DREAMSのレビュー・感想・評価
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タイトルなし(ネタバレ)
16歳の少女ヨハンネ(エラ・オーヴァービー)の恋愛のめざめ。
相手は、年上の女性臨時教師ヨハンナ(セロメ・エムネトゥ)。
破れ去った恋の、その行動と感情を手記にしたためた・・・
といったところからはじまる物語。
少女のモノローグと登場人物たちの会話で、どんどん話は進む。
手記を読んだ祖母(詩人)と母親。
対話するうちに、感情も揺れ動いていく。
少女ヨハンネも、恋愛対象の女性教師ヨハンナも、母親も祖母も生き生きと描かれる。
クスクス笑いながら観ました。
なお、ノルウェー、祖母世代はキリスト教を全うに信仰するが、その子どもたち(少女の母親世代)は、無神論・唯物論世代。
なので、『SEX』で主人公の同僚がクリスチャンを隠していた理由がわかった次第。
『SEX』『DREAMS』と観て、テーマは
「誰かに求められたい欲求、でもそれは「愛されたい」とちょっと違うんです」
かなぁ、と思った。
『LOVE』を観ると一貫したテーマが浮かびあがる。
満たされた。
bunkamuraシネマにて、一足先に「DREAMS」を鑑賞。
もう満たされて溶けている……。最も好きなラブストーリーが塗り替わるかもしれない、というほどの満たされ方だった。本当に終始「恋」の話だったな。自分が恋愛好きだったことを思い出した。
最初は手記が朗読される形式で進むから驚いたんだけど、やっぱりああいうエリック・ロメール的な奇跡で終わらせられると、人生をもう少し信じてみたくなるのよね。あれこそが映画だよ、本当。USBっていうめちゃくちゃ小さくて現実的なアイテムなんだけど、とても上手く使ってた。しかも、そこにセクシャリティの問題も当て込んでいるから、余計に快感だった。
祖母が階段を昇って行くシーンは、もう泣いてたよ。なんで泣けたか分からないけど、あの迫力に、あの年輪に、あの情念に、胸動かされた。もう落ち込んだら、あのシーンみて情熱を燃やせそう。ああやって生きて来たんだよな。
この映画は三世代の親子の話でもあるのが興味深い。祖父も夫も出てこないのは、ややずるいなと感じるんだけど、心地よさも感じてしまっているから、責めようがない。
あの恋の始まりと、自己中心的な世界との向き合い方、恋煩いを経て、相手を責めるようになり、そして恋は終わって行き、また次の恋へ。そんな恋のすべてを詰め込んだ、本当に「DREAMS」な映画だった。つい笑っちゃうほどの主人公の恋する様子と、本当にあるかもしれないという恋への期待、そして二人の関係性から生まれる緊迫感。すべてが絶妙なバランスで成立していた。
主人公は、初めての恋でそれが同性愛だとも思っていないし、同性愛だからといってそこに忌避感を抱いているわけではない。ただただ、恋が怖くて、恋によって自分の世界がこんなにも変わってしまう事が怖くて、それと同時にたのしくて仕方ないのだと思う。恋ってそうなのよ。自分でしてると恐ろしく心揺らされるんだけど、傍から見たら本当に滑稽なのよね。久々に恋の感覚を味わえたのも、良い映画体験になった。
そんな手記が祖母や母に響いて、曲解されていくのが、これまたおもしろい。祖母は出版するべきだと孫の才能を褒め、母はこれは虐待だと教師を責める。考え直した後で、虐待ではなく、フェミニズム小説だ!となったのもおもしろかった。
母も母で、疲れている感じとか、恋人がいる感じとか、若干不安定に見えて、その気持ちで読んだ感想としてそういう感情が出て来るのが面白いと言うか。実際に、教師と会う展開も、そこで視聴者に初めて教師の心情が明かされる展開もとても良かった。そこで17歳の恋心を挟んだ、大人同士の会話が初めて立ち現れると言う感じがして。母も、あの教師なら…と思ったんじゃないかな。そんで、あの人も多分、女性のパートナーと結婚したのかな?その展開も素晴らしかった。
その後の、メンタルクリニックでの、教師の元教え子との再会。粋な映画の奇跡ですな。あの、実は90分経ってた、というのも良かったし、あの教師の家で印象の悪かった、あの女性というのがまたいい。あの人も、精神的に何かあったのよね。多分、あの教師にあっていた時からちょっとそういう感じあったのかもな。17歳には感じ取れない何か。ラストは、並んで歩くあの二人の背中を見ながら、いつか笑い話として話せるといいね、なんて思いましたよ……。とはいえあの二人、何歳と何歳だよ。
自分は少女の妄想が苦手なのかも
ノルウェーのダーグ・ヨハン・ハウゲルード監督が首都オスロを舞台に描くトリロジー「オスロ、3つの愛の風景」の第3作。
今作は今年のベルリン国際映画祭でノルウェー映画として初めて最高賞の金熊賞を受賞したとのこと。
女性教師に恋をしてときめく少女。
恋の高揚を描く序章が好きだった。
彼女の書いた赤裸々な手記が祖母や母親に強いインパクトを与えて思わぬ方向へ展開する中盤以降。
彼女の書いたもののクオリティは知る由もないけど、セクシュアリティがひとつの争点である以上、事実でないこと、妄想であることに抵抗を感じてしまった。そこに引っかかってはいかんと言い聞かせたがダメだった。
彼氏くん、お尻見せたがってる場合じゃないよ
最初ガールズラブを描いた作品なのかと思い込んでました。先生の住まいまで歩く夜の街並みの美しさとか、ニットセーターを交換して試着するシーンとか、初恋の高揚感いいなあと思いながら観てたんですが、ヨハンネの主観で描かれていたんですよね。すっかり幻惑されてしまっていました。
中盤はおばあちゃんやお母さんの倫理観、人生観に発展していって、映画自体がどこへ向かうのか、ちょっとわからなくなりましたが、構成としてはなかなか面白い。
あんなにキラキラ輝いていた先生もお母さんとの対話では、意外と現実的な方だったり。
そしてエピローグ、ロメール風のシニカルな幕切れに思わずニンマリしてしまいました。ヨハンネの見た目もキャラも随分変わってましたね。
勝手に好きになり、勝手にふられたと思い、豊かな文才でその出来事を赤裸々に綴った手記を作り出版し、大人をリスクにさらす女子高校生
教師と女子高校生の間の同性愛。女子高校生が出来事を赤裸々に綴った手記もあり、教師は保護者から訴えられてもおかしくない。しかし文才優れる女子高校生の手記から想像させられ、それを読んだ人が生々しく追体験させられる出来事と、実際の出来事は異なるようだ。女子高校生は手記に嘘を記載したわけではなく、彼女の視点からみた出来事を忠実に記録したにすぎない。物語は訴訟といったこととは全く異なる方に進むのだが、訴えられなかった教師はラッキーだった。悪気はないとは言っても、そんな一方的な手記を残されたのではたまったものではない。まして出版するなんて。異性間はもちろんのこと、同性間であっても、付き合い方には注意が必要だと思い知った。なんかしんどいけど。たぶんこの映画の主題はこういうことではないのだろうが、私はそんなことを考えさせられた。
2025/9/9
秀逸な脚本だったと思いました。
ヨハンネ、母、祖母の関係性が素晴らしく家族としてはもちろん、人としての敬意が関係性の根底に伺えました。作品を覆う明るさ温かみはそういうところから来ていたのでしょうか。
初恋の赤裸々な手記に困惑し、冷静になったうえで手記を出版したいと思い始めている祖母と母、フラッシュダンスは下賤な映画だなどの言い争いとか可笑しくて笑いましたが、つまり自らの心と生活を揺さぶる文章を書いた娘の才能を知ることになった。
子供だと思っていたのが不意に。
娘の主観とヨハンナの主観の現実的な食い違いも初恋の醍醐味が詰まっていて、人を好きになるエネルギーが爛々としていました。
あと俳優陣の身体性が良いなとずっと感じてました。
ラストシーンでこの娘はきっと大丈夫という気がしましたが「夜明けのすべて」の時に感じたきっと大丈夫と似ていた気がします。
とても素晴らしかったです。
ありがとうございました!
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