「デビュー前演奏の高音質化は見事。バンド活動期の前半しか扱わないのは不満」レッド・ツェッペリン ビカミング 高森郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
デビュー前演奏の高音質化は見事。バンド活動期の前半しか扱わないのは不満
バンド公認のドキュメンタリーとのことで、ライブ演奏等の音質には並々ならぬこだわりがうかがえる。メンバー4人が揃って(名義はヤードバーズだが)初めて観客の前で演奏した1968年9月デンマークのグラズサクセ・ティーンクラブのシーンなどでは、楽器3ピースの音像がしっかり分離していて音質もタイト。撮影カメラが複数台使用されていることから推測するに、もともとテレビ番組かドキュメンタリー用に収録されたマルチトラック音源が保管されていて、それを今回リマスタリングしたのかもしれない。
タイトルに「ビカミング」が含まれているように、本作が扱う期間はメンバー4人それぞれが音楽に触れのめり込んでいった頃から、ミュージシャンとして出会い、ジミー・ペイジを中心にバンドを結成し、レッド・ゼッペリンとしてデビュー、セカンドアルバムをリリースした後まで。残念ながら、「移民の歌」(デヴィッド・フィンチャー監督作「ドラゴン・タトゥーの女」のオープニングでかっこいいカバー曲が印象的だった)を含む「レッド・ツェッペリン III」や、代表曲「天国への階段」のほか「ブラック・ドッグ」「ロックン・ロール」といった有名曲を含む4作目のアルバムなど、活動期後半には触れられない。
公認ドキュメンタリー第2作を見据えての戦略という可能性も残るが、2025年4月に掲載されたインタビュー記事で、監督とプロデューサーは決まった計画はないと話していた。バンドのファンにとっては、デビュー前の貴重な映像やエピソード、活動前半期にまず米国で人気に火がつきやがてホームの英国に広がっていく過程などを、メンバー4人の回想(故ジョン・ボーナムについては今回初公開という生前のインタビュー音声)とともに振り返る構成が味わい深いかも。だがZepのファンというほどでもないライトな洋楽ファンなら、後半期を含むバンドの終焉までを1本の映画で見せてくれないことに不満を覚えるのではと思うし、実際私もそうだった。初期のいくつかの曲が、スタジオ録音とライブ版などの別バージョンで複数回流れるのも不満の一因。同じ曲を何度も流す尺があるなら、そのぶん違う曲を聴かせてと思ってしまった。
とはいえ、バンド後半期とボーナムの死をきちんと扱う続編が将来製作されたら、そんな不満も解消されそうだし、そうなることを願う。
タイトル(Becoming Led Zeppelin)の通り、グループの誕生、ツェッペリンになるまでを描いたドキュメンタリーなので、後半がないのは当然のことかと思います。それだけでも内容は盛りだくさんで他のバンドと決定的な違いをみることができました。
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