IT’S NOT ME イッツ・ノット・ミーのレビュー・感想・評価
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詩的で私的なインスタレーション
レオス・カラックスが自分自身を赤裸々に、オブラートに包んで表現した、極私的なインスタレーション。
自身の作品の断片や、自己を確立したであろう作品の断片、夢とも現実ともつかない断片を散りばめ、映画への愛と情熱を詰め込んだ、私的な作品。
初めてレオス・カラックスに触れる人は、残念ながらここから彼を理解する事はできないだろう。
でも、彼の作品を観てきた人なら彼の心の深淵に触れたような、そんな気になるのではないだろうか。
この作品が、これまでとこれからの分岐点となるのだとしたら、次作が楽しみだ。
監督のコアなフォロワーだけが理解できる映画。映像美だけでも楽しめるかと思った私が悪かったです。
怒涛の42分
“私たちは瞬きを必要としている…”このセリフが印象に残る。「瞳」と「カメラのレンズ」のアナロジーはビクトル・エリセの『瞳をとじて』を彷彿とさせた。
その他にも様々なテーマが提示されているが情報量が多すぎて(かつ、秒単位で次の映像へ切り替わるので)処理が追い付かない。42分だから見れたが、これが2時間続いたら耐えられないと思う。
映画・映画史に詳しい人が見たら分かるのだろうショットが数多く挿入されているようなのでその種の人が見たら楽しめるのかもしれない。前衛的かつシュールレアリスム的だがトランプやらプーチンやらの映像も挿入され現実と幻想が混じり合い、様々な形而上的考察・形而下的運動がギュッと42分に凝縮されたような映画だった。
エッセイ的コラージュ
まばたきする度に目を漱げ
『ホーリー・モーターズ』のレオス・カラックス監督が自作のフッテージを散りばめつつ、家族や映画、自身の子などに向けた思いを綴っていく自叙伝的作品。元々は美術館向けに制作していた作品というだけあって、全編とにかくアーティスティック。
まず言えるのは、カラックスの作品を未見だったり、彼のパーソナルな面を知らない人は理解するのが難しいという事。かといって本作だけで彼の全てが分かるわけではないし、やはり彼のフィルモグラフィも併せて観る方がベターだろう。かく言う自分もそんなにカラックスを知っているわけではない。ただ、彼がいかにデヴィッド・ボウイを敬愛していたかが分かる。もっとも音楽使用許諾は一番大変だったとか。
ラストの「まばたき」のメッセージは小津安二郎の言葉を引用したものだが、目まぐるしく動く今を、我々はしっかりと見る事が出来ているのか?というカラックスの提言と受け取った。
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