劇場公開日 2025年7月4日

「期待度○鑑賞後の満足度◎ どことなく昔の日本映画を思わせる。内には抑えきれない想いが渦巻いているのに表には出せない昔ながらの日本人のメンタリティを抑制の効いた演出で映像化しているところとか…」夏の砂の上 もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 期待度○鑑賞後の満足度◎ どことなく昔の日本映画を思わせる。内には抑えきれない想いが渦巻いているのに表には出せない昔ながらの日本人のメンタリティを抑制の効いた演出で映像化しているところとか…

2025年7月5日
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鑑賞方法:映画館

①冒頭シーンの風景が一瞬尾道に見えたので小津安次郎作品のイメージが初めから脳裏に有ったのかも知れない。

②冒頭の松たか子が初めてフレームに入ってくるところとか、満島かおり親子が到着して主要キャスト四人が一つのフレームに収まる図柄とか、元は戯曲らしく舞台劇臭さを感じるけれども、やがて映画らしくなってくる。

③エキセントリックであったり、斜に構えたり、暗い秘密を抱えていたりとか、いわゆる“普通”からちょっと外れた役が多いオダギリジョーが今までになく“普通のおじさん”に近い役を演じているのが何故か新鮮。
松たか子も限りなく“普通のおばさん”に近い役を髪型や衣装も含めいつもより人間臭い。

④何処かで見た顔だと思っていたら(年取ると若い子の顔と名前が結び付いて覚えられないのが悲しい😢…)、『ベイビーワルキューレ』で印象的だった(じゃあ、忘れんなよ)高石あかりだった(次期朝ドラのヒロインだと云うこともこの映画関連の記事で知りました。楽しみ)。
ああいう母親(またまたタイプキャストな満島あかり)の元に育ったやや屈折した少女が、オダギリジョーの叔父と暮らすひと夏の日々の中で少しずつ変わっていく様を微妙に表現していてやはり数いる若手女優の中でも特別な立ち位置でいることがよくわかる。

⑤最近やたらと説明的な台詞に溢れていることが多い邦画(それが必ずしも悪いことではないけれども)。ただ、最近の観客は何でもかでも言語化しないと内容が理解できないのか、老害とはわかりつつオジサンはついつい嘆いてしまうのだか、本作は極力説明的な台詞は抑えつつ俳優たちの表情・動き、家や町の佇まい、その中での人間の生活、背景としての自然といったものを描写する映像を通して余白という人間の想像力を喚起するもので物語を紡いでいく本来映画があるべき姿を提示してくれている。そこが愛おしい。

もーさん