劇場公開日 2025年11月14日

「ユーモアと悲劇と」石炭の値打ち 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 ユーモアと悲劇と

2025年12月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

ケン・ローチという人は、本当にぶれない人なのだなと改めて思った。いや、いつもこの人の映画を見直している時には思うのだけど、この作品は僕も初めて見るものだったので、「やっぱり、ぶれないんだな」と感嘆させられたのだった。こんなに何十年間も一貫した眼差しを持ち続けられる人って、それだけですごい。
本作は、BBCドラマ2部作を映画として構成したもの。第一部は炭鉱の町に生きる人々を滑稽さと温かいユーモアで見つめる。皇太子が視察に来るというので、壁をキレイに塗装し直すなど、どうでもいいブルシットジョブみたいなものをたくさんやらされる炭鉱夫たちの悲喜こもごもを見つめている。
第二部は打って変わって、炭坑内の爆発事故の救出劇をスリリングに描く。生き埋めになった仲間を救うために懸命に作業する人々、いつもは炭鉱夫と対立することもある上司たちの責任感、祈るように無事を待ち続ける家族の姿をローチらしい極端な感情移入を排した冷静なカメラで見つめていく。ケン・ローチの人々への信頼、そして人々を追い詰める社会システムに対する痛烈な批判精神があふれる傑作。

杉本穂高