「男女のあり方を考えさせられる巧いつくり」佐藤さんと佐藤さん kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
男女のあり方を考えさせられる巧いつくり
佐藤サチと佐藤タモツの2人が同棲し子どもができて結婚していく姿を描いた物語。好みが違うのにどこか気が合うという大学時代の2人はとても微笑ましい。でも、サチが社会人になりタモツが司法浪人を続けるあたりから関係性がおかしくなる。さらに、1人で勉強するタモツを支えようと、サチが一緒に司法試験の勉強を始め、サチが先に合格したことでさらにギクシャクしていく。
男のプライドって面倒くさいなと思う。いろんなことを「教えてあげていた」タモツにとって、サチに司法試験を先に合格されることが悔しいことは理解できる。自分は勉強を続けながら、弁護士として活躍するサチを見るのは本当につらかったと思う。地元の友達にすごいすごいとチヤホヤされたことでそちらに逃げたくなるのもわかる。多少僻んだとしても仕方ない。そんな気持ちで観ていた。
子どもができたことでタモツの負担が増えたのも同情できる要素だ。ただ、サチの負担も増えている。どちらがどうがんばっているということではない。だから、タモツが後半放つ言葉の数々があまりにも残念だった。そもそもお前が早く司法試験に合格しないからだろ!と思ってしまう。でも、サチが一方的な被害者かといえばそうとも思えない。サチの心ない言葉でタモツが傷ついたことはたくさんあるように見えたから。
最近の恋愛ものは女性の自立や生きづらさを描かないと成り立たない傾向にある。藤原さくら演じる後輩がサチのことを「佐藤さんは佐藤サチのままでいられる」と羨むシーンは、サチの奔放性を描いたように見えるが、夫婦別姓に対する問題提起のようにも思える。
夫婦や男女のあり方って難しい。浮気されて離婚しようとしていた後輩の女性や、離婚調停を行うサチのクライアントの男性たちの言動は、男女が真の意味でわかり合えない存在なんじゃないかと思わせるものだった。だからこそ、本作では男女の間にある溝に儚げでも橋みたいなものを架けてほしかった。いや、でもいろいろと考えさせられたことは確か。いい映画だ。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。
