劇場公開日 2025年6月20日

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「マイナスイメージなトレーラーを覆される本編」Mr.ノボカイン TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 マイナスイメージなトレーラーを覆される本編

2025年6月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

劇場で何度もトレーラーを観て、その「悪ノリ」っぽい印象から正直なところ劇場鑑賞を迷っていた作品。他にも候補にしていた作品はあったのですが、結局、天候やタイムスケジュールなどを考慮して観やすい本作をチョイスし、会員サービスデイにTOHOシネマズ日本橋で鑑賞です。
まず、本作は先天性無痛無汗症(CIPA)という難病の症状を、「身体的特徴」と捉えてスーパーパワーのように扱う(或いは、そのように見える)点や、容赦のない暴力とその結果生ずる結構なゴア表現の数々に、作品に対してネガティブな感情をお持ちの方が少なからずいらっしゃるはずです。ですが、そのストーリー自体は思いのほか骨太な印象。自身の疾病を考慮するあまり「Nobody(何者でもない)な存在」であることを選び、出来る限りの人付き合いを避けてきたネイサン“ネイト”・カイン(ジャック・クエイド)が、人を想う気持ちをきっかけに積極性が引き出される、まるで奇跡のようなクリスマス2日間の出来事です。
真面目さだけが取り柄のような存在である銀行員ネイサン。顧客であるアール(ルー・ビーティ・Jr.)の亡き妻への想いが頭に残り、ついつい考え込んでいるタイミングに声を掛けてきた部下(の一人である)シェリー(アンバー・ミッドサンダー)に驚き、粗相をしたことがきっかけで思わぬ展開が始まります。
学生時代、自分の身体的特徴によって暴力を振るわれていたネイサンは、“ノボカイン(局所麻酔薬の一つ。薬品名)”と呼ばれて虐められていましたが、シェリーはネイサンの持つ身体的特徴を「それってスーパーパワーね」と肯定し、少しの戸惑いや違和感もなく受け入れます。更にシェリー自身の過去や弱みまでも打ち明けることで、二人の仲は一気に縮まっていきます。ところが翌日、突如襲ってくる事件が元で連れ去られるシェリー。ネイサンは居ても立っても居られず、シェリーを追いかけて自ら災難に巻き込まれていきます。
それまで、自分のリスクになる可能性がほんの僅かでも(それが、他人にとって全く考えもしないことだとしても)、近づくことさえ避けてきたネイサン。それが一転、何なら「中2かよ」とさえ思える衝動的な決断と行動にでるネイサンに「踏み出す勇気」をくれたシェリーは、彼に新しい世界を開かせるきっかけをくれた初めての存在。そんな彼女を救うためなら、例え茨であっても最短距離の手段を取り、そして自己犠牲も厭いません。また、そんな無鉄砲極まりないネイサンを度々救うこととなる、オンラインゲーム内(だけ)のチームメイト・ロスコー(ジェイコブ・バタロン)がそのキャラクター性も含めて「待ってました!」な存在感。“トムホ版スパイダーマン”におけるネットさながらに、主人公との絶妙な距離感、そして天然スーパーパワー(?)を感じさせる予想外の活躍があって最高です。
不謹慎さを責められかねないくらい「自主規制なし」な暴力的シーンと、思わず目を逸らしたくなるほどの痛々しい表現連続ですが、ネイサンの想いの強さから「最後まで行く」一心不乱さに、ついつい熱くなる涙腺。「果たしてそんな映画か」と否定されたとしても、私としては観て良かったと思えた作品。勿論、個人差はありますので、観る観ないの選択は自己判断でお願いいたします。

TWDera
んゆじとさんのコメント
2025年6月25日

觀るか観ないかの迷いを吹き飛ばしてくれるような、
素晴らしいレビューです。

暴力で目を背けたくなる、
その奥の、
本当に伝えたいものを確かめに行きたいと思います。

んゆじと
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