「もったいない」ロストブレット3 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)
もったいない
危険を顧みない熱意と努力が随所に感じられる作品だ。
カメラワークはダイナミックで、
実際に車が激しく衝突し、
巻き上がる土煙や破片が、
スクリーンに飛び込んでくるかのような臨場感は、
近年のCGに頼り切った作品とは一線を画す。
特に大胆に建物に突っ込むクラッシュシーンは、
物理的な衝撃と破壊の美学を見事に捉えているとはいえる。
しかし、その圧倒的な実写アクションの輝きを曇らせているのが、
残念ながら一貫性に欠けるVFXのクオリティだ。
ボアアップされたエンジンルームや、
前後入れ替えのエンジンレイアウトといった、
メカニカルな見せ場におけるVFXは残念ながら不自然さが残る。
実写部分の熱さと精巧さとのギャップが大きく、
映像のリアリティを一気に引き下げてしまう。
優れた技術を持つカーチェイスアクションチームとの仕事をしているのに、肝心な部分でのVFXの粗さが目立ち、
結果としてもったいないという拭えない印象を残す一作目だった。
続く二作目はカーチェイスシーンは大幅に「減量」され、
そのアクションの密度と規模は著しく低下した。
残されたチェイスシーンに関しても、
相変わらず現実離れした〈ハリツキ―並み〉の運転技術は高いが、
残念ながら魅せ方は並みの技術というしかない。
そして本作。
バイクチェイスのスピード感や、
複雑な動きを伴う追跡劇の技術は高い、
意気込みは確かに感じられる。
しかし、残念ながら過去作から続く、
非常に重要な数カットにおいて、
またしても不自然な合成に頼ってしまっている。
実写で可能な部分まで安易にVFXに逃げているように見え、
そのたびに没入感が削がれるのは極めて残念だ。
予算・スケジュールの都合によるものかもしれないが、
シリーズを通してここぞという時のVFXの粗さが、
作品のポテンシャルを最大限に引き出すことを妨げている。
結果として、三作目もまた、もったいないという印象を拭い去れない。