「VFX以外に、アニメを実写化した意義はあったのだろうか?」ヒックとドラゴン tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
VFX以外に、アニメを実写化した意義はあったのだろうか?
何と言っても、VFXによって生み出されたアクロバティックな飛行シーンの迫力と臨場感が素晴らしい。まさに、劇場でこそ体感すべき映画と言って良いだろう。
その一方で、アニメ版ではそんなに気にならなかったのに、リアルな実写だからこそ違和感を覚えてしまったところも少なからずあった。
例えば、空を飛び、火炎を吐く多数のドラゴンが村を襲撃した場面では、よくぞ、バイキングは全滅せずに今まで生き延びて来られたものだと不思議に思ったり、若者達がドラゴンを相手に訓練をする場面では、若者にもドラゴンにも死者が出ないのは、さすがにあり得ないだろうと突っ込みたくなってしまった。
主人公のヒックにしても、父親が落胆したり、村人から馬鹿にされたりするほどの劣等生には見えないし、彼が、撃ち落としたトゥースを発見した時に、父親や村人に知らせるどころか、母親の仇でもあるトゥースを逃がしてしまう理由もよく分からない。
同期の訓練生が、ヒロインを除いて、皆、ふざけたようなキャラクターなのもイライラさせられるし、ヒックがトゥースの味方であるとバレた時に、ヒックと父親の間でコミュニケーションが成り立たないところにもフラストレーションを感じてしまう。
それも、これも、ラストで、訓練生達がドラゴンに乗って決戦の場に駆け付けるという胸熱なシーンを生み出すための仕掛けなのだが、それにしても、訓練生達が、いとも簡単にドラゴンを乗り回してしまう様子には、やはり「ご都合主義」を感じざるを得なかった。
考えてみれば、「ドラゴンの巣」に住むボスのドラゴンを倒すという父親の目的と、「働き蜂」ドラゴン達を搾取している「女王蜂」ドラゴンを倒すというヒックの目的は一致しているはずで、ヒックと父親がちゃんと話し合っていさえすれば、最初から、人間とドラゴンの共闘体制を築くことができたと思えるのである。
それだけに、人間とドラゴン、あるいは人間同士が理解し合い、相手を認め合うことの大切さが実感できるようになっているとも言えるのだが、そうしたことは、アニメ版からも感じられたし、逆に、今回の実写版で、アニメ版以上の感動が得られたとは言い難い。
アニメの内容を忠実に実写化しているだけに、「オリジナルを改変した」という不満はまったくないものの、「VFXによる見せ場の再現」ということ以外に、「アニメを実写化した意義はあったのだろうか?」という疑問が残った。
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