「「痛(そう)すぎて笑える」という不思議な感覚を味わえる」Mr.ノボカイン tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
「痛(そう)すぎて笑える」という不思議な感覚を味わえる
まず、「痛みを感じないこと」を唯一の武器にして、凶悪犯たちと戦うという着想が面白い。
あとは、どれだけ「痛い」状況を作り出せるかが勝負になるのだが、焼けたフライパンを持ったり、煮えたぎった油に手を突っ込んだりといったことは序の口で、拳にガラスの破片をめり込ませて殴るだとか、爪を剥がす拷問を利用して時間を稼ぐだとか、手に刺さったナイフや足に刺さった矢で攻撃するだとか、手錠を外すために親指を折るだとか、AEDの電気ショックの道連れにするだとか、果ては、開放骨折した骨で相手を突き刺すだとかといった、見るからに痛そうなシーンの連続で、思わず笑ってしまった。
ろくな戦闘能力を持たない主人公は、自らがダメージを受ける代わりに敵にもダメージを与えるという「捨て身」の戦法を取らざるを得ないのだが、ボロボロになった体にアドレナリンを注入し、それこそ必死の思いで敵に立ち向かっていくその姿には、どこか心を揺さぶるものがある。
親身に接した顧客に助けられたり、身元照会のシステムを利用したりと、信用組合の職員であることを活かした展開は心憎いし、ゲーム仲間との友情や、主人公を信用するようになる女性刑事との関係性にも胸が熱くなる。
序盤で、主人公と恋人の馴れ初めが描かれているため、「恋人を助けたい」という一心で行動する主人公には共感が持てるのだか、それだけに、中盤で明らかになる彼女の正体には驚かされた。
ただ、このサプライズは、終盤で、主人公と一緒に味わっても良かったのではないかとも思ってしまう。
また、主人公との本格的な対決がないまま、ラスボスが警官に撃たれて終わりということはないだろうと思っていたところで、「やははり」という展開になるのは良いのだが、撃った犯人を放ったらかしにするなど、余りにも警察の対応がお粗末で、間が抜けているとしか思えないのは残念だった。
ここらへんの展開は、もっと丁寧に作り込んでもらいたかったと思えてならない。
いずれにしても、決して「趣味がいい」とは言えないものの、「痛み」を「笑い」に変える快作(怪作?)として、十分に楽しむことができた。
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