愛されなくても別にのレビュー・感想・評価
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大人になるということ
愛されなくても別に ― 毒親と水の儀式
2025年の作品。
同名小説の映画化というだけあって、その内容は心の真実に迫っていた。
三人の女子が主体となるが、焦点は宮田と江永へと絞られていく。
映像で見える宮田の人生と、語ることで示される江永の人生。
そして、何不自由のないわがまま女に見える木村。
宮田は「陽彩」という特別な名前を父に付けられ、江永は「雅」、木村には「アクア」
この名前たちは、親の愛とエゴの両面を象徴している。
そしてこの三人の親は、いわゆる毒親。
娘を家族という枠に縛り付けながら、何かを搾取する。
親と子は、愛という言葉で一見同じに見えるが、子どもにとってその愛は諸刃の刃だ。
個人的にも、長い間「長男」という呪いをかけられ、やりたくもない仕事をしてきた経験がある。
正しいという概念は常に変化する。
かつて「長男は家を継ぐ」という絶対があったが、それも今は昔。
この物語は、未だに「それ」が実在していることを我々に伝えている。
そして、自殺するか親を殺すかというまでに追い詰められた心の真実と、そこから抜け出すまでを描いている。
木村が大学で出会った「宗教」へ走ったのは、よくある話だ。
宗教、つまりカルトは必ずしも教祖様の形態を持たない。
「実践○○」とか、そういう類のものを知らない人は知らないだけで、日本には約17万8,000の宗教法人があり、諸教(新宗教など)は約700万人、社会教育関係団体には400万人超の会員がいる。
人は、心の拠り所を求める。
それはごく自然なことだ。
大学は、親から離れる一歩でもある。
宮田の場合、大学へ行く条件を母が提示した。
条件をつけるという行為は、どこにでもある。
「言うことを聞かせる」――その真意はどこから来るのか。
これこそ親のエゴだろう。
宮田は、積み立てられていると思っていたお金を母が食いつぶしていたことを知る。
父の養育費のことさえ知らなかった。
その父からのメール「誕生日おめでとう」は、宮田にとって赤の他人の言葉だった。
江永と二人で乾杯し、そのメールを見て「殺しに行く」と言ったのは、親からの決別だった。
それを「大人になった抱負」と言ったのも、大人としての踏ん切りだった。
宮田の母がコンビニで宮田と再会したシーン。
母の手にはGoogleプリペイドカードとタバコ。
その買い物は、彼女の日常を露呈していた。
もし宮田を探しに来たなら、そんなものは買わないだろう。
母の哀願には「お金がないから帰ってこい」というニュアンスがあった。
宮田は瞬時に察したのだろう。
そして、水。
滝つぼに身を沈める宮田。
あのシーンは、ただの逃避ではない。
俯瞰しようとしていたのかもしれない。
しかし、実際は「清め」だったのだろう。
母との決別を言葉にする前に、彼女は水の中で静かに儀式を終えていた。
やがて彼女は20歳を迎える。
そのための通過儀礼が、滝つぼで行われていたのだ。
「私は、他人から愛されなくても別に、幸せに生きたい」
江永が宗教団体で放ったこの言葉は、現代の若者の核心だ。
愛と幸せは別。
人間関係はいらない。
ただ、普通で、自由でいたい。
それでも、似たような苦悩を抱えた仲間と関わることは、拒否しない。
そこに愛などという大げさなものはいらない。
大人になるとは、ライオン狩りをすることではない。
自分の問題に対して、道を選ぶことだ。
宮田は選んだ。
「愛されなくても別に」
その言葉を胸に、彼女は大人への階段を上り始めた。
親であれ、兄弟姉妹であれ、 言ってしまえば他人である。 親と、親子...
【ドツボの時に拾う神がいてくれること】
毒親、最低、ドツボ、不運……。
最悪を測ったらキリがないのかもしれない。
「それぐらいの不幸なんて大したことない」
――そう言う人は多い。
けれど、その人にとっての痛みはいつだって100%で、他人には計れない。
不幸を競うことにも、理解してもらうことにも意味はない。
この映画は、その一点を丁寧に描いている。
信仰でも、親でも救えない痛みがある。
逃げ出した先で、ほんの少しでも“助け合える誰か”に出会えること。
それがどれほど人生において大切なことかを、静かに教えてくれる。
毒親を断罪するでもなく、カタルシスで終わるわけでもない。
登場人物たちが、ただそれぞれの人生を歩き出す――
その一瞬を切り取ったような、切なくて儚く、美しい物語だった。
馬場ふみかちゃん最高〜!
呪い。
簡単なあらすじ。大学生の陽彩(南 沙良)は、浪費家の母親に学費と家計を渡すため学校以外のほとんどの時間バイトに明け暮れている。男を連れ込み家事もしない母親の『愛している』という言葉で縛られ、絶望のなかで人生に期待することなく生きている。
そんなある日、同じバイト先で働く派手な見た目の同級生、雅(馬場ふみか)の父親が殺人犯だという噂を耳にして、他の誰かと分かり合うことはできないと思っていた陽彩と雅の距離が少しずつ近付いていく。
いや、これ私は好きだった!
まず馬場ふみかちゃんがめちゃくちゃ良かったよ。当たり役かと思う。かっこよかった。
前半はもう見ていて苦しくてね…大学生の陽彩の日常は学校バイト家事で覆い尽くされていて、全然ない睡眠時間まで母親のメシの為に起こされて、作ったものは食わずに出かけていく母親見て後ろから刺してやろうかと思いました(言葉が悪いですねごめんなさい)。娘から金巻き上げて家に男連れ込んでセックスして、とにかくやりたい放題なのにいちいち『陽彩、愛してる』って言うんですよ。マジで愛してるが呪いの言葉すぎて笑えない。
陽彩の同級生でコンビニバイトが一緒の雅は、バイト中もイヤホンつけたままだったり男にだらしない印象で、始めは無気力女子っぼく映るんだけど、父親が殺人犯って言う噂から陽彩は彼女に興味を持つんですよね。
陽彩は母親の性行為などを目にしているからか誰かと触れ合う事もできなくて、雅は家庭環境から性行為を一種の道具として捉えているような気がする。正反対の2人を結びつけたものが不幸であり、初めて穏やかな感情をもたらすのが2人で過ごす時間だと言うのは感慨深い。雅が『女じゃなくて人間としてみてくれる』って言う場面があるんだけど、いかに今まで女として性搾取されてきたのかと思うと悲しかった。あと陽彩は雅が自分より不幸だから分かり合えた部分もあるかと思うんだけど、物語の中に出てくる『不幸を比べてはいけない』って言葉も響いたな。
愛を振りかざして子供を都合良く使う大人たちの中で、雅の『愛されなくても別に』と言い放つ強さは陽彩に希望を与えたと思うし、血の繋がりや愛が無くても、寄り添う誰かが居れば生きていけるって思わせてくれるラストがとても良かった。いい映画。
自分の幸せを追求すればいい
家庭環境がもうわやくちゃな3人の大学生
母を養う為にバイト三昧
性的暴行に売春強制で、自暴自棄
過保護過ぎる親のせいで、新興宗教に走る
子供を食い物にする親なんて
あっさり捨てていいよ
主演の2人は、飄々としながらも
共同生活を送り、ちきんとした生活を始める
相容れない性格かとおもいきや
ともに友達の居ない2人の間には絆が生まれていたし
お互いに、家庭環境に恵まれなかった状況が
2人を結びつけ、支え合う関係になって
行ったのだと感じた
子供は親を選べない
まぁ、親も子供を選べないケド
そこは、安定した環境を作り
安心出来きる家族関係で、
正しい事を教え、導いて
ちゃんと育てればいいだけの話だ
が、究極に最悪の「親ガチャ」を引き当てた
子供は、親を頼るしかない幼い時期は特に
悲惨としか、言いようが無い
とりあえずは
産んだんだから
子供は、いい親なのか、悪い親なのか
知らずに生まれて来るんだから
責任持って、可能な限りよい環境で
育てましょうよ
女子大生とそれぞれの家族の事情
VODになるのが早いです。本田 望結さんが出演しているため観ました。
吹奏楽部の青春アニメ『響け!ユーフォニアム』シリーズは大好きです。原作小説(著者:武田 綾乃)は読んだことがありません。
今回は、武田 綾乃さんの小説の初の実写化でした。女子大生の女の友情を描いています。母と二人暮らしの女子大生 宮田 陽彩-みやた ひいろ-(南 沙良)が、江永 雅-えなが みやび-(馬場 ふみか)と出会います。
武田 綾乃作品は、若い女性たちの個性の違いを描くのが上手いと思います。
同じ大学に通う木村 水宝石-きむら あくあ-(本田 望結)が登場してから、宮田と江永と木村の三人の女子大生の個性を楽しめました。
高身長で派手な雰囲氣の不愛想でとげとげしい江永 雅が、『チェンソーマン』(アニメ、漫画)に登場するパワーちゃんに見えたのも楽しめた要因でした。
「愛されなくても別に」のタイトル回収もします。
それぞれの親との関係や、宗教のこと、自立のこと、人と比較することについてなど、考えさせられることが沢山あり、スローテンポなのに飽きませんでした。
登場人物がボソボソ喋る映画
望まない愛からは逃げていい
同名小説を実写映画化した青春ストーリー。毒親、虐待、性暴力など家庭環境に恵まれない女性たちの心の叫びを鮮やかに描いた青春逃走劇の傑作。
W主演を演じた南沙良と馬場ふみかの素晴らしい演技力に魅了されて、作品の世界観にグイグイ引き込まれました。二人にずっと寄り添っていたくなるような素晴らしい作品です。
2025-122
毒親
井樫監督作品の当たり作品。質の高い作品だと思いました。
南紗良さんと馬場ふみかさんという、出ている映画やドラマは必ず観る好きな女優さん二人というのがそもそも観るきっかけでしたが、とても良かったです。
二人の役はとてもハマっていました。
“青春逃走劇”というキャッチでしたが、そんなに大げさな感じはなく、激しいシーンもありましたが、どちらかと言えばクールで静かな映画でした。
一人一人が発する言葉が良い。
「教祖様」のそれもあながち間違いではないと思いました。
井樫監督の作品は当たりも外れもあったけど、今回は当たりで、良かった。
質の高い作品だと思いました。
あえて言うと、母親役二人(池中祥子さんと河井青菜さん)は逆の配役の方が、ネグレクトで不真面目でだらしない感じと過保護で上品で気高い感じが合っているのかなという感想を持ちました。
様々な不幸と憎めない人間
雰囲気が最高
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