「説明不足気味のお仕事映画で、再現度の高い伝記映画でしたね」ラスト・ブレス Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
説明不足気味のお仕事映画で、再現度の高い伝記映画でしたね
2025.9.30 字幕 MOVIX京都
2025年のアメリカ&イギリス合作の映画(93分、G)
原作は2019年公開のドキュメンタリー『Last Breath』
2012年に実際に起きた海底事故の救出劇を描いた伝記映画
監督はアレックス・パーキンソン
脚本はミッチェル・ラフォーチュン&アレックス・パーキンソン&デビッド・ブルックス
原題の『Last Breath』は「最後の呼吸」という意味
物語の舞台は、2012年の北海近辺
スコットランドのアバディーン湾を出発し、沖合の油田施設に向かったタロン号には、パイプラインの交換をするための飽和潜水士たちが乗っていた
船は油田施設に接岸し、そこから自動制御によって、海底にあるマニホールドへと飽和潜水士を降下させる手筈となっていた
潜水士チームの責任者クレイグ(マーク・ボナー)はダイバーを3班に分け、 Aチームにクレイグの盟友ダンカン(ウディ・ハレルソン)、長年バディを務めてきたクリス(フィン・コール)、新しく加わったデイヴ(シム・リウ)を配置した
彼らは船内にある減圧ルームで過ごした後、ムーンプールと呼ばれる場所に行って、さらに体を慣れさせていく
そして、ベルというカーゴをマニホールドに向けて降下させ、そこからダイバーは目的地へと向かうことになった
海上は嵐となっていて、なんとか自動制御で位置を維持するものの、突然システムがダウンし、船は流されてしまう
マニホールドに到達していたクリスとデイブは速やかにベルに戻ることを余儀なくされたが、クリスのアンビリカル・テザーがマニホールドに引っかかってしまう
そして、船の漂流の力で切れてしまい、クリスは海底に投げ出されてしまった
一方その頃、流され続けていた船体を維持するために、船長のアンドレ(クリフ・カーティス)は副船長のハンナ(MyAnna Buring)とともに「手動制御」へと踏み切っていた
さらにダウンしたシステムを修復するために、オペレーターのマイク(Josef Altin)は配電室に向かい、DPSのシステムをメイン基盤から独立させ、再起動を試みることになったのである
映画は実話ベースの作品で、ほぼドキュメンタリーに近い印象があった
作業時間は約10分、そこから無酸素状態が30分ほど続いていたので、海底に降りてからはほぼリアルタイムで時間が流れているような感覚があった
無酸素状態になったクリスは仮死状態へと移行し、そこで快楽物質によって恍惚感を感じていたのだが、その状態が生命維持に必要な酸素量を減らし、奇跡的な結末に結びついているように思えた
映画のラストでは、ご本人が登場するのだが、クリスは実際に婚約者のモラグ(Bobby Rainsbury)がいて、その結婚式の様子がスクリーンに流されていた
そこでクリス本人によるダンカンの人工呼吸がネタにされていたが、何の後遺症もなかったから笑い話になっている、という結末を迎えている
基本的には、無酸素状態が3〜4分続くと脳に重い障害が残るとされていて、心肺停止状態になると脳への血流が止まって、10〜15秒ぐらいで意識を失ってしまう
酸素欠乏による死亡時間は、酸素濃度の低下度合いによるが、酸素濃度が8%を下回ると7〜8分で死亡し、6%以下では約6分で死に至るとされている(通常は21%で安全限界は18%)
なので、DPSが復帰した段階で生存している可能性はほぼなく、デイブが遺体の回収をすることになると言ったのは間違いではない
クリスがどうして生きていたのかはわからないが、海水温の低さ(北海の冬の海水温は6度ほど)から低体温状態となり、それによって循環不全が起こったものの、何らかの要因で生命維持機能が動いていたということになるのだろう
SFっぽい感じだとコールドスリープ状態になっていたというものだが、現代の科学でそれを再現したり検証したりするのは無理のような気がする
いずれにせよ、実話ベースなので「結末を知っているかどうか」で評価が分かれてしまうかもしれない
結局のところ、どうして助かったのかという結論がなく、奇跡的だったということなので消化不良の側面はあるのだろう
それでも、救出劇にまつわる船の操舵を含めた緊迫感は見応えのあるもので、お仕事映画としても細部まで見せてくれるのは良かった
脚色された部分はいくつかあると思うのだが、それを感じさせないほどのリアルさがあったので、盛っている部分は気にしなくても良いのではないだろうか
