劇場公開日 2025年7月4日

「本当におったとや?子供が、おい達に。」夏の砂の上 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 本当におったとや?子供が、おい達に。

2025年7月13日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

とても喪失感に支配されてて、心がぎゅうと潰されたままの二時間だった。それぞれの過去や感情の訳が、ゆっくりじっくり明かされていき、そのどこに自分の身を委ねようとしても居心地が悪く、辛くて悲しくてやり切れない。おまけに、夏の長崎ってどうよ。福岡からやってきた姪の優子が無神経に「ピカッーって光って、全部なくなってしまったんでしょ?この街」という。そんな無感情な余所者にはわかりきれない、夏の長崎の悲劇がある。それを長崎の人たちは言外に心に抱えている。そんな時代背景の上に、この家族の物語があると思うとさらにやるせなくなってしまっていた。小浦と優子。子を亡くし妻を失った男と、親に見捨てられた子、共鳴し合う二人。それがわずかな救いだった。
鑑賞後の満足度は悪くなかったけれど、どこか既視感のあるストーリーなのが惜しいか。それでもいいというのならいいのだけれど。土地が違えども佐藤泰志の世界観と酷似(そういえば彼の原作の映画にオダギリジョーは出演してたな)していたし、姪を預かる設定は、ホアキン・フェニックスの『カモン・カモン』(こちらは甥)の二番煎じとしか思えなかったのが残念。

栗太郎