「罪悪と快楽の物語」クリムト&THE KISS アート・オン・スクリーン特別編 HGPomeraさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5 罪悪と快楽の物語

2025年7月14日
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鑑賞方法:映画館

知的

個人的な「視野」を豊かにしてくれた作品でした。

まず、本作においてはドキュメンタリーなので、評価はあくまでも「映画館」で観たときにどう思うかを主観的に評価するものであり、その点においては2.5との評価になりました。
当たり前ではあるのだがエンタメ性は皆無であり、さらに客観的に見栄えのする「観せ方」は二の次なので。
当然眠くもなりました。

ですが、クリムトの作品自体は魅力的で、充分スクリーンに魅入って鑑賞できました。
クリムトという著名な作家を改めて本作で学ばせていただいた上での感想が、表題のとおりです。
クリムトは歴史的にも好色家として有名らしいのですが、以下の考察を個人的に行いました。

①作品女性の「顔」の写実的な美しさに、女性のことを心から知りたいとのクリムトの想い、女性に魅了され、描き、求め続けた結果が好色家につながったのだろうか。
一種の「麻薬」(あくまでも女性に対する依存性を表現するたとえである)のような、抗いがたい誘惑に取り憑かれたのかもしれない。

②確実な情報ではないが、生涯唯一「信頼」を抱いていたエミーリエとはプラトニックな関係で有ったことが事実であれば、美しい女性画と同調している事の多い、「絶望」「罪悪」「奈落」の様なイメージの画風の作品には、「麻薬」に取り憑かれたクリムトのエミーリエに対する罪悪感や、自分自身に対する自己嫌悪の表現も在るのではないか。

③そのような「魂」を込めた作品であるからこそ、人々に評価され名を残す著名人に昇華したと思えます。

以上のように考察しました。
実は、アールヌーボー様式の同時期作家としては(あくまでアール・ヌーボー様式の枠の中で)どちらかというとアルフォンス・ミュシャの方が印象的で好きなのですが、今回鑑賞したことにより、クリムトという方の作品の魅力を知ることができ、その認知度の高さに納得し、個人的な絵画を楽しむ「枠」が増えたことは嬉しく思いました。

音楽もそうですが、絵画や劇画などの芸術は、本当に「視野」を豊かにしてくれることに、改めて感動を感じました。

HGPomera