「「親友」ってわざわざ言わない」親友かよ かばこさんの映画レビュー(感想・評価)
「親友」ってわざわざ言わない
「親友」なんて口にするのは、逆に他人行儀な感じ。
お互い無二の友達と思っていたらそれで良くて、改まってそんな言葉を使う頭がない。
秘密を打ち明けたら親友なら、ペーとポーケーはすでに親友だ。わざわざそう定義しないだけ。
事件を起こして転校を余儀なくされたペーは周りに壁を作りまくっているが、隣の席の無神経ないがぐり頭はお構いなしに話しかけてくる。
少し変わっているけど憎めなくて人気者なジョー。(そういえば大昔ジョーみたいな同級生がいました。)
転校一か月でいつジョーと親友になったの? ジョーの何を知ってるの、とペーに詰め寄るポーケーは、昨年見た「ふたごのユーとミー」のティティヤー・ジラポーンシンちゃんじゃないか! あの映画ではひとり二役でがんばっていたけど、本作でも素晴らしい。
ふくれっ面も泣き顔も、自然体で瑞々しくかわいい。気が強くてはっきりものをいう、思うことには一歩も引かないところもすがすがしい。彼女の涙はとりわけ大きい気がする。(顔が細くて小さいから?)
ジョーとの仲良さが、ふたりで自撮りしたPC画面からにじみ出ていて、サイテーな自分への後悔と、「親友」に去られ、そのまま失ってしまった悲しみ、ジョーへの罪悪感もあるだろうポーケーの胸の痛みがよくわかる。
ジョーと親友のふりして無試験で大学合格を目指し、何も知らないのに映画製作に乗り出すペーは、なにしろ嘘で塗り固めているのでつじつま合わせに危機また危機の綱渡り。どう納めるんだろうか都度ドキドキして、なんとか乗り切ったところで最大の難関にぶち当たる。
あのジョーが!? という衝撃で私も頭がくらくらした。予定調和が入る余地がない展開で、これをどう乗り越えるか。
ジョーを守りたいポーケーの気持ちもわかるが、せっかくみんなで作り上げた短編映画を破壊するのはどうなのか。
自分を下げて全員を傷つけない形で事態を収めたペーに、脳内で拍手を送りました。
消されたと思った映画が、PC部(?)の部長の手で保存されており無事だったのもよかった。
後半、空想(願望?)と想像と過去が交錯して一瞬訳が分からなくなることもあるが、それで空白の部分が埋まっていく。
ジョーが受賞を辞退したのは想像か過去の現実かはっきりしないが、私はこれは現実で、彼が卑怯者じゃなくて良かったと思いました。
そして、片思いの彼女が好感触で浮かれて無敵感でいっぱい(この無敵感がとてもよく出ていました)、避けていたポーケーに話しかけてくれて良かった。
ペーはジョーと親友だと嘘をついたと思っていたが、実は意識していないだけでそこそこ「親友」に近い友達ではなかったか。
ペーに呼び止められ、ジョーが道路を渡るのをやめて戻ってくる、ハードディスクを受け取って、「じゃあまた明日」と去っていく。
叶うはずない願望だが、そうだったら良いのに、とうるうる思った。
学校内のクラスメートやi-Macのためにしぶしぶ協力し始めたがいつの間にか頼もしい映画つくりの仲間になったPC部の部員たちが、とても良い。
PC部の面々に、ひとりひとりの個性を出す見せ場があったらもっとよかった。
タイの高校生たちなのに、なぜか自分の高校時代と空気感が似ていて、とても懐かしい気持ちになりました。
結局、短編映画は落選。お父さんが言う通り、「お前は映画のことを何も知らないだろう」なので、落選してよかった。
映画つくりに目覚めたペーは、その道に進む決意をする。初日に向かった現場にはポーケーの姿があって。
ラストは予定調和だけど、気持ちよく収まって文句ありません。
タイの高校って、男子の制服は半ズボンなんだ!?