「映像だけは派手。しかし、F1映画としては致命的に物足りない。」映画「F1(R) エフワン」 maxwellderさんの映画レビュー(感想・評価)
映像だけは派手。しかし、F1映画としては致命的に物足りない。
ブラッド・ピット主演という話題性と、実際のサーキットでの撮影という贅沢な条件。にもかかわらず、完成した作品は“F1の皮をかぶった凡庸なスポ根映画”に留まってしまった。
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映像の迫力は一流、内容は二流
確かにカメラワークやレース映像は圧倒的で、スクリーンで観る価値はある。だが、それは「IMAX向けのプロモーション映像」としての価値に過ぎない。物語や人間描写が伴わないため、映像の迫力も消費されて終わる。
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致命的な欠点
1. 予選・フリー走行を無視した構成
F1の醍醐味は決勝レースだけではない。予選の一発勝負、フリー走行での試行錯誤──ここにドラマがあるはずだ。しかし映画はそれらを全く描かず、観客に「F1=決勝の数周の競り合い」と誤解させる浅さ。
2. 舞台設定を持て余す
実際のグランプリ、FIA、現役ドライバーまで協力を得ながら、それをストーリーに生かせない。背景は豪華でも、そこで描かれるのは薄っぺらい人間関係とお決まりの展開。
3. 凡庸すぎるストーリー
「落ちぶれたベテランが若手とともに再起を図る」。聞き飽きた筋書きで、展開は予想通り。『メジャーリーグ』のF1版にすぎず、スポーツ映画として新しさが皆無。
4. リアリティの欠如
完走率が異様に低いレース、下位チームが無謀に上位を荒らして勝つ――現実のF1を知る人間には失笑もの。実際には「完走して1ポイント取ること」が下位チームの勝利なのに、それが全く描かれない。
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総評
『F1』は、F1を舞台にしたのではなく、F1という華やかな背景を借りただけの映画だ。
予選やフリー走行を切り捨て、下位チームの戦いを無視し、現実離れした展開で誤魔化す──その結果、F1ファンが期待した「リアルで人間臭いドラマ」は最後まで姿を現さない。