秋が来るときのレビュー・感想・評価
全85件中、21~40件目を表示
ブルゴーニュの黄金の秋
教会の神父の説教に「マグダラのマリア」が出てきたので、映画の背景は知れた。
一番素晴らしかったのは、かけがえのないブルゴーニュ、場所はオーセールの近くか。ブルゴーニュの秋は短く、午後4時には暗くなる、雨も多い。それでも、紅葉は美しかった。ただ、てだれのオゾン監督が、それだけで済ませる訳がない。
気になったところ、映像にはクロサワの影響があったのでは。庭の景色、ブランコが出てくるところ、葬列も。第一、カゲロウ(妖精)は雪の女を思わせた。TERブルゴーニュ・フランシュ・コンテ地域圏内の電車も、車内が広くて、きれい。
庭の畑で採れた材料を使った質素な食事も美味しそうだった。キッシュ、実だくさんのスープ、それからケーキ。森に親友と出かけて取ってきたキノコで娘が食中毒というけれど、軽いアナフィラキシーのようにも見えた。やはり素人のキノコ料理は怖い。昼からワインとはうらやましいが、彼らは少しの酒で、顔が赤くなることもない。それから、パンも。
ブルゴーニュは、もしかすると、オゾン監督がやがて帰ってゆく、終の住処なのかも知れない。私たちとの1番の違いは、彼らには教会があるから、基本的に一人であることか。
「良かれと思うことが大事」というミシェル(エレーヌ・ヴァンサン-80歳を超えたという-好演)の言葉が心に残り、我が「山本周五郎」を思わせた。
タイトルなし(ネタバレ)
パリでの生活を終えて、ブルゴーニュの森でひとり暮らす80歳のミシェル(エレーヌ・ヴァンサン)。
娘のヴァレリー(リュディヴィーヌ・サニエ)とは確執がある。
原因は、ミシェルの過去にあるようだ。
秋の休暇、ヴァレリーは息子を伴ってミシェルのもとを訪れる。
ミシェルは、森で友人と採取したキノコを料理して振る舞ったが、そのキノコ料理をひとりだけ食べたヴァレリーは食中毒を起こしてしまう。
母不信のヴァレリーは、ミシェルが自分を殺そうとしたと騒ぎ立てるが・・・
といったところからはじまる物語。
母娘ものなのかなぁと思っていたら、展開は意外な方へ。
ミシェルは、友人の息子ヴァンサン(ピエール・ロタン)を可愛がっており、ヴァンサンもミシェルを母のように慕う。
母娘関係を修復したいと思ったヴァンサンは、ヴァレリーが暮らすパリのアパルトマンを訪れるが・・・
と。
いやぁ、この展開には驚きましたわぁ。
「良かれと思ってやったこと。良かれと思って生きていればのよ」というのがテーマ。
達観した人生観。
事件の真相は観客に任せられている。
物語的にはそれほど面白いわけではないが、随所にオゾンらしさもあり、感心しました。
まぁ顕著なのは、オゾンの婆さん好きの側面。
登場する老女たちに親しみをおぼえます。
演出的は、省略・反復が上手い。
反復は、列車での移動。
物語をくだくだしく描かず、登場人物が列車に乗ることで、描写を省略し、反復でリズムを出す。
尖ったイメージのフランソワ・オゾン監督だが、歳を経て、円熟味が出てきましたね。
見せない、語らない、わからない、理解出来ない
真相は秋の森の中
秋深い森に静かな感情が揺れるAftertone.
ブルゴーニュの森の近くに、ミシェルというおばあさんがひとりで住んでいました。
ある日、おばあさんが世界で一番可愛い孫のルカがやって来るというので、昼食をもてなそうと、ミシェルはお友達のマリーと森にキノコ狩りに出かけます。娘ヴァレリーとルカがやって来ますが、ヴァレリーはつっけんどん。彼女は母ミシェルが嫌いでした。ミシェルには、人に知られたくない暗い過去があったから… と物語は展開します。
ヴァレリーの突然の死に、ミシェルが余り悲しみを見せない事や、彼女の生活ぶりにそのお金はどこから来たのか、などと不自然に感じます。それでも、庭で採れた人参スープのトッピングとテーブルの上のバタールに、列車の中でミシェルが噛じるバゲットが、すごく香ばしそうで美味しそうだなと見入ります。
端正で知的な美しい青年に成長したルカと、側で不器用に優しく、ずっとミシェルを守ってきてくれた、マリーの息子ヴァンサンと足を踏み入れたブルゴーニュの秋色の森で、お迎えに来たヴァレリーに手を引かれミシェルは大往生。これで良し、これで良し、というお話でした。
しかし、フランスワーズ·オゾンは、そんなお伽話では終わらせません。人は、己を守る為に嘘をつき、良心の呵責に苛まれつつも罪を重ねて生きるのです。誰が例外でいられましょう? 私自身の今この時までを振り返っても…
教会で神父が語るマグダラのマリアの説話で始まるこのストーリーは、ミシェルならずとも、全ての女性に“罪と赦し”というthemeを深く考えさせます。
多くを語らず実態は見せず観客の感性に訴える、オゾン監督の手腕は素晴らしい。
穏やかな日常の崩壊
フランスの田舎暮らしと聞くだけでテンションが上がってしまうくらいにはフランスかぶれです。
キノコ狩をして、家でそれを料理していただいて食後はお散歩とか、豊かな生活〜と垂涎の眼差しで鑑賞していたら、その後は不穏な空気に。
フランソワ・オゾン監督は日常生活に不協和音が生じるのを描くのが上手いなあと思います。
17歳、スイミングプール、危険なプロットとか。
何かが起こりそうで起こらない、と焦らされるのが心地よい。
ミシェルの決断、私は支持しますが、娘にしてみればたまったもんじゃないですね。
母娘の関係って難しいなと思わされました。
ルカ役を演じた二人(子供時代と青年期)が美しくて、目の保養でした。
オゾン監督、いつも美少女や美青年を連れてきますよね。審美眼が素晴らしい。
満足感しかない
[一回目] 2025年6月2日 新宿ピカデリー
オゾンの作品って、いつも全てがパーフェクトに思う。
演出も装飾もロケ地も音楽も、作品を構成するパーツの何もかもが、パズルのようにピッタリハマっていて、「映画を観た」という満足感を与えてくれる。
今回は、特に配役が素晴らしかったー。
ミシェルは、本当に可愛らしさと少しの色気を残したまま、素敵に歳を重ねていて、その魅力が半端ない。
ヴァンサンの危うい感じも目が離せないし、
また、ミシェルとヴァンサンがダンスしている様子を見守るマリー・=クロードの何とも言えない表情がステキで、とても印象に残っています。
そして、そんな私が思ったことに、パンフレットのインタビューで、オゾン監督が全部わかり易く答えてくれていて⋯
あー、オゾンって、自分の頭の中を的確に映像にできる才能がすごいんだなーと、改めて思いました。
与えたい欲求って、ある意味自己満足でもあるけども、
相手が喜んでくれるなら、それで良いし、
そのときに、大切なものが大切で、それで良いんだよね。
それと、これ日本人でリメイク見てみたいなーと思いました。
日本にも、風景の美しいところたくさんありますしね。
--------------------------
[二回目] 2025年6月24日 日TOHOシネマズシャンテ
良かれと思ってやったこと
良い側と
裏目側と
相容れない家族よりも
自分のために良かれと気にかけてくれる方を選ぶよね
まして家を出て親の過去を理解できないまま大人なった娘
親子というより女同士だね
息子とは少し違う関係性になってしまうかも⋯
本当
偶然が必然のように起こっていく
逆??
どっち???
ソワソワ
ワクワク
ドキドキ
シミジミ
いろんな感情を楽しめるから面白い!
嘘と疑惑と優しさ
登場人物の台詞の中に嘘や曖昧さが多々あり、真実は分からないまま、観る側に委ねられます。
ミシェルは実の娘の死に関係しているかのような疑惑は満載で、でも友人や友人の息子や孫に対する優しさもあります。
そんな人間の複雑さを繊細に描くオゾンはやっぱりスゴイ!
スパーク娘とかいいかも
優しい嘘の輪舞
ブルゴーニュの田舎で庭仕事や森の散策を楽しみながら静かな余生を送る老婦人の日常…
そんなイメージで鑑賞しましたが、いや驚いた。
全然そんなものではないです。
といっても、外から観た風景は冒頭に記載したとおりなのですが、老いるまでの一生の積み重ねが今であり
死が訪れるまでは今を生き続けなければならないという現実が痛いほど胸に迫ってきます。
生活の為にやむを得なかった若き日の選択がいつまでも評判としてつきまとい
娘を愛するが為の選択がかえって成長した娘を傷つけることになり
それでも、一生懸命生きている人の優しさに触れた人が良かれと思ってしたことが誰もが望まぬことを引き起こし…
主要登場人物は老婦人二人、その息子と娘と孫。
家族の誰もが誰かを傷つけないための嘘を抱えています。そして物語の進行に伴って更にいくつかの嘘が積上げられて…
嘘で塗り固めた平穏といえばそれまでですが、嘘をついてもそれぞが守りたかったものを思うと、虚構の幸福に何の意味もないとはとても言えない気がします。
勧善懲悪ではない人間性の複雑さを描くことでは右に出るものはないと常々思っているフランス映画。
ラストシーンの美しさは特筆ものです。
誰にでも訪れる人生の晩秋を描く秀作ドラマ
フランソワ・オゾン監督作品は、毎回スキャンダラスな題材が多いけど、今回は驚くほど静謐で穏やかなタッチの作品でした。ブルゴーニュの田舎で一人で暮らしている主人公の老女を巡って起きる様々な事件は、誰にでも起き得る平凡なものです。しかし、事件を煽ることなく淡々と描きながらも、スクリーンから目を離させないオゾン監督のストーリーの語り口に感服しました。それは、暗い過去や家族との不和はあっても、家族や親友を大事にしながら、毅然として今を生き続ける主人公の姿に共感できるからかもしれません。そんな彼女と周囲の人々の優しい関係のまま、紅葉の中で迎える幕切れも余韻が残ります。役者では、主役のエレーヌ・ヴァンサンが優しくも芯のある女性を好演、ファッションもおしゃれ。親友役のジョジアーヌ・バラスコや、その息子役のピエール・ロタンもいい味出しています。子役のガーラン・エルロスは、すごい美少年で人気が出そう。
キノコだけが毒じゃない
『犬の裁判』を観ようと思ってたけど、レビューを読んで自分には不向きだと察して繰り上げ鑑賞。
田舎に暮らすおばあちゃんの穏やかな余生を描いた作品風だけど、まあフランソワ・オゾン監督でそんなワケもなく。
ヴァレリーが何故そこまで母を毛嫌いするのか、途中でなんとなく予想はついたけど、知った上で見ると田舎暮らしの老婆にしちゃ髪や服装が、あまり上品とは言い難い。
とはいえ、パリのマンションだけでなく家まで寄越せとなると、あまり同情しにくい。
イライラギスギスした母、そもそも一緒にいない父と、可愛がってくれるおばあちゃんなら誰選ぶ?ってなったら...ルカの選択は無理もない。
いろんな偶然が重なったのか、はたまたミシェル、ヴァンサン、ルカの利害関係が合致した結果なのか。
3人の食卓でルカの嘘が分かったのにはちょっとゾワっとなった。
大人になったルカが登場した時、フランソワ・オゾンってこういう顔立ち好きだねぇって思った。
スッキリしない
80歳のミシェルは、パリから自然豊かで静かなブルゴーニュの田舎へ移り、ひとり暮らしをしていた。休暇で訪れてくる孫と会うことを楽しみに、家庭菜園で採れた野菜で料理やデザートを作り、森の中を散歩する日々。やがて秋の休暇を利用して娘と孫が彼女のもとを訪ねてきた。しかし、ミシェルが振る舞ったキノコ料理があたり、過去生活のため娼婦だったことも含め娘とギクシャクし、その娘がアパートのベランダから転落死し、友人たちのために、ミシェルは事実を封印し、孫も・・・という話。
わかるよ。わかるけど、スッキリしない。
娘が、母が、死んで、それが他殺かも知れないと警察から言われ、わかっているのに嘘をつく。それがこれからのためとはいえ死の真実を知りたいとは思わないものなのか?
娘ヴァレリーは母が娼婦だったのが許せないのはわかるが、生活のためと言ってたように、許してやりなよ、と思ったが。あそこまで憎む必要が有る?
ミシェルとマリー=クロードの関係は同じ仕事をしてた仲間???孫が生まれる前、って言ってたから、70歳頃まで?すごすぎる。
ヴァンサンは自分の保身だけ?ミシェルが好きなのはわかるが、ミシェルの客だったのかな?
ルカは子供の時ならまだわかるが、大人になってもヴァンサンと親しく出来るものなのか?
???と疑問だらけでスッキリしなかった。
ルカの子役はイケメンだった。
時間経つほどしみじみと染み入る深い人生ドラマ
ポスターだけで。
ポスター見ただけで鑑賞
あれ?
なんか、ほのぼのムードじゃない?
ボンジュール!
て、キノコ狩りして、
料理にふるまったら(ちゃんと図鑑で調べてるし)
なんとおばあちゃんミシェルが
ムスメに毒キノコ食べさせちゃった!
!!
えー!
このあたりで、やっと気づくわたし。
この映画、ホンワカじゃない!
ミシェルの過去話もおどろき、
え?ルカが生まれる前?
え?ちょっと待て待て
ルカ10歳いや、12歳くらいだとすると
計算ができないー
そんなことばかりが気になり
しかし、物語はどんどん進んでいく
死んでしまった一人娘の幻影?幽霊を
常にそばに感じながら
ヒトにはだれにも打ち明けられないことがある
死んで土にかえってしまえばおしまい
て、ことかな?
わたしがミシェルのココロのスキマの悪意
と、捉えてしまったから
そんな感想になりました
いや、おもしろかったです。
見終わってからのザワザワ
全85件中、21~40件目を表示