劇場公開日 2025年3月7日

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「一応ホラーなんだけど、怖さというよりは目の付け所の面白さが印象に残る一作」プレゼンス 存在 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 一応ホラーなんだけど、怖さというよりは目の付け所の面白さが印象に残る一作

2025年8月1日
PCから投稿

ちょっと怖い映画が観たいんだけど、残酷描写は苦手なんでそれがウリの映画はちょっと…。あんまり長い映画もちょっと…。という要望には、しっかり応えてくれる作品です。

約80分と割とコンパクトな映画ですが、スティーブン・ソダーバーグが監督しているだけに、気軽に観るにはちょっと贅沢感を感じるほどきっちり作りこんだ映画です。

カメラの光学的な性能や機能を物語に反映させることがうまい監督だけに、本作も最初のショットから、え!?と思わせてくれるし、アイデア勝負の作品に見えて様々な仕掛けや語り口の巧さに最後まで楽しませてくれます。

物語はほぼ全編、一人称視点の映像で展開していくのですが、その視野は広角レンズのため周囲が歪んでおり、また揺れを吸収するジンバルという装置を用いているためか、カメラの移動は極めてなめらかです。要するに今ではすっかりおなじみになったアクションカメラ的映像なのですが、こうした画面が醸し出す違和感を、恐怖感を増幅させる装置として実に効果的に用いています。

ではこの視点はいったい誰なのか、そして目の前にいる家族とどのような関係にあるのか。それらについて深く考えなくてもきっちり楽しめるように作ってあるのですが、さらに一歩踏み込んで一つひとつのひっかかりを深堀して考えると、いやこれ、ちょっと怖いかも、ってなること間違いなしです。

崩壊しかかっている家族の物語としての側面もあり、家族の夫妻間関係、兄弟関係、そしてそれぞれの親と子の関係と、錯綜する関係性にそれぞれの歪さがあります。それが「この存在」と関わることによってどう変化していくのか。誰か一人の言動に着目して観進めていくと一層面白いと思います。

複数人でわいわい言いながら楽しみたいホラーだったら『トーク・トゥ・ミー』(2022)とかあるけど、一人で布団かぶって見たら効果倍増な上に残酷描写控えめな映画を、ということであれば、本作は有力な候補作です!

yui
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