「ヨハンネが紡ぐ言葉に絡められて見た風景」DREAMS talismanさんの映画レビュー(感想・評価)
ヨハンネが紡ぐ言葉に絡められて見た風景
とても面白かった。「面白かった」はあまりそぐわない言葉かも知れないけれど、会話や表情を心から楽しめて共感と発見があった。
17歳の高校生ヨハンネが胸をときめかせ、切ない気持ちと苦しい気持ちで人を恋する思いに自然に同期してしまった。彼女の手記を読んだヨハンネの祖母も母も、それぞれに立場が異なり感想も異なるが、自分の今までの恋愛や人生を振り返ることになる。とても個人的で内面的な文章でも読者が自分のこととして読むことができるとき、その文章は共有され共感され読み継がれる力を持つようになるんだろう。自分が中学・高校生の頃の読書体験を強く思い出した。それほどヨハンネのモノローグと文章には力があった。
ヨハンネの心を捉えたフランス語教師のヨハンナの最初の登場は、映画の中でもキラキラと光り輝き明るく、生徒みんなの心を掴んだように見えた。オープンで笑顔が可愛い大人。一目見て彼女に惹かれるヨハンネの気持ちに共感できた。そのヨハンナの輝きは客観的なものではなかったかも知れないと、後に私達は気づかされる;彼女はヨハンネの気持ちに気づいていないし(或いはそうでないことにしている)、第三者から見れば物凄い魅力があるというより、普通の一人の大人だった。恋する思いは自分自身の頭と心の中に突然現れ自分が育てていくもので、相手の資質や外見はそれ程関係ないことに今更ながら私達は気づく。個人的にも昔を振り返れば、そういうものだったと思い出す。
モノローグ含めて一番饒舌なのは主人公のヨハンネ、そして彼女の祖母と母。この監督の映画(3本しかまだ見ていないけれど)は会話が中心でその内容がとても面白い。立場によって、とりわけ時間をおくことで意見や思いは異なり変化する。ヨハンネが恋するヨハンナにはセリフが殆ど与えられていない。観客はヨハンネの心のフィルターを通して「キラキラした光に包まれた美しく聡明で優しいヨハンナ」を共有させてもらっていた。私達はヨハンネに、いや、脚本と監督の魔法にかけられていた。
家の中の暖かさ、居心地の良さ、ヨハンネのグリーンのマフラー、暖かそうな靴下、室内の観葉植物、編み物に全身くるまれたよう。暗くなってからもお喋りしながら森の中の散歩を続ける。高い高いヤコブの梯子(「SEX」でも思ったが、北欧でのキリスト教の位置付けにとても関心をもった)を登るおばあちゃん。その映像は夢のように新鮮だった。ヨハンネの祖母(詩人だ!)による、イエス・キリストはスウェーデン人の男で、という説にとても笑えた。
夏になってヨハンネはずいぶんと大人になり「自分のUSB」から解放される。いやな奴!ライバル!と思っていた女性が、今度はヨハンネにとって快く「会話」する相手になるんだろうという未来が見えた。女性同士が仲良くなって連帯すると社会が変わる、それを一番恐れているのは大人の男性だとチラリと唐突に思った。
「恋する思いは・・・自分が育てていくもので・・・」のところ、とても共感しました。
私自身はこの映画に対しては、独白が続くのがなかなか苦手でした。talismanさんのような繊細な感受性があれば、多分主人公に共感して気にならなかったのだろうと思います。
可能なら後の2作も見てみたいと思っています。
コメントありがとうございました。
ぬるい「被害者の会」みたいなもんでしょうか。
ヨハンナ先生が最後に(見た目は)あまりイケてない相手を選んだのは,若さと美貌が全てではないのだけど若い君にはまだ分からないかな?と言ってるみたいでした。

 
  


