配信開始日 2025年3月27日

「『ミセス・ダウト』シリアル・ママ」ホランド 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5『ミセス・ダウト』シリアル・ママ

2025年3月31日
iPhoneアプリから投稿

ちょっとズレてる周波数・・・

観客を常にズレた世界へ引き込む独特な作品だ。

ズレていると言っても、
それは単なる不協和音や混乱ではなく、
計算された美学と心理的な緊張感から生まれたものだ。

この「ズレ」がどのように現れるのかを探ると、
ストーリーの進行、
登場人物の言動、

さらには映像技術に至るまで、

すべてが微細なアンビバレントを内包しながら調和(とはいえない)していることがわかる。

映画全体に漂う異常さ、
そしてそれに対する驚きは、
シンプルな「理解できない」という感覚から生まれる。

しかし、感覚的にズレていると感じても、
ストーリーはしっかりと引き込む力を持っており、
観ている者を最後まで惹きつける。

その理由は、
映画のビジュアルと演出の絶妙なバランスにある。

ジオラマと現実世界を織り交ぜたカット、
車や風車を巧妙に繋げる映像、

さらにはジオラマ内の人形とニコール・キッドマンという対照的な存在を見せることで、観客に視覚的にズレた世界観を印象付ける。

そのズレを物語の中で解明する手法は、

ただの不安感を与えるだけではなく、
観客に深い意味を考えさせるものとなっている。

特にニコール・キッドマンの演技には注目したい。

彼女は、
まるで映画「ミセス・ダウト」を観ているかのような(実際に観ているシーン有り)、

ちょっとしたコメディー要素を感じさせるものもあれば、

シリアル・ママ風の不穏なカット(上記のロビン・ウイリアムスの女装がシリアル・ママ風)もあり、
まさに「ズレ」を具現化する存在として機能している。

その不安定さが、ストーリーの後半からさらに強調され、
物語の進行がますます予測できない方向へと進んでいく。

また、プロットが中盤以降に意図的にズレを見せる展開には賛否が分かれるだろう。

突如として物語が予想外の軌道を辿り始め、
登場人物の行動や感情が極端に変化する。

しかし、そのズレが映画全体の魅力を高め、
観客に強烈な印象を与えるのも事実だ。

シナリオ、撮影、照明、美術、演技、
すべての要素がこの「ズレ」を支えるために、
高い技術を駆使しており、
その結果として観る者に独特の世界観を植え付ける。

この「ズレ」が意図的であり、
映画のテーマやメッセージを、
さらに際立たせる手段として機能していることを考えると、
その大胆な選択は賞賛に値すると言わざるを得ない。

蛇足軒妖瀬布