劇場公開日 2025年9月26日

「結論 ロイヤルアルバートホールのライブをIMAXで上映すればよい」レッド・ツェッペリン ビカミング moviebuffさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0 結論 ロイヤルアルバートホールのライブをIMAXで上映すればよい

2025年9月27日
PCから投稿

この映画はled zeppelin becoming というタイトル通り、初期、しかもセカンドアルバムまでの情報しか語られてない。4人のインタビューが聞けること、そしてレッドツェッペリンの音源をたっぷり劇場の大音量で聞ける事にはおいてはこの映画の意義はあるが、ライブフッテージとその音源に関しては消化不良な内容である。

上映後に隣の方々が「あんなライブ映像どこから探してきたんだろう、すごい」とおっしゃっていたのだが、実際にはこの映画のライブの音源はほとんど(あるいは全て)既出のものだ。もちろん映像に関しては新しい映像(ファンとスタッフがその当時八ミリで撮った程度のもの)も若干あったが、それらには逆に音源は残されていない。そのためほとんどがその8mm映像のライブの音ではなく、その場合はレコードのスタジオ音源を充てている。

ここからが重要な話なのだが、実はレッドツェッペリンのライブ映像は2000年代以降、映像がしっかりと残っているものはほとんどまとめて「レッド・ツェッペリン DVD」というタイトルで5時間を超えるライブ映像としてオフィシャルにリリースされている。また現在ではそのほとんどがレッドツェッペリンのオフィシャルyoutubeで見ることが出来る。80年にツェッペリンが解散してしまった事を考えると、意外とこの事をリアルタイムでファンだった方より、「後追い」でファンになったツェッペリンのファンの方が知っている可能性もある。このレッドツェッペリン ビカミングのライブもそのDVDと同じものだ。そのため、今回の映画を「観たことがないライブばかりだ」、と興奮して見れている方とは異なり、私はどうしてもこの映画に同じように高い評価を与える事は出来ない。

ジミーペイジが未発掘のライブ音源+映像をそう簡単には映画のために使わせるわけはないとは思ったが、それだけではなく、単にその当時のライブ映像、しかもプロが撮影したものがしっかりとした形で初期は残せていなかったという事が理由であろう。つまり初期の映像+音源がしっかり残ってるライブに関しては、DVDで2000年代に出たもので、おそらく打ち止めなのだとおもう。

現在ビートルズの過去のライブ音源をAIによって観客の声やノイズなどをミュートしてリマスターするプロジェクトが動いているようだが、そういう方法が一般化するまでは恐らくは新しいツェッペリンのライブ映像+音源というのはなかなか見つからないのかもしれない。

とにかく、このように、ツェッペリンとはその名声の巨大さに比べ初期のライブ映像が少ないわけだが、それ故に、音源と映像のクオリティとして、最後に登場するロイヤルアルバートホールのイギリス凱旋ライブは別格である(念のために言うとこれもその既発のDVDに収録されているのだが)。

正直に言う。このロイヤルアルバートホールのライブをまるまるIMAXで上映すればこんなドキュメンタリーはいらないのだ。それぐらいあのライブはファーストとセカンドの全てのエネルギーが詰まっている。もっと言うならば、このライブがもし60年代、70年代に正式に映像で発表されていれば、ウッドストックのジミヘンのように間違いなく永久に語り継がれる殿堂入りライブとなっていただろう。それぐらいのライブだと思う。

私が特にそう思う理由は4人のエネルギー。初期の彼らにはいわゆるハードロック的ではない、ガレージロックっぽさ、ロックンロールっぽさも混在している。だから、レコードでしかツェッペリンを知らない人は是非ロイヤルアルバートホールのライブ、BBCのライブを聴いてほしい。(甲本ヒロトがツェッペリンの印象がBBCを聞いて変わったと言ってたのはそういうことだ)。そしてもう一つ大事なのが、、全盛期のロバートプラントのヴォーカルの音圧。

実はプラントは4枚目のツアーぐらいから既に初期の頃に出していた高音が出にくくなりつつあった。(私の知る限り、天国の階段のクライマックスパートをレコードと同じように歌えているのはツアー前、レコードリリース前のBBCライブのみである)。つまり1971年か1972年には最初の頃のプラントの声は失われてしまうのだ。実際この映画でもジョンポールジョーンズが最初にスタジオで集まった時に「こいつこんな無茶苦茶にシャウトしていて大丈夫か」と言っているが、やはり大丈夫では無かったのである。

もちろんその後のプラントもヴォーカリストとして素晴らしいのだが、初期のプラントは声が高いだけではなく太さがあり、これこそが彼の本当の全盛期の声なのである。無敵と言ってもいい。それをしっかりと捉えられているのが、このロイヤルアルバートのライブである。

というわけで、ぜひともこのライブを劇場公開していただきたい。
ツェッペリンのファンは間違いなく見に行くと思う。

moviebuff
MSUMOさんのコメント
2025年9月28日

まさにその通り!初期はロイヤルアルバートホールのリマスター&修復版IMAX、中後期はアールズコートのIMAX版、終期はネブワースのIMAXを流してくれればそれに勝るものはない。(ネブワースはちょっとアレですからホントは要らないが)

MSUMO
だいすけさんのコメント
2025年9月27日

大変的確なコメントで感動しました。ロイヤルアルバートホールのフル映像はブートであるのでしょうか

だいすけ
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