「スタントマン泣かせ」Mr.ノボカイン MAKOさんの映画レビュー(感想・評価)
スタントマン泣かせ
人間後ろ向きに倒れる時、柔道経験者だと咄嗟に顎を引いて頭を庇うのだが、未経験者はそのまま後頭部を打ち付けて大怪我になる場合がある。
この例えで伝わるかな?
これが前向きに倒れる時だと柔道経験など無い人でも咄嗟に頭を庇う防御姿勢をとる。顔面はとても大事だし痛点が集中してるの分かってるから。
ところが無痛症患者はこの咄嗟にが出て来ない。
ので下手するとちょっと躓いただけなのに大怪我する危険がある。幼少時に外で遊ぶ事すら出来ないのだ。25歳どころか幼少時に命を落としてしまう確率も高く、親族の方の苦労は計り知れない。
作中でも無痛症の苦労はそれなりに描かれてはいる。
痛みを感じないなんてちょっと羨ましい気もするが、痛みは生きるうえで必要不可欠な大事な信号なのだ。
何が言いたいかというと、無痛症は治療法の無い癌より厄介な不治の病で有り、ネタにして笑っていいものでは無いという事だ。
癌患者のコメディ映画なんて無いだろ?
…あ、いや「病院へ行こう」ってのが有ったな。
さてそんなちょっぴり不謹慎なアクションコメディ映画だが、自分としてはアクションが凄いなと思った。
鑑賞済みの方なら、えっ?目を瞠る様なアクションシーンは無かったろ?と思うかもだが、確かに派手さは無かった。
では何が凄いかというと、擬斗アクションというのはアクションとリアクションで成り立っている。
このリアクションが有るからこそ、観客は凄えとかカッケえとか痛そうとかで興奮出来るのだ。プロレスだってリアクションで成り立つものでしょ。
ところが本作は役者もスタントマンもこのリアクションがとれない。とってはいけない条件下でアクションシーンを演じなければならない。
アクションコーディネーターは相当な創意工夫を強いられた事だろう。
なのにこのサイトも公式サイトにもアクションコーディネーターの名前は載ってない。
報われない職業だなぁ。
本作は序盤はちょっぴりダルいが事が動き出してからのテンポはいいし、ストーリーもツイストが有って二段落ちが有ってと観客を飽きさせない。
ポスタービジュアルからはおバカ映画の印象しか無いが、決してそんなものではない。
映画としてアクション映画として、なかなかの完成度の作品だと思うので、是非劇場へ足を運んでください。
スタント業界の方々に報いるためにも。