「想いが溢れているその距離は、そのままだった方が良かったかもしれない」君がトクベツ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
想いが溢れているその距離は、そのままだった方が良かったかもしれない
2025.6.20 イオンシネマ京都桂川
2025年の日本映画(102分、G)
原作は幸田もも子の同名漫画
アイドルと秘密の関係を持ってしまう女子大生を描いた恋愛映画
監督は松田礼人
脚本はおかざきさとこ
物語の舞台は、都内某所
大学に通いながら実家の食堂の手伝いをしている若梅さほ子(畑芽育)は、高校時代のトラウマのために「イケメンを敵視する」ようになっていた
親友のゆう子(上原あまね)は国民的アイドルの「LiKE REGEND」の大ファンだったが、さほ子はイケメンに踊らされる親友を白い目で見ていた
ある日のこと、さほ子の食堂に「LiKE REGEND」のリーダーである桐ヶ谷皇太(大橋和也)がやってきた
ハンバーグ定食を美味しそうに食べた皇太は、友だちのためのサインにも嫌な顔をせずに応じてくれる
だが、イケメンは嫌いだというさほ子の言葉に深く傷ついて、こういう時は「自分の何が悪いのかを深く考えてしまう」性格をしていた
さほ子は落ち込む皇太を慰めながら、好きになっていく自分を押さえ込んでいく
だが、その重しも次第に取れてしまい、遂には自分の気持ちに正直になろうとしていた
それでも、傷つくことを恐れるさほ子は、自分の気持ちを相手に悟られないように、平静を装おうとするのである
映画は、ファンとアイドルの関係において、「相手の特別になりたい」という二人を描いていく
だが、さほ子の想いはどんどん深まってしまい、とうとう想いが溢れてしまう
さほ子の想いを知った皇太は、「特別な人は作らないと決めている」と言い、彼女は見事に玉砕してしまう
その後、皇太にかつての幼馴染との玲衣(星乃夢奈)との過去が掘り返され、炎上案件によって、活動休止に追い込まれる様子が描かれていく
そして、二人の事情を知らない仲間たちは、こともあろうに、さほ子の家に皇太を連れてきてしまい、さらにややこしくなってしまう
皇太はそこで、炎上案件になっている玲衣との過去を話し、さほ子は自分に何ができるのかを考えていく
彼女は皇太たちの出待ちの列に加わって、鬼面を被って応援を始めていく
それはSNSで話題となり、復帰を待ち望むファンたちの想いに伝播していく
そうした想いが皇太たちに伝わり、活動再開の後押しをしていくことになるのである
個人的にはうまくまとまっていると思うものの、ラストの神社のエピソードは不要のように思えた
連絡先を消したところで終わった方が良いと考えていて、活動再開の矢先にスキャンダルの種になりたくはないと思う
活動が軌道に乗っていくことで距離感が縮まっていくことは良いと思うが、さほ子の決断はファンとして、特別な人になりたいという想いを押し込めた上でのものだったので、その意味をもっと噛み締めても良かったのではないだろうか
いずれにせよ、恋愛映画としてハッピーエンドになる必要はなく、あのまま別れても「二人は心で通じ合っていること」がわかるので問題なかったと思う
ある意味、玲衣の役割を受け継いでいくことになるので、一定の距離感を保ちつつも、その関係性は維持していくことで「推しとアイドルの聖域」というのは保たれていく
映画は、特別な人を作らないと言いつつも、心ではお互いを特別だと確信していることがわかれば良くて、恋愛映画にありがちなキスで終わると踏襲しなくても良かったように思えた
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