「またあの子たちに会いたくなる一作」ふつうの子ども TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
またあの子たちに会いたくなる一作
結構以前から貼りだされていたポスターで気になっていた本作、呉美保監督の『ふつうの子ども』。サービスデイのシネスイッチ銀座へ期待を膨らませて向かいます。
教育者でもなければ、親でさえなく、更には既に50代半ばである自分は現代における子育て、教育について云々言える立場ではないし、現実を知らなすぎると自覚もしています。(それでも、ふるさと納税では必ず「教育、子育て」を用途に選択しています。)「タブレット端末を使う授業や宿題」「生徒を“さん”付けで呼ぶ教師」など、まさか疑っていたわけではなくとも「本当にそうなんだな」と思いながら鑑賞する私。ところが、今も昔も大して違わない子供たち(特に男子)の思考回路や、それによる言動をみればどこかホッとするし、タイトルからも伝わる欺瞞のなさに素直に共感が出来て楽しめます。
宿題の作文発表にて、自分なりに考えて工夫したオチを教師にあっさり否定されて頭の整理がつかない唯士(嶋田鉄太)。すると、「地球温暖化」をテーマに、堂々と「大人たちに対する反抗」の意を訴える心愛(瑠璃)の凛々しさに圧倒され、すぐに心を奪われて恋に落ちる唯士。あくまでテーマに対する共感を示し「やましさ」を隠して心愛に近づこうとする唯士ですが、ちょっかいを出すことでしか他者に近づけない陽斗(味元耀大)に目をつけられて邪魔が入ります。ところが、それまで唯士につれない反応だった心愛が陽斗の登場で態度が変わり、いつしか3人でチームを組んでアクティビストとなり、地球温暖化を阻止するべく彼らなりの「社会運動」を始めるのですが…
まず、捉えることのできる周波数帯も狭くなった爺である私の耳に、聞き取りが超難解な唯士の「ゴニョゴニョ口調」は所々何言っているのか解らない、、のですが、これこそリアルな感じがして全くネガティブな印象はなし。そもそも「元男子」である私には唯士の思考が手に取るように解るので無問題だし、最早唯士の恋心に対する「応援気分」が勝っています。何せ、唯士が心を寄せる心愛のあざとさは、目的にストレートで大変に堂に入っている。そして、それをお見通しで娘を論破しにかかる母・冬(瀧内公美)を見れば「この母にして、この娘」。いやはや、この母娘、無敵だわ。。w
他にも要所要所で唯士に助け舟を出す藤井メイ役・長峰くみさんはナイスキャラクターで最高ですし、唯士の母・恵子役の蒼井優さん、子供たちの担任教師・浅井役の風間俊介さんなど芸達者な「大人」たちがいるからこそ、抑えが利いて物語が散漫せず、しっかりと説得力を感じます。
勿論、昨今の教育現場における子どもに対することへの難しさ、もどかしさなどを考えると楽しんでばかりいられないと理解しながらも、やっぱり現代の子どもだって昔の自分たちとほぼ変わらない姿は実に微笑ましい。どうせなら、堅苦しく考えず普通に笑いながら観るほうがむしろ意義がある、大変に楽しい作品に仕上がっていると思います。またあの子たちに会いたくなる一作です。
mayuoct14さん、ありがとうございます。子どもってやっぱり凄く面白いし、素直だからこそ、人間味に溢れてますよね。親でない私は無責任な言い方かもしれませんが、感じたまま生きてほしいと願って止まず、彼や彼女たちを応援したくなる一本でした。