劇場公開日 2025年3月7日

「地縛霊は見た!!」プレゼンス 存在 ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0地縛霊は見た!!

2025年3月9日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

怖い

興奮

幽霊から見た一人称の映画。

類似の構造として、
切なさが込み上げて来る「愛」についての秀作、
〔A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー(2017年)〕を想起した。

先の作品は、不慮の事故で亡くなった男が
白いシーツを被った幽霊の姿になり、
妻が今も住む家を訪れる物語り。

彼はその場所で地縛霊となり、
今のみならず、過去と未来をも見守り続ける。
とは言え何の行為もできずに、ただ佇んで居るだけ。

その眼にはどのようなものが映り、
何を感じているのだろうか。
ただ、世の中は、禍福は糾える縄なのを知る。

翻って本作の幽霊の性別は判らず
(ただ作中で、霊媒師が「HE」と表現していたような)。

何時からその家に居るのか、
どのような理由で成仏できないのかもわからない。

人には直接触れることはできないものの、
家の中に置かれている物には干渉できるよう。

なので、直近公開の邦画〔死に損なった男〕に
類似の設定ではある。

その幽霊の居る屋敷に
四人の家族が越して来る。

夫婦に兄と妹の構成も
妹の『クロエ(カリーナ・リャン)』は
母からも兄からも疎まれている。

元々の内省的な性格に加え
直近で友人二人が相次いで亡くなったことで
更にふさぎ込んでしまっているため。

そんな彼女に対して、幽霊は異常な関心を示す。

勿論、幽霊の姿は見えないししゃべれないので、
我々はカメラに仮託された視線から
それと推し量るばかり。

が、カメラワークが絶妙で、
幽霊の懸念が手に取るように感じられる。

普段はスムースに動いているのに、
時として移動が荒くなったり。
或いは、クローゼットの陰に隠れたり、
衣類で自らの視線を遮ったり。

耳も聞こえているのかはわからない。
ただ幽体の故か、家族が知らぬことも
見えているのだろう。

次第にその憂慮は現実になり、
せっぱつまった末に行動を起こすのだが・・・・。

実体の無いものに
感情移入をしてしまう不思議。

憤怒や焦燥を覚えている幽霊に対して、
観客は無責任にもじれったさを感じてしまう。

今、その場所で
なんとかできるのはお前だけなんだ~、と。

目に見えないモノに対して、
これほどのシンパシーを持ったことが嘗て有っただろうか。

なんとなれば幽霊よりも、
生者の方がよほど恐ろしいのだから。

ジュン一