劇場公開日 2025年9月5日

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「ほぼそのまま実写化」ヒックとドラゴン クラさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 ほぼそのまま実写化

2025年12月1日
iPhoneアプリから投稿

王道だからこそ飽きさせないストーリーと、ハリウッドならではのこだわりの映像は圧巻のひと言に尽きる。児童文学作品の実写化だと、どこかチープな印象を受けてしまう事がしばしばあったが、本作はかなり当たり作品と言えよう。元々の原作が子供向けの為、もちろん怪我や戦友の死などの描写もあまり映さず、血1滴も垂らさないのは流石だ。それでも子どもが泣くレベルのど迫力のドラゴンの親玉や、IMAXカメラで撮影した飛翔シーンは誰でも感動を覚えるレベルに達している。

子ども向けとはいえ、テーマは意外と奥深いのが本作の肝である。ただドラゴンと戦うだけではなく、人間はドラゴンに家族を殺されたという復讐の為にバイキングとなり、戦いに身を投じている。ドラゴンは同じ様に人間に住処を奪われ、仲間も殺されているが、冬など厳しい環境を生き抜くには人間が家畜として飼ってしまった動物が必要なのである。文明を築いて言葉を話せる人間と、自然で普通に生態系の1つとして生活したいドラゴンと、相まみえることの無かった2つの種族がどう絡むのか。もうアニメは3作品も製作され、ある程度は誰でも予想がつく物語なのでネタバレフラグ立てずに書いてしまうが、"共存"という道を選択するのである。それを最初に実現したのが、タイトルにもなっている"ヒック"と"ドラゴン"という訳だ。ヒックはバイキングの首領の息子でありながらヘタレであり、村の人々からは馬鹿にされている。それでも厳しいながら愛情を注いできた父から認められなくてはと撃ち落としたドラゴンがあの可愛らしいドラゴン、"トゥース"である。トゥース自身も空を上手く飛べないという欠点があり、それをお互いで補って成長していくのである。

この様に絵に描いた冒険活劇であり、成長ストーリーであり、面白く無い訳が無いのだ。アニメ版との違いはほとんど無く、変に変えて幻滅してもしょうがないが、ここは監督がアニメ版から引き続き務めているのがポイントだろう。だからこそより映像の凄さだったり、小美術の再現などが非常に凝っているのが分かるのである。唯一の違いはドラマパートが長くなった所だろう。その方がより厳格な父としての思い、周囲の人間の期待や温かさ、仲間を失った悲しみや怒りを表現出来ており、アニメ版より引き締まった印象を受ける。現在第二弾の製作も企画されている様だが、アニメ版含め何故か日本ではヒットしない本作、それでも劇場公開はして欲しい限りである。

クラ
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