「キアヌの偉大さを知る」バレリーナ The World of John Wick くめいさんの映画レビュー(感想・評価)
キアヌの偉大さを知る
シリーズを重ねるごとに興行収入が前作を超えていく化け物シリーズのスピンオフ。
『コンセクエンス』ではアトラクションのような派手なアクションシーンが怒涛のように流れたが、今作は『2』あたりのような地に足の着いたアクション。ただし見せ方には工夫があって既視感のようなものはそこまで感じなかった。
これも『コンセクエンス』との比較になるが、ストーリーはちゃんとしている。前作のようにストーリーよりアクション! リアリティよりカッコいい殺し屋ルール! みたいな感じではなく、メインシナリオはわかりやすい復讐劇に終始している。
総じてアクションの迫力は◎。ストーリーも重厚とは言い難いもののシリーズとしては良い部類だと思う。
さて、今回のタイトルだが、この作品にはキアヌ・リーヴス演じるジョン・ウィックも登場する。アナ・デ・アルマス演じる主人公イヴが所属する殺し屋育成機関の(元)先輩、という関係だ。
最初からキアヌ演じるジョン・ウィックを観てきたのですんなりと受け入れてきていたのだが、こうして別の主人公と並べるとキアヌの素晴らしさがありありと見えてきた。
優しい顔立ちと憂いに満ちた表情。心中の葛藤が漏れ出ているかのような重い口調と、力強い言葉の実直さ。そしてキレのあるガンアクションと圧倒的な立ち回り。
この対極なデティールの両方が極限に洗練された陰影がキアヌの演じるジョン・ウィックなのだ。
対して今作の主人公であるイヴは熱く、どこまでも真っ直ぐである。親の仇を見つけたなら人の言うことなんて聞かないし、対立する相手を説得しようという素振りもない(まぁ、その余裕が無いともいえるが)。
今回の映画は面白かったが、この主人公のキャラクターをジョン・ウィックと比較するなら是非の分かれる意見もあるかもしれない。
尤もこれはイヴの始まりの物語で、彼女に実力的にも精神的にも成長する余地が十分ある、という解釈もできる。というか監督はそのつもりだろう。
次回作で彼女がどう成長するのかを楽しみにしている。
この映画の不満は、ノーマン・リーダスの出番が思った以上に少なかったことだ。この役なら、彼である必要があったのか……。はたまた、後の作品で再登場させるのかもしれない。
あと、レストランのアクションシーンはもっと長回しで観たかった。もしワンカットだったら個人的には『アトミック・ブロンド』に比したかもしれない。
関係ないが、何となく『ガンパウダー・ミルクシェイク』という映画を思い出した。あの映画も好きなので久々に見返してみようかな。
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