「映画的な虚構」があっておもしろい。
同時に、制作者たちの映画への偏愛が溢れ出ている。
思えば、こうして「映画への愛を表現する映画」というのはどれだけあるだろう。
今までに観ただけでも『ニュー・シネマ・パラダイス』『アイ・ライク・ムービーズ』『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』『フェイブルマンズ』がそうだな。
他にある?とGoogleGeminiに訊いてみたら、『エド・ウッド』(1994年、ティム・バートン監督)、『グッバイ・レーニン!』(2003年、ヴォルフガング・ベッカー監督)『ヒューゴの不思議な発明』(2011年、マーティン・スコセッシ監督)を挙げてきた。
いつか観てみたい。
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