「進化したアナ・デ・アルマス、シリーズ本編に負けない迫力で敵を薙ぎ倒す」バレリーナ The World of John Wick ニコさんの映画レビュー(感想・評価)
進化したアナ・デ・アルマス、シリーズ本編に負けない迫力で敵を薙ぎ倒す
アナ・デ・アルマスがガチで暴れる! キアヌのアクションも(思ったよりは)ある! 男性が主役のアクション映画に遜色ない、ダイナミックなアクションがてんこ盛り。スピンオフものに漂いがちな物足りなさはなかった。
アナのアクションと言えば「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」のパロマ(かわいい、最高)だが、そこからさらに強さ、かっこよさが進化している。
パンフレットによると、時系列的には「ジョン・ウィック:パラベラム」と同時期という設定だそうだ。
ジョン・ウィック(以下JW)本編は物語のトリガーが犬の仇討ちというのが何とも味わい深いが、本作のイヴが動く理由は父の仇討ち。大きいわんこは出てくるが犬は死なないのでご安心を。
少女時代のイヴから始まり、彼女に起こる悲劇とルスカ・ロマでの厳しい訓練や初仕事までは説明パートという感じだが、仕事に慣れてダニエル(ノーマン・リーダス)と対峙するあたりからアクションのギアが上がる。
JWほど銃捌きの華麗さで魅せるわけではないが、ドアやテーブルなどを上手く使った接近戦は女性の肉体的ハンデを補うやり方として賢さを感じたし、敵の落とした武器やその辺の重量物など手当たり次第に取っては殺る戦闘スタイルはスピード感と殺意があってよかった。
教団の村のレストランでのシークエンスの、静かな店内とのどかなBGM、そこで勃発する殺し合いという緩急は定番だが上手い。
ダニエルとの邂逅、武器屋、教団の村とステージが移るにつれ武器のバリエーションが増えていくのも面白かった。火炎放射器vs消火ホース、皿割り競争のシーンはさすがに笑ってしまった。
前作の公開時期にランス・レディックの訃報を聞いたような記憶があったので、シャロンが出てきた時にはちょっと驚いた。本作が遺作だとは知らなかった。
キアヌの登場は、序盤の「見せウィック」だけで終わりかと思っていたら、後半にちゃんとキーパーソンとして出てきたので嬉しかった。やはりシリーズの積み重ねがあるので、伝説の殺し屋感に説得力がある。銃捌きのキレも別格で、作品が締まる。
しかし、せっかくイヴを圧倒したのに、タイムリミットまでのこととはいえ何故か彼女に自由行動の時間を与えるJW。依頼(イヴの処分)を遂行しないどころかイヴを援護。ババヤガ(殺し屋を殺す殺し屋)らしからぬ甘さ。……まあ、そんな情を捨てられないところもあってこそのJWということなのか?(好意的解釈)遠方からの援護だけじゃなくて、イヴとJWががっつり共闘する光景を見てみたかった。
ラスボスの主宰、イヴに撃たれるのあっけなさすぎ。無防備にゴタクとか並べてるから……。
余談だが、本作に向けてのウォーミングアップとして、事前にアナ・デ・アルマスのハリウッドデビュー作「ノック・ノック」を観た。今思えばこれは失敗だった。10年ほど前の、アナがキアヌと初共演した作品なのだが……
幸せな親子4人の家庭のよき父よき夫であるキアヌが、自宅に来たアナたち美女2人のハニトラに引っ掛かり、物理的・心理的にいたぶられまくるという話。キアヌはアナに出ていけと言うが、追い出すなら未成年淫行で通報すると脅すアナ。最後までとにかくキアヌが情けないし、アナが怖い、そして胸糞悪い。
教団の村でイヴがJWと対峙した時、村を出ていけ、いや出て行かない、といったやり取りがあったが、「ノック・ノック」でも見たなあこれ、とついひ弱なキアヌを思い出してしまいはなはだ気が散った。
興味のある方は、本作を観た後にどうぞ。
それはさておき。本作のアクションデザインを担ったのは、87 Elevenという制作会社。1997年にチャド・スタエルスキとデヴィッド・リーチが設立した、アクションに特化した会社だ。共にスタントマンとしての経験豊富な2人がスタントマン育成のために立ち上げた、アクショントレーニングのノウハウと施設を持ったチーム。JWシリーズの全てに企画から関わってきた。
キアヌのあの研ぎ澄まされたアクションが支えたシリーズの流れを汲むスピンオフで、しかも体力的にハンデがあるだろう女性を主役に据えて本編に迫力負けしていないのはすごいことだ。87 Elevenによるコレオグラフィーの工夫と、彼らのチームによる長期間の訓練を乗り越えたアナのパフォーマンスの成果だろう。
聖母マリアにご賛同いただきありがとうございました😊またいいねもありがとうございました。
JW氏の登場は好意的に解釈しました。
本来 クライマックスであるはずのラスボスとの対峙が ご指摘のとおり インスタントかつ 変 でした。
失礼します。