「F1「らしさ」ではなく「本物」を追求した良作」映画「F1(R) エフワン」 宇奈月 せいなさんの映画レビュー(感想・評価)
F1「らしさ」ではなく「本物」を追求した良作
まずこの映画を勧めるにあたって、F1の競技や知識は無くても楽しめるという事を知って欲しいと思います。
今作はモータースポーツ映画にありがちな、「有名どころのチームに所属する、ある選手をモチーフにした映画」ではなく、モチーフの人物はいるものの架空の人物である「過去の事故を引き摺りつつも引退を拒んだ、実力はあるけど陽の目をみないフリーランスに甘んじているひとりのレーサー」ソニーが主人公となっています。
また、チームも架空のものではありますが、F1で大御所のひとつであるメルセデスAMGの系列ではあるものの、レースでは結果が今ひとつ伴わない最下位チーム「APX GP(エイペックス・グランプリ)」が舞台となっています。
チームにいる若手ドライバー、ジョシュアはソニーとは対照的に、現代のF1レーサー的な速さはあるけど、自信過剰が祟ってどこか結果が出せない若手…という印象で、如何にもF1の世界に入りたてに(実際に存在する)ありがちな性格が設定なのも印象的でした。
メインのドライバー・チームが架空のものである分、他のモータースポーツ映画よりかは事前知識がなくても楽しめる、やや敷居の低さはあったかなという印象でした。
そしてソニーはジョシュアをはじめとしたチームの面々と衝突していきながらもチームを成長に導く、まさに昭和(?)のスポ根作品っぽい展開が観ていて楽しいと感じました。
そしてここからはネタバレを抜きにしつつ、実際のF1と絡めてのレビューとなります。
本作ではF1シーズンの後半戦(秋〜初冬の時期)がモチーフとなっています。撮影は23〜24年に行われたそうですが、チームが旧名称(例:レーシングブルズ→アルファタウリで出演)だったり、日本GPが秋開催だったりと、ベースとなったのは23年シーズンというのがわかりやすく、当時のレースを観てた人たちには懐かしいチームやドライバーズラインナップになっているのではないかと感じました。
そのドライバーもまた、映画の撮影に際して実際にマシンを本人たちが走らせており、「それっぽい格好のスタントマンを起用していない」というのが個人的に高評価でした。これはAPX GPのドライバーを演じるブラットやダムソンにも同評価です。(このふたりのマシンはF2改・F1外装仕様)
私は各チームのスポンサーにも注目しているのですが、APX GPのスポンサーは実際にメルセデスAMGのスポンサーと同一になっていたこともあり、映画館が入っているショッピングモールにあった、トミーヒルフィガー(メルセデスのスポンサーのひとつ)で危うく買い物してしまいそうになりました。
映画ではF1のパワーユニット(ハイブリッドのF1バージョン)のサウンドが大迫力で聴こえました。私はF1は実際の走行を観たことはありませんが、サーキットで大音量のマシンを観ていたことがあったので、あの大音量のレースサウンドは聴いていて気分が高揚しました。
実際のマシンもシーズン中に何度かパーツがルールの範囲内でアップデートされるのですが、そういった描写があるのも非常にリアルでしたね。
ただ、そんなマシン描写にもフィクションがいくつかあり、現在では使用が禁止されているエンジンモードの設定がそのまま劇中で使用されていたりするので、そういった違いを粗探しにならない程度に探してみるのも、本作を観る時の楽しみのひとつかもしれません。
劇中では実際にルイス・ハミルトン(撮影当時、メルセデスAMG在籍)をはじめ、レーサー本人達が実際に顔を出したり実況やチーム無線で名前が出てくる事もあるので、映画を観た後でも気になったら調べてみるといいかもしれません。
私はF1をYouTube公式のダイジェスト映像で視聴することもあるもですが、映画も実際の国際映像と同じく英国SkySportsF1の実況・解説の方々の声を聴くことができる事もあり、字幕で映画を観に行きました。
また、劇中での順位表やセレブ達が会場で観ている実況映像のエフェクトも、実際のSkySportsF1をはじめとした国際映像のものが映画向けにアレンジされていたのも好印象でした。
とはいえ、レースを知らない人達にとって難しいワードが特に出てくる事も無かったので、今までレースに興味の無かった人達にも入りやすい作品ではないかと感じました。
可能な限りで本物を追求した本作、ライトなレース好きとスポ根作品が好きな人にはオススメできる一作になっていると思います。
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