劇場公開日 2025年6月27日

「ジョセフ・コシンスキー監督の真骨頂を証明する一本」映画「F1(R) エフワン」 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ジョセフ・コシンスキー監督の真骨頂を証明する一本

2025年6月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

思いのほか興行成績が振るわず、やや苦心している感が否めないApple Studios作品。直近ではジョージー・クルーニーとブラッド・ピットが共演ということで話題を呼んだ『ウルフズ』が、米国での劇場公開を早々に切り上げてAppleTV+配信に切り替えを決定。そして、その煽りを受けて日本では劇場公開自体が中止になりました。その為、今後の方針も含めて心配されたAppleですが、本作は無事にワーナー・ブラザーズ配給で劇場公開。と言うことで、どのシアターを選ぶか悩んだ結果、スクリーン、プロジェクター、音響、そして座席がゆったりな上に、混雑を避けてゆったりと観られる丸の内ピカデリー・ドルビーシネマをチョイス。リピーター割引を使って公開初日9時45分からの回を鑑賞です。
80年代後半、スタードライバーたちの活躍により世界規模で「F1ブーム」というムーブメントが起こり、ホンダによる「勝てるエンジン」の供給と、中島悟氏を筆頭に「日本人初の表彰台」が期待されるドライバーが続々と登場し、大変な盛り上がりを見せた日本。当時、ハイティーンだった私もグランプリ開催週には夜更かしをして、フジテレビによる放映をかぶりつくように観戦していました。そして、本作の主人公であるソニー・ヘイズ(ブラッド・ピット)もまた若い頃、その当時にアイルトン・セナらと競い合っていたという設定。ちなみに本作、競い合う他のチームや選手は実在して更に実名のまま語られます。その為、その世界観はリアルに対して遜色を感じず、開催されるグランプリの雰囲気も臨場感がマシマシです。
デイトナ24時間レースで活躍した後、「次の主戦場」を求めて旅立つソニー。すると、それを見計らうようにソニーの前に突然現れる元同僚ルーベン(ハビエル・バルデム)。彼は成績不振のため買収の危機にある自分のチームの立て直しと、期待するルーキー・ジョシュア・ピアス/JP(ダムソン・イドリス)に対するカンフル剤として、ソニーへ30年ぶりとなる「F1復帰」の打診をします。
物語の導入を紹介するだけで「すぐに想像がつく」ような古典的な展開ですが、そこは『トップガン マーヴェリック』で高い評価を受けたジョセフ・コシンスキー監督だけあって素晴らしい仕上がり。頑固でマイペースなオールドマン(じいさま)・ソニーに対し、生意気で外面ばかり気にするキッズ(若造)・ジョシュアは反抗心剥き出し。彼らをコントロールしつつ、成績を残さなければならないチームは当初、自分の意見を譲らず「やりたい放題」に見えるソニーに大変手こずりますが、老練なテクニックと確かな裏付け、そして地道な努力と結果に、一人、また一人と引っ張られていきます。最高なサウンドトラック『F1 THE ALBUM』の曲たちに乗せて展開するストーリーは、もしかしたらな「期待」とそれを挫こうとする「危機」の繰り返し構造で、この手の作品の展開として正にクラシック。ですが、それが示される「迫力満点なレースシーン」と「説得力たっぷりなブラッド・ピットの演技」に否が応でもアガり、グランプリを経る毎に結束していくチームに感動させられ、終盤は最早嗚咽を押さえるのに必死。
敢えて一つ「ネックになる」ことと言えば、F1における最新のテクノロジーやレギュレーション、ルールなどに見識が浅いと、起きている状況から「察しながら」観ざるを得ないシーンも少なくないこと。とは言え、それを差し引ても尚「最高」という賛辞を送れると思える傑作だと思います。大興奮の155分、本当に素晴らしかったです。

TWDera
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