劇場公開日 2025年10月3日

「執念が妄念になって身近に怨念」火喰鳥を、喰う ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 執念が妄念になって身近に怨念

2025年10月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

難しい

信州の旧家の跡取り息子『久喜雄司(水上恒司)』の周りで
怪異が頻発するようになる。

始まりは一族代々の墓の碑銘が削り取られていたこと。
当該者の『貞市』は大叔父で、
七十年前にニューギニアで戦死していた。

奇しくも事件が明らかになったのは、
彼が遺したとされる現地で見つかった日記が、
三四半世紀近い年月を経て家族の元に戻される当日だった。

それ以降、『雄司』と妻の『夕里子(山下美月)』は悪夢にうなされるようになる。

日記を持ち込んだ「信州タイムス」の記者『与沢(森田望智)』の同僚や
その場に居合わせた『夕里子』の弟『亮』は高熱を発する。

祖父の『保』も行方不明となり、
全ての元凶が日記にあるのではと疑い始めた『夕里子』は
大学時代の同級生で異能の持ち主『北斗(宮舘涼太)』に連絡を取る。

滑り出しは上々。
{ホラー}のようでもあり、
怪奇現象の謎解きの要素も垣間見え、
暗めの画面の色調と相俟って
日常の何気ない出来事にも不穏さが隠れているようで、
観る者の神経をざわつかせる。

十数年前に夫を交通事故で亡くした
底抜けに能天気な母の『伸子(麻生祐未)』を除けば、
登場人物の皆々になにかしらの影を見る。

時折姿を見せる、白い服を着た怪しい少女も
謎のスパイスとして良く効いている。

しかし、物語りが進むに連れ、次第に違和感が。

あったハズの記録や記憶が無くなり、或いは書き換えられ、
居たハズの人が居なくなる不思議にどのような説明を付けて行くのか。

「全てがホラーです」で終わらせれば、
納得はしないものの、オハナシとしては成立するのだが・・・・。

パラレルワールドでは、
『貞市』は戦死していない世界があり、
『雄司』が交通事故で亡くなっている世界がある。

「日記」が触媒となり、
多くの世界と時空が浸蝕し合う。

根底には、
戦地からなんとしても生きて帰りたいとの
『貞市』の執念がある。

そのためには、「ヒクイドリ」を食べることを厭わず
(実際は食用に飼われているらしいが)、
更には人肉食の禁忌すら犯そうとする。

執念が妄念に変換する瞬間だ。

血の繋がりもあり、顔も似ていると言われる『雄司』は、
夢か現かも判らぬまま、複数の並行世界の大叔と体験を共時する。

実は登場人物の中には、
もう一人、妄念を持つ人物がおり、
彼の意識が怪異に大きく関与する。

幾つかの事実が明らかにされてみれば、
コトの発端からしてなのだが、
本人は寧ろそのことを、
悲願を達するための天祐と捉えている節さえある。

げに恐ろしきは、色恋の感情。

ある人にとっての団円は、
別の人にはバッドエンド。

なのに最後に見せられるのは、
負の側面が描かれぬ、
奇妙な平穏さが支配する複数の世界。

とりわけ最後のシーンは
有名なアニメやなにかのドラマのイタダキですか?

ジュン一
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