秋が来るときのレビュー・感想・評価
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あちこちにいろんなものが隠れてる
オゾン監督の映画を見る幸せ(「サブスタンス」を見た後だったので特にほっとした)。ファスビンダーloveのオゾン作品とも異なり、今作はとても静かで穏やかでセリフも最小限。主役ミシェルを演じるのは80才の女優、エレーヌ・バンサン。小柄で、顔立ちも仕草も表情も話し方も可愛い、しっかり者。でも落ち込んだらまだ日が高くてもベッドにもぐり込む。
親友マリー=クロードの息子ヴァンサンは久しぶりに彼女を見て言う:「ミシェル、相変わらず可愛いね!」。ミシェルは人生の色々な局面で幸せも辛さも悔しさも悲しみもすべて経験してきた。人生の最後に近づいた今、親友や孫や森や本やクロスワードパズルと共に、お料理しながら、死の到来を待ちながら、前向きに生活している。
舞台は、秋のブルゴーニュの森。静かで木々はまだ葉を完全には落としていない。地面は湿気をたっぷり含んだ土と落ち葉で覆われている。オゾン監督は映画のあちこちに秘密や優しさや怖さや複雑な感情をポンと置く。それだけで後追いしない。だから後から私たちは、あれは何だっけ?あれは・・・えっ?など私たちを考えさせてくれる、自由に。その自由が嬉しかった。
文句なし!オゾンワールドにハマってしまう作品
文句なし!さすがオゾン監督。オゾン監督作品にしては重いが、何故か観やすく音楽も◎。心が穏やかになっていく魔力もある。作品のテーマとしてはよくある題材だが、今、希薄になっている家族関係を考えさせてくれる作品だった。ミシェルは娘とは過去の事で関係が悪化したままだが、友人、友人の息子、娘の孫のサポート・愛に支えられる。家族との関係、人生の最後をどう過ごすか色々考えさせられた作品だった。素晴らしかった!
演技とは思えないエレーヌ・バンサンにひたすら絶句!
心のひだに潜む影の存在への気づき
主人公のミッシェル(エレーヌ・バンサン)がパリで仕事をしていた時代からのい友人マリー=クロード(ジョジアーヌ・バラスコ)と二人で語り合いながらブルゴーニュの紅葉の森の中をキノコ採りに歩く情景は、人生の実りの秋(とき)が感じられて美しい。司教が語る
物語の冒頭、主人公ミシェルが教会の礼拝で祭司が語るナルドの香油を惜しげもなくイエス・キリストに塗る説教に耳を傾けているシークエンスが描かれている。しばらく観ていて、なぜこの礼拝のシークエンスが挿入されているのか分からなかったが、物語の終わりに近づき気づかされた。ミッシェルが語らずに守り続けた秘密と、家族との和解と赦しにつながる、見応えのあるサルペンス要素をもったドラマでした。
落ち葉は葛藤を覆い隠す
関係が良好とは言えない母ミシェルと娘が久々に再会するも、ミシェルが作ったキノコ料理を食べた娘が病院に担ぎ込まれた事で生じる疑念を発端に、ミシェルの親友とその息子が絡み…
人の為に行う善意は、必ずしも善き事になるのか?他方から見れば有難迷惑でしかないのか?…そんな倫理的葛藤が描かれるわけだが、これがなかなか深い。秋という設定にしたのは、大量の落ち葉がそうした葛藤を覆い隠すというメタファーに感じた。
葛藤の末に導かれる「嘘」と「選択」。それは自分勝手と捉えられるかもしれないが、平穏に生きていきたい、もしくは安らかに終活を迎えたいという人の真理なのかもしれない。
日本公開は初夏だけど、物語設定と同じ秋シーズンに観るとよりまた染みるかも。
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