劇場公開日 2025年9月5日

「等身大の子供たちによる、普通じゃない一作」ふつうの子ども yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 等身大の子供たちによる、普通じゃない一作

2025年9月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

『ハルモニ』(2003)、『そこのみにて光り輝く』(2014)など、多数の作品で高い評価を得てきた呉美保監督による、小学校を中心とした世界を描いた作品です。

登場人物の多くは団地の住民であり、自宅、学校、遊び場、農場、などなど、ある程度領域の定まった生活環境で錯綜しつつ日常を送っていく様を見るだけでも楽しく、もちろん「子供映画」なのですが、同時に「団地映画」としても観ることができます。

主人公の上田唯士を演じた嶋田鉄太はもちろん、どの小学生の俳優たちも、もちろん演技がうまいんだけど芝居じみたところはなく、まるで彼らの日常に溶け込んでいるかのような描写は、時に微笑ましくも驚かされます。

いかにも一人っ子的な独白の多い唯士、使命感は強いが自身の独善さに気が付くほどには成長していない三宅心愛を演じた瑠璃、そしてクラスに必ず一人はいるような腕白少年でありながら…という、ある種最も複雑な人間像を備えた橋本陽斗を、その動きだけで表現してみせた味元耀大、など、彼らのはつらつとした演技が目を引きますが、同時に、彼らよりも少ない登場場面だけでそれぞれの個性、家庭像を表現して見せた、蒼井優を始めとした親世代の俳優たちのすばらしさも際立っています。

本作を団地映画としてみるなら、『イノセンツ』(2023)も少し雰囲気の似た北欧映画として比較してみると面白そう(起きる事態は本作と比べてシャレにならない度が桁違いなんだけど)。

あるいは本作と同様、小学生の子供たちに密着した、山崎エマ監督によるドキュメンタリー映画『小学校~それは小さな社会~』(2023)と見比べてみるのも楽しそう。本作はこの、『小学校~』に対する一種の回答のようにも見えたんだけど、実際どうなんでしょう?

yui