ブラックバッグのレビュー・感想・評価
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ボンボヤージュ それとも グーテライゼかな
スパイ映画は一瞬の台詞や映像のみで、陰謀や伏線の細部までを理解するには無理があります。ある程度の概要把握で割り切り、あとは映画の雰囲気に浸る方が楽しめると思います。何せ映画そのものが「ブラックバッグ」(秘密裏の違法捜査活動)なので。
ジョージとキャスリンの夫妻は、絶対的な相互信頼関係がありそうで、その実、底部に微妙な駆け引きが潜んでいるという、洒落てて謎めいた感じがいいです。水曜日のキャスリンの出発時、「君がスイスに行くのは知ってるよ」と、仄めかしたってことですよね。
「不快な食事会」や「嘘発見器」の描写もなかなか面白かったし、月曜日の仕事帰りに釣りに行き夕飯の食材をゲットする生活、なんとも羨ましい限りです。
Bland
90分台と観やすい尺なのが大助かりで、頭脳戦ミステリーなのも面白そうと思って観たんですが、べらぼうに地味かつ動きがなさすぎる展開であまり好みではありませんでした。
諜報員のジョージが取引やらなんやらで自分の奥さんが怪しいと言われ、なんとかして真犯人を見つけたろうと躍起になる話で、容疑者候補を自宅へ招集→外での諜報活動→嘘発見器で嘘つきを探す→再度自宅へ招集という進み方自体はシンプルなんですが、展開がどうなっているとか、登場人物の感情だとか、何もかも言葉にも仕草にも出てこないので非常にわかりづらかったです。
夫婦がカッコつけながらイチャイチャし、付属としてミステリーがついてくるといった感じなので、そっちがおまけなんだと呆気を取られたのは確かです。
ジョージが優秀なのかおとぼけさんなのか分からない微妙なラインを突きまくるのも悩ましいところで、決めるところ決めたなーと思ったらボロが出たりしつつも、なんとか表情だけ保っている状態でやっているのでカッコよさを感じられなかったのは残念でした。
全体的に動機が色恋沙汰多めなのも気になったところで、そんな狭いサークルの中でわちゃわちゃした色々ともつれていっちゃうでしょう…と頭の良い連中のはずなのにバカっぽさが出てしまっていたなと思いました。
ラストのゲームのシーンの駆け引きもそんなに捻りが無いなぁと盛り上がりきれず、そしてあっさり終わってしまったので、スタイリッシュではあるんですが胸につかえたモヤモヤは結局取れずじまいでした。
スパイ映画と銘打っていながら、ガッツリ室内での出来事をメインに展開していき、多少の爆発が添えられてはいますが、スピーディーなアクションもあるんじゃない?と微かに期待していたものは華麗にぶち壊されました。
食べたことがないのでアレなんですが、魚の活け造りってあんなビチビチ動くの?というところが衝撃的でした。誰か連れていってください。
究極の雰囲気映画じゃないかなと思いました。
好みではありませんでしたが、好きな人は凄い好きだろうなーというタイプの作品でした。
鑑賞日 9/27
鑑賞時間 18:25〜20:05
上品で丁寧、後味も最高
あまり期待してなかったけど超面白かった!!
とにかく上品で無駄がない
派手な演出やアクションは無いが緊張感があって
だからここぞという見せ場がすごく際立つ
スパイものと聞いて、今まで観てきたそれこそ007とか
こないだの『アマチュア』とか
派手なアクションや爆発シーンがあるのかと思いきや
舞台は家やオフィスでの会話劇と一見地味だし
起きている事も最終的に整理するとそこまで複雑な事でないのに
駆け引きや人間関係、真実が分かる順番など
構成の工夫だけでもスリリングで全く飽きる事ない展開。
映画館で見る映画というとどうしても映像が凄いものとか
絵の豪華さを重視してしまうけど
こういう駆け引きや構成を楽しむ映画も
本当に映画館でこそ楽しめるものだと思った。
家だと集中出来ずに訳分からなくなりそう…
かといって絵作りももちろん丁寧で考え抜かれてる感じ。
それにしてもこのラグジュアリーで上品な仕上がりは何なんだ!!
創ったものを見せびらかさない大人の余裕を感じる…
キャストも完璧すぎる!
終わり方も尻すぼみとかただ解決するだけでなく
ワクワクするような感じで鑑賞後の後味もとにかく良い!!
この帰る時にお土産まで持たせてくれるような感じ、
私もこんな大人になりたい笑
アンチ・ボンド‼️
今作はソダーバーグ監督による「男女6人スパイ物語」‼️諜報員マイケル・ファスベンダーに課せられた任務は二重スパイをあぶり出す事。容疑者は組織内のカウンセラー女医、女性情報分析官、そして3人の諜報員。しかも諜報員の一人は愛する妻ケイト・ブランシェットである。そんな6人はそれぞれ複雑な人間関係にあり、夫婦をはじめとする3組のカップルで成り立ってる。そんな人間関係の中で繰り広げられる頭脳戦と心理戦‼️まるでソダーバーグ監督の「セックスと嘘とビデオテープ」のスパイ版とでも言いましょうか⁉️本作にはハリウッドの他のスパイ映画みたいな派手なアクション・シーンは一切ナシ‼️どちらかと言えば「国際諜報局」や「パーマーの危機脱出」みたいな、アンチ・ボンドな作風‼️そういう意味ではイギリス的な感じがします‼️そんなアンチ・ボンドな作品にピアース・ブロスナンがキャスティングされてるのもナイスですね‼️冒頭、ファスベンダーが指令を受けにバーへ赴くシーンの背中のショットからワクワクするし、男女6人が揃う二つの夕食のシーンの会話劇の面白さもゾクゾクさせられる‼️この夕食シーンの会話劇が見せ場のスパイ映画だなんて、なんて素晴らしいんでしょう‼️そして主人公と、容疑者である妻との関係が、偽りの夫婦関係ではなく、真実の愛に満ちてるのも映画の風格を高めてると思うし、鑑賞後の幸福感も高い‼️
3分20秒
英国NCSC諜報員が不正プログラム「セヴェルス」を盗み出したスパイを追う話。
自身の嫁を含む5人が容疑者として挙がる中、自宅に彼らを呼んで料理に自白剤的おクスリを持った食事会が開かれて巻き起こっていく。
嫁にはクスリのこと事前に言っちゃうし、なんだか面倒なゲームからのグダグダ暴露大会になり成果は上がらず、そしてゴミ箱に知らない映画のチケットが…。
えっ、死んだの?えっ、監視した瞬間も漏れてるの?えっ、そこ繋がってるの?えっ、生食は違法なの?それはどうでも良いか…(´・ω・`)
鑑賞中、誰が怪しいとか頭に浮かぶことはもちろんあるけれど、理解力に乏しい上に専門用語にもピンと来ない自分には、会話も展開も兎に角テンポが速くて、言っていることや状況を把握するのに必死。
考えているうちに、あーそういうこと、となることも。
面白かったしなかなか上質なサスペンスだとは思うけれど、難しかったし疲れたw
小説か解説本希望
ケイト・ブランシェット夫妻が勝ちましたってことで良いんだよね。
旦那さんが人智を超えた洞察力で解決したね。
何が起きたのかは分からなかった。
ここまで事件についてが描かれないってことは、そこは重要度低いんだろなと判断して、深く考えないことにしたよ。
ケイト・ブランシェットの赤いジャケットかっこよかったね。
集中して観れば大筋は理解可能だけど・・・
監督スティーブン・ソダーバーグ、脚本マイケル・コープの二重スパイを炙り出すミステリードラマ。
英国諜報部員の破格の年収を思わせるような優雅でスタイリッシュでクールなシャレオツ仕様。
マイケル・ファスベンダー主演の難解な映画と言うと説明されない暗喩がたくさん散りばめられた「悪の法則」を思い出すが、本作は短い尺にもかかわらず、直接本筋とは関係ないが如何にも意味ありげな会話ややり取りで必要な情報を迷彩的に隠し、説明も少なく、コードネームを交えた会話などで鑑賞者の情報処理能力を問うような内容。
さらにファスベンダーやケイト・ブランシェットが全く表情を変えない事も視覚的な情報を得ることができず難解度合いを上げている(ように思う)。
極端に言えば実際は何も起こっておらず、ほぼダイニングや会議室等の屋内での心理的な会話劇なので、頭を使う割には退屈でレビューが低い理由はわかる。
当然頭の悪い自分自身も拾いきれていない情報が山ほどあるはずだが、全て拾えたとしても観終わった後の爽快感や納得感は薄そうなのでもう一度観たいとは思わない。
ストーリーそのものについてレビューするとどうしてもネタバレに繋がってしまうので難しいが、あの夫婦は自分達が嵌められた事以外は基本全て気付いていると思って観るとある程度は整理しやすいのではないかと思う。
特に映画の半券を誰が捨てたかなんか途中からお互いがわかってたように思うしw
英国では「活け造り」がイリーガルってはじめて知った。
一度ちゃんとシメるか、元の姿に戻さなければ良いってことかな?
ヒリヒリする会話劇
エリート諜報員同士が二重スパイを炙り出すために繰り広げる頭脳戦。ジェームズ・ボンドやイーサン・ハントのようなド派手なアクションはないが、それぞれがプロ中のプロのスパイ同士のやり取りにはヒリヒリさせられれる。そして、静かな分、表舞台には見えないところでこんなことが実際に起きていそうだというリアルさが感じられる。
映画的な場面もいくつか差し込まれてはいるが、知的な話に痴的な話題が織り込まれる大人のウィットに富んだ会話劇としての脚本は、いかにも舞台演劇の本番イギリスらしさを感じさせ、実際に舞台上演も可能に思える。
なお、"black bag" はスパイ活動としては「建物などに密かに忍び込んで情報を盗み出す行為」を指すようだが、ここでは「スパイ同士の夫婦が互いにも明かせないほど機密性の高い情報」という意味で使われているようだ。
本編の内容とは関係ないが、2時間超えが当たり前になってしまった時代に、94分という上映時間はサクッと観れてちょうどいい。大体の作品を90-100分くらいで作ってくれないかなぁ。
秘密は棺桶に入らない‼️❓
おもしろいけど
導入が薄くて入り込みづらかったかもしれない。
まずなんでこの5人が疑われたのかとか
そもそもセヴェルスって何?とか
大勢の人が死ぬのは分かったけど
それがなんなのか分かるのはだいぶ後半だし
最初の晩餐会も、誰が諜報員で
誰がカウンセラーで、誰と誰が同僚で部下で……
みたいな関係性がほぼ出ないまま、
本人達からしてもこれは謎メンなんだな〜って
ことくらいしか分からず、
ただもう既に腹の探り合いはされていて
伏線とかももしかしたらあったのかもしれないけど
ふわっとしたままなんか進んでっちゃって
これ妻が一番怪しいんじゃね?ってなりつつも
それも罠で、結局はただの最強夫婦でしたっていう。
キャストはみんなかっこいい&綺麗だし
スパイものにアクションシーンがなくても
全然いいと思うんだけど、
120分くらいあってもいいので
だからこそもう少し導入とか人間関係を
濃いめにしてほしかったな〜と思いました!
なんかちょっと物足りなさが残るというか
もう少し浸かりたかったな。
嘘発見器のシーンとかも
なんとなく置いてけぼりになってしまったので
配信されたらまた観たいと思います。
ハラハラドキドキ感満載。ケイト様の演技は圧巻!
イギリスの諜報部員夫婦のスパイ映画だが、物凄く面白かった。スパイムービーはハラハラドキドキするが、この作品もハラハラドキドキ感満載。
それにしてもケイト・ブランシェントの演技は圧巻。母親役でも、指揮者役でも、女王役でも今回の諜報部員の妻でも演技は素晴らしく圧巻。さすがケイト様!見事。
信頼と裏切りの心理戦
■ 作品情報
監督はスティーヴン・ソダーバーグ。脚本はデヴィッド・コープ。主要キャストはマイケル・ファスベンダー、ケイト・ブランシェット、マリサ・アベラ、トム・バーク、ナオミ・ハリス、レゲ=ジャン・ペイジ、ピアース・ブロスナン。製作国はアメリカ。
■ ストーリー
イギリスの国家サイバーセキュリティセンターのエリート諜報員ジョージ・ウッドハウスは、国家機密である不正プログラム「セヴェルス」を漏洩させた裏切り者を見つけ出すという極秘任務を課される。容疑者は組織内部の5人の人物だが、その中には同じく凄腕諜報員であるジョージの妻キャスリン・セント・ジーンが含まれていた。誰もが怪しく、わずかな情報を頼りに真相に迫っていくメインストーリーは、ジョージが容疑者たちを夕食会に招き、仕掛けられた薬とアルコールの効果で彼らの本音や隠された関係性を探るという形で展開される。
■ 感想
全体的には、人間の深淵を覗き込んだような、ちょっとぞっとするような心理劇という印象です。国家機密漏洩というサスペンスフルな設定を借りつつ、物語の核心にあるのは、夫婦や恋人という最も親密な関係にすら潜む、他者の「裏の顔」や「秘密」といったパンドラの箱です。
アクションシーンは一切なく、冒頭から繰り広げられるのは息詰まる会話劇。観客は主人公ジョージと共に、誰が裏切り者なのか、妻への疑惑とどう向き合うのかを推理していくことになります。時に難解な会話の内容に戸惑うこともありますが、それがかえって、情報が断片的にしか与えられないスパイの世界のリアリティと、ジョージの困惑を追体験しているような感覚を生み出しています。とはいえ、頭の悪い自分には理解が追いつかず、イマイチ没入できなかったの残念です。
鑑賞後、「すべてを知ることが本当によいことなのか?」、あるいは「すべてを知った上でなお続く関係こそが本物なのか?」という問いが、頭に残ります。なんだか、私たち自身の人間関係における信頼と不信、そして隠された真実への探求心について、深く考えさせるかのようです。
ワンシチュエーションならなぁ
夫婦のブラックバックを探るな!
ブラックバッグ Black Bag
諜報活動組織ではよくある事なのだろう。それ故に社内にカウンセラーが常駐し、定期にストレス健診が行われ、今回の内部調査が敢行された。
その調査は最重要任務で、期間は1週間のうちに組織内部の裏切り者候補5名男女が指名され、その中に彼(ジョージ)の妻も含まれ、「black bag job」(ブラックバッグ・ジョブ)することだ。
ジョージ夫婦共にベテラン諜報部員で、夫婦関係は組織公認であり、互いに一瞬たりとも気の置けない、かつ気の置かない微妙な信頼関係が刺さる。
詰まるところ、この在り方をブラックバックと言うのであろう。
さて、裏切り者探しには、
薬物入り食事会、相互密告ゲーム、嘘発見器、同僚暗殺、社内不倫、密告呼び出し尋問、内部違法捜査、衛星透視などのブラックバッグ・ジョブが満載なのだ。
そして、捜査期限の日に、最後の晩餐会が自宅で行われる。
誰一人遅刻もなく、ジョージを含め6人は、重厚なテーブルに拳銃が徐ろに載せられた食堂で自白を迫られるのだが…
ここからの展開は詰まらないが、気になる点がある。
絨毯を何故、新しく変えられていたのか?
既に犯人が分かっていたのにこんな晩餐会を何故したのか?
妻はあの映画を見たか?
あの700万ポンドはどうしたのか?
この周到な裏切り者処分はこれが初めてか?
あの釣り小屋と池は誰の所有だろうか?
それにしても、
今回のケイト・ブランシェットは、諜報部員らしからぬキレのなさ、趣味悪さ、集中力の欠如を感じてしまった。
それ故に、ラストがオバハン臭く、旬を超えたかなぁ
レビュー31
(о´∀`о)
ブラックバッグ Black Bag
「オーシャンズ」シリーズのスティーブン・ソダーバーグ監督と「ミッション:インポッシブル」の脚本家デビッド・コープがタッグを組み、
エリート諜報員と二重スパイが最重要機密をめぐり繰り広げる頭脳戦を描いたミステリーサスペンス。
イギリスの国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)のエリート諜報員ジョージは、
世界を揺るがす不正プログラム「セヴェルス」を盗み出した組織内部の裏切り者を見つける極秘任務に乗り出す。
容疑者は諜報員のフレディ、ジミー、情報分析官のクラリサ、局内カウンセラーのゾーイ、そしてジョージの愛妻である凄腕諜報員キャスリンの5人。
ある夜、ジョージは裏切り者の動向を探るべく、容疑者全員をディナーに招待する。
食事に仕込まれた薬とアルコールの効果で、容疑者たちの意外な関係性が浮かび上がるなか、
ジョージは彼らにあるゲームを仕掛ける。
諜報員ジョージをマイケル・ファスベンダー、
彼の妻で容疑者でもあるキャスリンをケイト・ブランシェット、
4人の容疑者を「マッドマックス フュリオサ」のトム・バーク、「Back to Black エイミーのすべて」のマリサ・アベラ、
「ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り」のレゲ=ジャン・ペイジ、
「007」シリーズのナオミ・ハリスが演じた。
ブラックバッグ
Black Bag
2025/アメリカ
「ブラックバック」という言葉は、劇中でスパイや諜報活動の文脈で使われている隠語で、**極秘の作戦や情報を指すスラング**
英語の「black bag job」(ブラックバッグ・ジョブ)を基にしたもので、FBIや諜報機関が令状なしの違法な侵入捜索(例: 家宅捜索や盗聴)を行う秘密の活動を意味します。
『ジョージ』は何でも知っている
イギリスの「NCSC」のエリート諜報員『ジョージ(マイケル・ファスベンダー)』は、
ある極秘任務を依頼される。
それは、世界に危機をもたらす可能性のあるプログラム「セヴェルス」を盗み出した犯人の特定で、
渡された容疑者リスト五人の中には、
やはり腕利き諜報員で妻の『キャスリン(ケイト・ブランシェット)』の名前も含まれていた。
『ジョージ』は関係者を家に招き、ディナーを振る舞う。
が、食事に仕込まれた特殊な薬剤の影響で
招待客たちの本性が次第に顕わになり、
会は予想外の終焉を迎える。
しかし、この冒頭のシークエンスはほんの掴み。
ここから真の犯人探しが始まる。
入り組んだ人間関係。
ぽんぽんと移り変わる舞台。
唐突に挿入される、一見何の関わりもない事象。
複数の要素が相俟って、頭の整理がなかなかに追い付かない。
ただストーリーも半ばを過ぎた頃、
この一人だけは容疑者候補から外していいだろうとの確信を持てるエピソードが挟み込まれ、
以降は一気に団円に向かう。
もっとも犯人が割れた後も、
おお!そうだったのか!!とのカタルシスも、
あの場面が伏線として機能していたのだな!との驚きも、
見事に騙された!との感嘆も、微塵も得られない。
主人公の冷徹さを示すエピソードは
最初の会食の場面で描かれる。
自身の信条のためなら、実の父親さえ切り捨てる非情さは、
最初のうちは妻にも発揮されるのだが・・・・。
あらゆるツールや情報網を駆使し、
容疑者たちの微細な行動を認識したうえで、
冷静に犯人を特定する『ジョージ』。
その過程の証拠の並べ方、出され方が、
主人公に都合が良すぎて物語りが一本道になってしまい、
抑揚に欠けることが作品としての魅力に乏しい要因か。
更には、
会に呼ばれたことに懸念を示しておきながら、
その場での常日頃とは異なる自分たちの常軌を逸した行いの後も
無防備に過ぎる容疑者たちの行動も
得心が行かぬ背景のよう。
共に『ジョン・ル・カレ』原作の映画化で
〔裏切りのサーカス/Tinker, Tailor, Soldier, Spy(2011年)〕は
組織内の裏切り者を炙り出す過程を、
〔誰よりも狙われた男/A Most Wanted Man(2014年)〕は
組織の非情さを描き、
本作では不満として挙げた点は全て凌駕している。
スパイ小説の専門家との強みはあれど、
同ジャンルの作品を撮るのであれば、
近い域まで迫って欲しかった。
ちなみに「Metascore」での評点は
本作:85
〔裏切りのサーカス〕:85
〔誰よりも狙われた男〕:73
と、まるっきり納得が行く点数とはなっていない。
「裏切りのサーカス」テイスト
「夫婦の話」という設定を、活かしきれているようには思えない。
マイケル・ファスベンダーが演じる、同僚の中から裏切り者を見つけ出そうとする諜報員が、血も涙もないような嫌な奴で、これで、本当に友人がいるのだろうかとか、夫婦仲は良いのだろうかと勘ぐりたくなる。
序盤で、彼と、彼の妻を含む6人の男女(3組のカップル)が晩餐会に集められて、このまま、犯人探しの密室劇が繰り広げられるのかと思っていると、セックスだの、浮気だのといった下賤な話と痴話喧嘩に終始して、その日が終わってしまったことには拍子抜けしてしまった。
やがて、主人公の妻が、隠し口座を持っているとか、チューリッヒで怪しい男と接触しているとかといったことが明らかになって、彼女に対する疑念が一気に高まるのだが、こういう展開ならば、逆に、彼女は裏切り者ではないのだろうと容易に予想できてしまい、ミステリーとしてはお粗末であると言わざるを得ない。
その後、人工衛星を勝手に使ったせいで窮地に陥った主人公と、裏切り者と疑われた妻が、力を合わせて真犯人を見つけ出すような展開になるのかと期待していると、結局、主人公が、ウソ発見器を使った尋問を行っただけで、ここでも、何だか肩透かしを食ってしまった。
おまけに、裏切り者が明らかになる前に、事件の黒幕が分かってしまったり、ロシアの反体制派がドローンで吹き飛ばされるという派手なシーンがあったりして、「これは、最後に描くべきだったのでは?」と思ってしまう。
ラストは、探偵映画さながらに、再び6人を一堂に集めて、「裏切り者はお前だ!」という展開になるのだが、おそらく、推理の決め手となったのは心理カウンセラーの証言で、だとしたら、その直前に明らかになった白人の諜報員と心理カウンセラーの浮気の話とか、冒頭の晩餐会におけるやり取りとかは、一体何だったのだろうという違和感が残った。
それに続くエンディングも、夫婦の愛の勝利みたいな終わり方になっているのだが、そもそも、同じ職場で働きながら、互いに職務上の秘密を抱えている者同士が、仕事とプライベートを完全に切り離して、真実の愛を育むことなどできるのだろうかという素朴な疑問を抱かざるを得なかった。
全104件中、61~80件目を表示













