劇場公開日 2025年8月22日

「スピンオフながら、本編シリーズにも引けを取らないアクション」バレリーナ The World of John Wick 緋里阿 純さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5スピンオフながら、本編シリーズにも引けを取らないアクション

2025年8月28日
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鑑賞方法:映画館

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【イントロダクション】
キアヌ・リーヴス主演の大ヒットシリーズ『ジョン・ウィック』のスピンオフ作品。シリーズ第3弾『パラベラム』(2019)に登場した舞踏家・暗殺者集団“バレリーナ”に所属する女暗殺者の復讐劇を描く。物語の時代設定は、『パラベラム』と第4弾『コンセクエンス』(2023)の間に位置する。

主人公イヴ役に、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021)にて新米CIAエージェントを演じて強烈な印象を残したアナ・デ・アルマス。また、シリーズの顔役であるキアヌも特別出演。
監督は『アンダーワールド』シリーズ(03,06,12)のレン・ワイズマン。脚本は本シリーズ『パラベラム』、『コンセクエンス』(2023)のシェイ・ハッテンと『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020)のエメラルド・フェネル。

【ストーリー】
イヴ・カマロ(アナ・デ・アルマス)は、主席連合の支配下にある組織「ルスカ・ロマ」に所属する父・ハビエル(デヴィッド・カスタニェーダ)と、ヨーロッパに拠点を置く暗殺者達によるカルト教団に属する母の間に生まれた子供だった。

イヴがまだ幼い頃、ハビエルは娘を教団の魔の手から守ろうと、教団の掟に背いて逃亡生活を送っていた。母は代償として命を落とし、ハビエルもまた冷酷な指導者である主宰(ガブリエル・バーン)率いる追手によって命を落としてしまう。行き場を失ったイヴは、「コンチネンタル・ホテル」の支配人ウィンストン(イアン・マクシェーン)に連れられ、父が元居た「ルスカ・ロマ」の首領・ディレクター(アンジェリカ・ヒューストン)に引き取られる。

12年後、イヴは父を殺した教団への復讐心を胸に、暗殺者“バレリーナ”となる為の過酷な訓練の日々を乗り越えていた。そして、遂に彼女に暗殺者としての仕事が舞い込むようになる。
命懸けの任務をこなしていく中で、ある日、イヴは倒した刺客の腕に教団員が持つ傷を発見する。ディレクターは教団に関わらないよう指示するが、イヴは復讐心を滾らせ、命令を無視して教団への復讐の旅を開始する。

【感想】
スピンオフながらも、本編に引けを取らない圧倒的な熱量、「まだそんな見せ方(魅せ方)があったのか!」と驚嘆させられるアクションの数々に、非常に楽しませてもらった。

イヴが窮地を脱する為に手榴弾を駆使して戦う姿は、これまで銃をメインウェポンとしてきたジョン・ウィックにはない戦法で新鮮に映った。そんな中でも特に、クライマックスで教団が運営する村でイヴと主宰の側近が繰り広げる火炎放射器によるアクションは本作の白眉。燃料が切れ、消火栓のホースで果敢に挑むイヴの姿は、馬鹿馬鹿しくもその圧倒的な熱量で名シーンにまで昇華している。
また、キアヌ・リーヴス演じるジョン・ウィックが、単なるゲスト出演に留まらない活躍を見せてくれる姿は、シリーズファンとして嬉しかった。ただ、クライマックスでイヴの復讐に些か肩入れし過ぎな印象も受けたのは確か。ジョンも復讐心から裏社会に舞い戻った身である為、家族の復讐に燃えるイヴに肩入れするのは自然な流れとして理解出来るのだが、せめて主宰の側近との火炎放射器合戦の決着は、名勝負となっただけにイヴに自分の力で切り抜けてもらいたかった。

ディレクターの台詞が良く、幼いイヴを励ます「過去を奪われても、未来を失わないで」という台詞や、イヴの隣のベッドに居た1番バレエの上手かった子が組織を去った事について問いただすイヴに「あの子にこの世界は向いていない。悲しみは知っていたけど、苦しみを知らなかった」と語る姿が印象的だった。

主演のアナ・デ・アルマスの熱演が素晴らしく、過酷なアクションも見事にこなしていた。彼女を本作に起用する要因となったであろう、『007』での新米エージェントとしての存在感も魅力的だったが、本作では復讐に燃え、信念を貫くヒロインを熱演していた。まだ20代だと思っていたのだが、調べてみると今年で37歳だと言うからビックリ。更に、トム・クルーズの恋人として噂されているという事も知って2度ビックリ(笑)

日本では、ゲーム『DEATH STRANDING』の主人公役で印象に残っているノーマン・リーダスが、本作ではチョイ役での出演ながら印象的な活躍を見せている。娘の為、ハビエルと同じく教団に背いて戦う姿は、イヴにかつての父親の姿を重ねさせ、戦いへ挑む動機を自然に強化する。

惜しむらくは、タイトルにもなっている“バレリーナ”要素が、父との思い出の品であるオルゴールや舞台の演目、戦闘の際の僅かな身のこなしでしか感じられず、取ってつけたような印象に止まってしまっていた点だ。せっかく戦闘技術だけでなくバレエの技術も長い間研鑽を積んだのだから、アクションシーンの動きにもそれが活かされていた方が、『ジョン・ウィック』シリーズとの差別化も図れて一石二鳥だったように思うのだが。
アクションシーンでは、初任務の護衛の際、クラブで氷張りの床をブーツの爪先で弧を描くように削っていたが、特にその動きに意味もなく、直後に普通の格闘戦に発展してしまったのは残念だった。村での戦闘の際は、氷上で体幹の良さを発揮して敵を撃破したりはしていたが、全編に渡ってもっとそうした自身のアドバンテージを活かした優雅な立ち振る舞いを期待していた。訓練の際、屈強な男に勝てない事をボヤくイヴに、ノーギが「女らしく勝て」と助言すらしていたのだから、泥臭いアクションばかりではなく、バレエのような美しくしなやかな動きで男達を圧倒してほしかった。
イヴが割と無双ぶりを発揮する(クライマックス直前でのジョン・ウィックとの戦闘により、少なくとも彼には遠く及ばないというのは示されたが)ので、そうした強さの理由付けとしても、バレエの動きというのは絶好のネタだったと思うのだが。

【総評】
本編シリーズを4作も重ねて尚、まだまだアクションシーンのバリエーションで魅せてくれるこの世界観には興味が尽きない。

本編シリーズも再びジョン・ウィックを復活させて『5』を製作する様子だが、『チャプター2』(2017)でジョン・ウィックが陥ったように、イヴもまた殺し屋達から狙われる身となったので、スピンオフとして始まったこちらも是非シリーズ化してほしい。

緋里阿 純
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