無名の人生のレビュー・感想・評価
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映画的な作り方
技術面は一見Flashでイラストを動かす、アニメーション技法としては稚拙で少し古いものにも思えるが、どことなく『サウスパーク』に似た少人数で描くための工夫が随所に。
内容的にも、さまざまな現在~過去に生じた事件、時事ネタを内包し、それらもまた時代が変わってもいつでも起こり得る普遍的なもので、「魂の尊厳」に影響する陰惨な事件ばかりを取り上げていて、受け入れやすかった。
認知症ドライバーが起こした致死運転、芸能事務所社長の性暴力、でっちあげの薬物疑惑での告発したスターの排除、学校のいじめ、いじめをスルーする教師や加担する保護者、
さらには予言的かつSF的な未来~日本で起きる戦争の話。
時間と時代を「切り取り」「想像する世界を提示するという」、きわめて「映画的」な作り方をしていて、映像作品としての品と風格を感じさせられた。
万人に勧めはしないし、日本のアニメーション作品が好きな人にはあまりお勧めできないけれども、映画が好きな人なら観て損はないと思いました。
ヒメ目線で観ると・・・
こりゃあ、、 ベタなところや、既視感はあれど、、、 観たかった、個...
デジタル的感性の極北を見る思い デジタル•ネイティブ世代とデジタル移民世代とのジェネレーション•ギャップ??
私はこの作品を観て生まれて初めて映像作品の作り手との間にジェネレーション•ギャップめいたものを感じました。私は古希手前の60代ですが、青春映画を観ても初恋を扱った恋愛映画を観てもジェネレーション•ギャップを感じたことはありません。それはそこで描かれていることが普遍的なことであり、ああその気持ちわかるよ、といった心持ちになるからです。ところが、この作品では物語を展開してゆく手法に今まで感じたことがないような違和感を感じました。
まず、序盤から画面上で展開される内容の情報量の多さに圧倒されました。次から次へと出来事が発生してくるような感じ。読書に例えると文字量が多く、文字からの情報を絶えず処理しなければならない本を読んでいるみたいな感じです。文芸作品を読むときには「行間を読む」、文字に書かれていない部分に思いを馳せるというのは読書の醍醐味のひとつだと思いますし、映画鑑賞でも同様にスクリーン上で展開される物語を見ながら、登場人物それぞれの心情に思いを馳せるのは大きな楽しみだと思うのですが、この作品では何しろ情報処理にかかりっきりになりますので、従来型の映画鑑賞の醍醐味はまったくないということになります。
次に登場人物やストーリー上で発生する出来事の記号化について。この作品の登場人物は血の通った人間ではなく作り手のコマのようで記号化されている感じがします。序盤に高齢ドライバーが交通事故を起こし、ストーリーが前進しますが、そのシーンで必要だったのは「高齢ドライバーによる交通事故」という記号だけだったようで過程が示されることなく事故だけが突然起きます。ひょっとしたら、その高齢者は娘の離婚話とそれに伴う孫の親権のことで悩んでいてそれで注意力が散漫になっていたのかも知れないのですが、記号として一瞬登場し、あっという間に退場します。また、この物語の主人公は若い頃、芸能事務所に所属し、アイドルを目指していたのですが、彼のことを記号Aとしましょう。彼の所属する事務所の社長は色付きのメガネをかけた細身の初老の男で、少年に対する性加害で問題になった あの芸能事務所社長を彷彿とさせ、見事に記号化されているので、これを記号Bとします。本篇の中で記号Aは記号Bになぜか突然暴力ふるって事務所を辞めることになり、ストーリーが前進します。本篇ではそうなる過程があまり描かれていなかったようなので、どうして暴力を振るったのか私にはよくわからなかったのですが、記号Aと記号Bがうまく機能して、ああ、あれね、といった感じでストーリーが前進します。
この作品ではストーリーが次のステップに進む際に暴力が使われることが多いです。それもそこに至る過程はごく短く示されるだけで突然暴力ドン!で場面展開してゆきます。主人公の記号Aはデジタル的で ”1” のときは暴力的になり、 “0” のときは何を考えてるのかよく分からない無反応人間になるみたいな感じです。で、過程はほぼ省略みたいな感じにして、結果、結果、結果の出来事の連続でストーリーはサクサク進んでゆきます。私は「情報処理」に余念がありませんでしたから、物語の持つ意味などはよくわかりませんでした(苦笑)。
この作品の作り手の鈴木竜也氏は個人制作で1年半かけてこのアニメーション長篇作を完成させたとのことです。作品を拝見させて頂いて、きっと物心ついたときには周囲にデジタル機器があったデジタル•ネイティブ世代なんだろうなと思ってネットで調べてみたら、1994年12月生まれとのこと。やっぱりなあと感じました。こっちは30代半ばぐらいにして、ようやくインターネットやらeメールやらの新語を聞いたデジタル移民世代だからなあ、感性が違うのもあたりまえか、と思いました。が、結局は個人の感性の違いということなのでしょう。
なんだか、よく分からなかったけど、何か新しいものを見せてもらえたような気もするし、新しいひとつの才能に出会えたことと今後の鈴木氏の活躍を祈念して、星五つ進呈です。
未来を予言しているような作品
ニシティ声優デビュー
予想外にてんこ盛り
限りなく平面的で、くすんだ色味、それでいて説明なしに結構なスピードで物語が展開されるので、油断していると置いていかれていることもしばしば、とはいえ内容もなんか地味でこのアニメは果たして最後まで見るに堪えることが・・・と一抹の不安・・・とそれも一瞬のことで物語が面白おかしくどんどんあちこちに進んでいって、いつの間にか、あー最初のあれもっと集中して見ておけばよかったーと多少の後悔、それも一瞬のことで色んな不満や疑問などがかき消されるくらいの展開と面白さ、行き着く先が予想だにしない壮大でファンタスティックなもので、見終わった頃にはかなりお腹いっぱいといった感じでした。
まさに個人で作成した作品と納得できる反面、個人での創造物とは思えないくらいのてんこ盛りで、かなり度肝を抜かれた印象です。
相当好きな作品でしたが、あの配色だけはどうも・・・。確かにシュールでどことなく哀しい内容にマッチした絵づくり・色味であったと納得ですが、もう少し明るくてもなぁと、個人的に。劇場内に飾られていた作品宣伝のデコレーションが美しかっただけに、余計に作品そのものが地味すぎると感じてしまいました。
しかしながら、途轍もないパワーは感じる作品でした。
青く凶暴で美しい血
今年の収穫の一本。
ひろし、血なんてただの液体じゃん。ポカリと一緒だよ。
作品における、作り手の狙いをどの程度説明するのか。 その加減は難しく、足りなければ視聴者に理解されず、過多だと「ああん? ここまで言わなきゃわからんと思ってるのか(私を)ナメやがって」と勝手にキレる。私は。常に自分勝手である。
と、いうわけで、説明は個人的には少し足りないくらいが、受け取る側の想像のゆとりがあり、そういったゆとり――隙間に自身の心を添えて観ることで感情が乗る気がします。塩梅が上手い作品だと感じました。
同作はある一人の男性の、100年の一生をラッシュで見せる構成。決してその道のりも平坦ではなく、展開は思わず飛躍的にもなる。けれどちゃんと画面に映る「人生」に心を寄せて驚いたり、ホロリときたり、切なくなったりできました。突飛だけれど心は乗った。それは説明の加減のうまさが一助になっているなぁと。
ポカリ、寮のランドリー、ブラウン管越しに遠くなっていく過去の事件。
伝えたいと思う場面でどの対象にカメラを向け、意味を持って映すのか、的確だなと思いました。ポカリの表現が好きです。
お一人で描かれているとのことで絵が上手だなぁと、また、だからこそ作品の操作性が安定していたなと。今の時代らしい形式で読む、マンガ活劇のようでした。映像だからこそ読書と違い、リズムを作り手が設定できることも活きていた気がします。アイディアも良く、作品内に忍ばせられた創作的な仕掛け、ミーニングもしゃれっ気がきいていて面白かった。
そして映画らしい良さとして、このマンガ活劇に声が加わりまた新しいリズムの連続を生んでいるなと思います。
タイトルは、友人きんちゃんの台詞。この後の場面もグッドでした。
「波瀾万丈」と一言では括れない
自ら掴む人生
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