「映画としては面白い、J・Wサーガとしては…」バレリーナ The World of John Wick だいさんの映画レビュー(感想・評価)
映画としては面白い、J・Wサーガとしては…
J・Wシリーズは4作履修済み、ドラマ版は未視聴
まず、初めに感じた事
内容がほぼジョン・ウィック
既視感のある設定、既視感のあるアクション、既視感のある戦闘スタイル
徹頭徹尾とまでは言わないが、シリーズを深く追ってきた人間ほど「あれ、これあのシーンのあれじゃん」が多くなると思う
そりゃ完コピってわけじゃないし、新たなバトルアクションや、新たな"武器"が生み出される辺りは、ジョンウィックっぽさを感じつつ新鮮な気持ちで鑑賞できたが
それを補って余りあるくらいの既視感
"お互い銃を奪い合ってゴタつき、机にガシャーン"
"武器を投げて応戦、敵の頭にクリーンヒット"
"敵との中間地点に武器が落ち、それをビーチフラッグする"
よく言えば"イースターエッグ"や"原作オマージュ"なのかもしれないが、この作品がリメイクや「ジョンが全く登場しないサイドストーリー」でもない限り、このアクションのダブりはよくないだろう
次に、ジョンいらない
これは複数のサイトやコメントで見かけた意見だが、自分も概ね同意
この作品にジョンはいらない、出なくていい
言葉を選ばずに言うと、ただの雑音
キアヌを見れたのは嬉しいし、ジョンのあの「動きはくたびれてるがしっかり人を殺す」アクションを見られただけでも充分
モブの「お前死ぬ気か?相手はジョン・ウィックだぞ」「相手は一人よ」からの即フラグ回収したシーンは大好きだ
しかし、この物語
イヴが復讐を決意し、ジョンの古巣である「ルスカ・ロマ」へ入り一流の殺し屋に育つ過程を描く本作には、その目指す先に居るババヤガ"ジョン・ウィック"は出るべきではない
映画を見ればわかるが、この作品の制作陣はジョンを扱いきれていない
本作の時系列は「ジョン・ウィック3」のど真ん中
回想こそ1以前だが、映画の主軸は3の序盤
ジョンが全世界の殺し屋に追われ、ルスカ・ロマの手助けを受けるシーンが挿入され、終盤に出てきたジョンの薬指は無かった
3の構成がかなりうまくハマっていただけに
「ジョンがモロッコに赴き主席連合と"話し合い"をして首長に指を差し出して、NYに帰るまでの間に…」
と後出しされても、なんかこじつけ間がにじみ出てしまっている
3の幕間に実は、ディレクターから依頼を貰ってヨーロッパに寄っていたって言われても、あの後ルスカ・ロマが襲撃されるまでがかなり綺麗に流れている為、本作のジョンの"寄り道"は蛇足でしかない
どうしてもジョンを出したかったのなら、イヴがピンチの時にディレクターの依頼を受けたジョンが狙撃し、映るのは後ろ姿だけ
とかの方が絶対映えた
最後に、イヴのアクションがもたついて見える
本家ジョンのアクションも、スタイリッシュで颯爽と敵を倒す!と言うわけじゃなく、撃たれながら、刺されながら、血みどろになって泥臭く銃撃を行う、かつてないほど現実的かつ"美しい"演出が魅力だ
しかし本作のイヴは、ジョンと同じく撃たれたり刺されたり殴られたり…
見ているだけで目を覆いたくなるような攻撃を受けながら戦う
ここでジョンと違うのが、イヴはやたらともっさりしている
言葉で説明するのは少し難しいが、ジョンに比べるとワンテンポ遅い様に感じる
ジョンが「食らう」→「ダメージ」→「戦闘態勢」なら
イヴは「食らう」→「ダメージ」→「ダメージ」→「戦闘態勢」みたいな
まぁジョンは一流だし伝説だから、身のこなし方も人外レベルなのかもしれないが
だとしたら尚更、その人外レベルのアクションを見慣れているファン層に見せるには、少しテンポが悪いアクションになっていた気がする
女性で小柄、殺し屋を始めたての新人と言う演出なら凄いリアルだったと思うが、本家が4まで続いた今更、1のジョンよりもたついたアクションがデフォルトの映画を作るって言うのはどうかと思う
これなら、ジョンの名を冠さず全く無関係の映画を装って、最終的にジョンが出てくる…みたいな演出の方が絶対よかった
タイトルから内容までジョンに頼り切り、スピンオフと言うより3の補足映画
ここにきて新キャラの映画を作るくらいなら、シリーズに出てきた様々な名有りキャラのサイドストーリーを描いた映画の方が見応えがあって面白そうだった
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