「実写化へのトレースは成功だと思うが、それだけでは感動は生まれない」ヒックとドラゴン Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
実写化へのトレースは成功だと思うが、それだけでは感動は生まれない
2025.9.6 字幕 MOVIX京都
2025年のアメリカ映画(125分、G)
原作はクレシッダ・コーウェルの児童文学『How To Train Your Dragon』
CGアニメーションの実写リメイク作品
監督&脚本はディーン・デュボア
原題の意味は「ドラゴンの乗り方」という意味
物語の舞台は、大海の孤島・バーク島
そこに住む気弱な少年ヒック(メイソン・テムズ)は、役に立たないことで有名で、父ストイック(ジェラルド・バトラー)がバイキングのリーダーだからえこひいきされていると思われていた
ヒックは独自の方法でバイキングの役に立とうとしていたが、バイキングたちは肉体を駆使して倒すのが当たり前という価値観に支配されていて、ヒックの考え方は受け入れられなかった
彼は鍛冶屋のゲップ(ニック・フロスト)の元で働いていたが、余計なことはするなと言われ続けていた
ある日のこと、島がドラゴンに襲われてしまい、ヒックは出過ぎた真似をして、開発した投網機を使ってしまう
見事にドラゴンに命中したものの、現場を混乱させ、二次被害と生んだとして、こっぴどく怒られてしまった
ストイックはヒックに愛想を尽かしていたが、ゲップの助言によって、ヒックはバイキングの試験を受けることになった
試験に参加するのは、ヒックの憧れの少女アスティ(ニコ・パーカー)、自惚れ屋のスノット(ガブリエル・ハウエル)、物知りのフィッシュ(ジュリアン・デニソン)、過去に何度か試験に落ちているラフ(ブロウウィン・ジェームズ)とタフ(ハリー・トレバルドウィン)の双子を含めた6人だった
彼らは、捕獲されたドラゴンと擬似的に戦うという訓練を受けるのだが、ここでもヒックは足を引っ張ってしまうのである
映画は、アニメ版をそのまま実写化したような作品で、違いを探すのが大変という感じになっていたと思う
あらすじはほぼそのままで、細かなエピソードの取捨選択と、キャラの性格が違うかもという程度で、劇的に何かが変わったという印象はなかった
ここまでトレースしていると実写化する意味があったのかはわからないが、あれからCG技術も向上し、ドローン撮影も可能になったことから、アニメ版に負けないぐらいの壮大で爽快な飛行シーンが描き出されていた
アトラクション系の映画なので、そう言った映像を楽しみつつ、大人にも子どもにも響く物語を享受するという意味合いではありなんだと思う
有能すぎる人は同じことができないと無能のレッテルを貼りがちだが、目的が同じでも違う手段を選ぶことはできる
もしヒックがストイックと同じ熱量の怒りと攻撃性を持っていたら、体力的な闘い方ではなく、多彩な致死性の武器を発明していただろう
そう言った意味も含めて、ヒックは元から父親の行動に関しては、何らかの抵抗を感じていて、それがあの機械に凝縮されているように思えた
映画は、世界を構成する要素を解き明かすことで、何をすれば良いかが見えてくるというもので、いわゆる自然のサークルの中にいる人類とは何かを見つめ直す必要があると説いている
ドラゴンに妻を殺されて怒りを蓄えるストイックだが、ドラゴンがどうして人類を攻撃するのかというところを考える必要がある
ヒックは人がドラゴンの縄張りに来ているから攻撃してきていると考えていて、それは至極当然の反応であると言える
さらにドラゴンたちが危険を冒してまで食糧を奪おうとする理由には裏があって、それはドラゴンの生態を紐解くという視点がなければ永遠に見えてこないものだろう
感情論で自身の理屈を押し付けるというのはよくある話だが、このようなマインドの人は総じて視野狭窄に陥っている
そして、自分が信じるものが全てだと思い込んで、他者を煽動していく
もしストイックやその先祖にニックと同じ目線を持っている人がいたら、もっと共生というのは昔から行われてきたのではないだろうか
いずれにせよ、種には生存可能な領域というものがあって、その共生にはとてつもない労力がいると思う
それが同種間でも難しいことは人類の歴史を見てもわかるもので、感情論で理想を強要する人の声は大きい
人であれ、動物であれ、生存できるテリトリーは決まっているわけで、これまでの世界では駆逐して支配することで生き延びるという歴史があった
その歴史は転換点を迎えつつあるのだが、共生にはそれぞれの生存や文化に対する敬意が必要で、どちらか一方の侵食があると相入れないものとなる
本作におけるドラゴンと人間の共生が実現しているのは、それぞれが捕食対象者ではないということと、生存圏を不可侵の状態にできるからだと思う
そう言った意味において、この共生は奇跡的なものではあるのだが、現実の人類が同じ奇跡に遭遇することはできないだろう
個人的な考えではあるが、もしそれが可能となるとしたら、人類が宗教を捨てたときなのかな、と思っている
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