ファンファーレ!ふたつの音のレビュー・感想・評価
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人生がピークを迎えるときにその人を祝福するための演奏は、演奏する者と聴く者と両方にとって魂が震えるような力となります。見事な演奏でした。
ノーマークの作品だったのですが、ポスター画像をみて
印象に残り、作品紹介を読んでいる内にどんな作品なのか
気になってしまったので観てみることに。
さあ鑑賞開始。
主役は世界的なスター指揮者の男。名はティポ。
練習中に倒れてしまい病院で検査をしたところ白血病…。
根本的な治療には骨髄移植が必要。 …痛そう
しかし、当然ながらドナーが居ないと話にならない。
さらに、適合するドナーでなければいけない。
血のつながった相手なら適合率は高い。1/4とか?
全くの他人が相手となるとかなり低い。数万分の1…とか。
ティポには妹が一人いる。渋る妹を説得し、適合検査。
結果は、「不適合」…。
" 1/4の確率でもダメだったか… "
妹に礼を言いながらも、つい無念が口をついて出る。と
" いいえ。 数万分の1の結果で、ダメだったわ "
妹とは血の繋がりが無かった事を知るティポ。
母が、追いかけるように説明を加える。
" あなたには、血を分けた弟がいるの "
希望の糸が、またわずかに繋がった。
実母と弟の暮らす場所へと、車を走らせるティポ。
会えた。弟も兄がいる事実を知らなかった。
突然現れた「兄」に「骨髄が欲しい」と頼まれた弟。
もう一人の主役。名はジミー。仕事は…料理人…?
" そんな話は聞いたこともねぇし "
" オレとは違う上品な世界の人間が "
" こともあろうに骨髄をくれだと? "
色々な情報と感情が絡まりあって、脳内大混乱の弟。…分かる
そんな弟を何とか必死に説得する兄。まさに命がけだ。
最後は納得した弟の協力を得て、手術も無事に乗り越える。
いやー、良かった良かった。
んで、復活コンサートも大成功。 で
兄弟でヒシと抱き合う感動のフィナーレ!
…って え? 違う? @o@;;
はい。違いました。
手術に成功し、指揮者に復帰するまでは良かったのですが…
# 移植手術に成功し復活した(ハズ)の兄 ← あっ ネタばれ
# 「絶対音感」の持ち主と分かった弟の、心境の変化や
# 弟の働いていた工場をめぐる閉鎖問題や
# そこで生活していた人たちの失業問題などなど うーん
次第に先行きが見えなくなってきてしまい…
さあ、どうなる。兄弟の、そしてみんなの将来は?
という、あれまぁ な展開になりました。@▲@;;
◇
観た直後は、納得感を感じたのですが
時間経過後に振り返ってみると、どうにも " もやもや " した
気分になってしまいました。@△@
鑑賞中は、展開の続きが気になって観ていましたので
面白い作品たったとは思います。
◇あれこれ
■寂れていく炭鉱の町
この作品、実話ベースなのかフィクションなのか。
「炭鉱の衰退」が描かれるということは、現代のお話と
いう事では無さそうな気がしたのですが、ならばいつの
時代を描いた話だったのでしょう。@△@?
それともフランスでは、最近までの石炭採掘が盛んに行わ
れてきたということなのか。はて。
■カントリーダンス
ジミーたちの炭鉱楽団を応援するワケでもなく、むしろカント
リーダンスの奨励に力を入れているのが、ジミーたちの暮らす
町の女性市長。で、カントリーダンスって何?と調べてみると
「17世紀から18世紀にイングランドで流行した民族舞踊」
だそうで
「カントリー・ハウス(領主の館)で踊られたことに由来するとされている」
のだそうです。 (ウィキ先生ありがとう♡)
特段、フランスに縁のある舞踊でもなさそうです。
これに注力する市長は、何を考えているのかが分かるかと
思ったのですが、調べても良く分かりませんでした。
■楽団の制服
兄(ティボ)の演奏会場に、弟(ジミー)たち炭鉱楽団
メンバーが全員(?)特別席?のような席に座ってました。
良くチケット購入できたなぁ とか
あの揃いの制服で良く入れたものだ とか感心。
そこから始まるボレロの口演奏に、途中から兄のオケが
合流して大合奏・大合唱になる場面。
理屈は抜きで、良かった。
■ファンフーレ って
「主に式典などで演奏される、ごく短い華やかな楽曲」
ということらしいのですが (ウィキ先生♡)
演奏場面を具体的に想像してみました。
うーん あっ あれですか?
昭和の某アニメで、ちびメカ発進のときに流れる音楽。
♬ ♫ ♫ ♬ ♫ ♫ ♬ ♫ ♫
" 今週の びっくりどっきりメカ "
毎週替わるメカが大好きでした。やったー。
◇最後に
エンディング直前の演奏は、サプライズとして良かった。
無事に兄へのはなむけの演奏となったでしょう。
けれど…
これで終わり?
という感覚が残ったのも正直な感想で…。
兄は多分、その後亡くなったのでしょうし
弟は、どうなってしまうのやら。再婚する?
工場は閉鎖。食堂の仕事も、多分ない。
指揮者で食って行ける? たぶん無理
演奏者で食べて行ける? これも難しそう。
あの楽団全員として、やっていける? うーん どうだろう。
と。
エンディング後の、明るい展望が思い浮かばないのです。
華やかなフィナーレを飾るコンサートではありました。
けれど、どうしても消える前の一瞬の輝きなのでは?
と思ってしまうのです…。
あの地点から、どうやって未来へと歩きだすのだろうかと
いくら考えても、その先が思い浮かんでこないのが悲しい。
感動的なエピソードで終わったけれども
そんなこんなで、まだ悶々状態が続いてます。
(最後に が長くなってしまいました)
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
うまくまとまってる音楽映画の良作
音楽をわかってる人が作った音楽映画だと思った。特に「I Remember Clifford」でクラシック、ジャズというカテゴリーを乗り越えて意気投合するところや、その後の絶対音感の描写が良かった。
クラシック、ジャズの楽曲を使っての組み立てが素晴らしかったが、おそらくキモのシーンでフランス独自のポップスを多用したのが、残念。ちょっと置いてきぼりになる。
ですが、これは映画としてはとてもよいプロットだと思うので、ハリウッドあたりでリメイクを希望。
ラストのボレロ(8番出口で鳴ってる曲)の起用、演出も素晴らしく泣けるポイントだと思ったが、好みとしてはラストカットはジミーで終わって欲しかった。(なんならベタに数年後に指揮者になってるとかで!)
文句ばっか言ってますが、最近のフランス映画みたいなクセツヨ描写や難解さもなく、うまくまとまってる音楽映画の良作でした。
ラストはやはりグッときてしまった
育った環境は違っても、やはり二人して音楽が好きで、音楽を通して気持ちが近付いてゆく様子が素敵でした。
でもかたや十分な教育を受けさせてもらい世界的な指揮者になった兄と絶対音感があって、音楽が好きでも地元の吹奏楽団止まりの弟と、外れくじを引いたと言ってしまう弟の気持ち、すごくわかります。でも兄に上を目指せと言われ、場違いな交響楽団のテストを受け傷ついてしまうジミーは見ていて本当に切なかった😢
ラストの公演の場面、みんながあの格好でコンサート見てたら兄もっと早く気がついちゃう?そもそもみんなそんなコンサート見られるお金ある?な疑問が一瞬湧きましたが、そんなのはどうでも良くなるほど、感動的でした✨
人生はいつもハッピーエンドとは限らないけれど
テンポがよく無駄な説明や描写もなく必要最低限のエピソードで展開させるので
全く間延びしなかった
シリアスな話なんだけど見終わった後のなんともいえない満足感は
主人公の運命を受け入れた覚悟と同じ
人生はそんなにハッピーは続かないし、現実はシビア
ハッピーエンドではないがこれ以上の人生はないと思わせるラストだった
素晴らしい映画
大好きな一本がまた増えた。
本音をぶつけられるティボとジミーの幸せを願わずにいられない。
ティボの母と妹にイラついたが、自分の身に降りかかったらあれが普通の反応だろうか。
でも、出自って、親の考えで隠していいものじゃないと思う。それなのにティボの怒りややるせなさに寄り添わない2人。
それだけに、ジミーの母の「あなたの存在を知ってたら両方引き取った」が沁みる。
世間一般に成功したのはティボだろうが、
荒れがひいてからのジミーは他人に優しい情に厚い良い奴。それは義両親が良い人で彼らからの愛情を充分受けたからだろう。
炭鉱楽団がみんなステキでした。
団員の誕生日をあんなふうにみんなでお祝いするっていいな。
誰だってあんな居場所がほしいのでは?
コンクールで練習の成果を出せないことや(ジミーは悪くないと思う、手は出したけど)、兄のオーケストラオーディションを受けても夢と現実の差を思い知ること、ティボに拒絶反応が出てハッピーエンドにならないこと、参加者が盛り上がり、宣伝もうまく行っていたのに工場でコンサートが開けないことなど、現実を描いているのもいい。
ラストは特に最高だった。
音楽は素晴らしい、なんてことは既出だしみんな知ってる。
だけど、この映画が素晴らしいのは、音楽が素晴らしいだけじゃなく、人が人とつながることのあたたかさと大変さを描いているから。
本当にすてきな映画でした。
ラストいい!
例え絶対音感があったとしても育った環境によって全く違った人生になってしまうから、人生は不思議。指揮者として成功をおさめても明日病気になるかもしれないから、人生はわからない。
弟から造血幹細胞を提供され白血病が完治したと思ったものの、適合できなかったことが人生の不条理さを物語っていました。でも、ティボもジミーもこの病気をきっかけにして生き方や考え方が変わったし、何しろ兄弟と出会うことができたのです。
ティボの病気が完治してめでたしめでたしな安易なラストよりも、本作のラストの方が映画的にも哲学的にも良かったと思うなあ。人間に対する愛情がありました。
やっぱ«ボレロ»パイセン!パないッス。
ただ…ボレロパイセン迄に辿り着く道のりが、可もなく不可なくといった具合で。
コレは私が日本人からなのか?はたまた国籍関係無く私と云うヒト種のせいなのか?
泣かせたいんだったら、トコトンよぉ…ヤれや!って思ってまった。
大病がキッカケで生き別れだった兄弟が知り合う…
ソコ迄は…いいよ、王道だもん。
その後が…尻切れトンボちゅうか、ちょっとしたブツ切りエピソードをパッチワークみたいな?🤔
私はちょっと萌えんかったわ。
本当に血を分けた兄弟になったふたりの音
フランス映画
幼い時にそれぞれ別の里親に出されて生き別れた兄弟。
兄は世界的な指揮者になり超多忙。弟は学食のコックをしながら炭鉱町のオンボロ楽団でトロンボーンを吹いていた。
幼い頃から英才教育を受け、音楽一筋だった兄は白血病を発症し、骨髄移植のドナー適合検査で妹とは適合せず、彼は養子だったことをいい歳して初めて知ることになり、荒れる。
一方、弟は幼くして母親と死別後、叔母に引き取られてつましく暮らしていた。
弟を探し出し、彼からの骨髄幹細胞移植により白血病を克服した兄は、弟も音楽の天賦に恵まれていることを見抜き、好きなジャズプレイヤーも一緒で意気投合。弟の楽団の指導にも力を注ぎ、弟をアマチュア楽団の指揮者に育てあげ、アマチュア楽団のコンクール出場をサポートする。SNSに仲間が投稿した厨房でお玉を指揮棒に練習する動画がバズり、出番直前に他の楽団員からからかわれ、弟たちは暴力沙汰を起こしてしまい、カントリーダンス派でクラシック楽団の存在を疎ましく思っていたテンガロンハットにウエスタンシャツ姿の市長から学団は解散命令を出されて、炭鉱会社工場の練習場所も失ってしまう。
フランスの田舎町でカントリーダンス???
元々、アイルランド民謡が新大陸に渡り、ブルーグラスから発展したカントリー·ウエスタン。
先日鑑賞したアンドレア·アーノルド監督の映画アメリカンハニーでもクソ母親が居酒屋でカントリーダンスに興じたり、カウボーイ姿の成金オヤジたちに一泡吹かせる場面があり、どうやら、ドナルド·トランプのあの出で立ちから、最近の映画では嫌われ者の権力者のアイコンとして利用されることが多いようだ。
浅草のウエスタンカーニバル世代のカウボーイ、カウガールたちの年齢を感じさせない傍若無人なエネルギーを老害と感じ、眉をひそめることもちょくちょくある。
どうやら、ジョン・ウェインらが出演していた頃のハリウッドにノーを突きつける風潮が生まれてきているのだろう。
骨髄移植拒絶反応が出始めた兄は新作曲の発表を急ぐ、アンコールでのラスト、弟たちの軍団は合唱隊となって、弟が二階席から指揮する。ステージ、観客席一体となるボレロは感動的。
思わぬ展開に目頭が熱くなる、素晴らしい映画
生き別れていた兄弟が、兄の白血病を契機に再会。
世界的名声の指揮者である兄は、工場労働者の弟を援助しようとし、弟も次第にそれを受け入れ前向きに生きようとする。二人の微妙なやり取りは、見ていてほほえましく、これは典型的なハッピーエンドに突き進みそう、と思ってしまう。
しかし、思わぬ展開。ラストでは、予想もしなかった形での感動が待ち受け、目頭が熱くなった。実に、無駄なく良くできたストーリー、と感心した。
クラシックの名曲がたっぷり。とくに「ボレロ」の使い方がうまい。
ハッピーエンドとは言い難いがあたたかい気持ちで見終えた
白血病と診断された世界的指揮者&作曲家の兄と、幼い頃に生き別れた、小さな町の工場のアマチュア吹奏楽団でトロンボーンを担当している弟が、骨髄移植をきっかけに互いの存在を知り数十年の空白を埋めていくお話。
小難しいイメージのフランス映画ですが、この作品はテンポがよく話もシンプルでとても解りやすかったです。
兄ティボの病気発覚から弟ジミーにドナーを依頼しにいくまでが体感で10分あるかないかで、説明的じゃなくとてもあっさりした感じ。
その分、再会してからの心の動きに時間を割いたということでしょうか。
マイルス・デイビスやリー・モーガンが好きだというジミーに対して何故トランペットをやらないのかと問うティボに、「トロンボーンしか残ってなかったんだ」と答えるジミー。それ自体はバンドあるあるではあるものの、「選びたいことが選べる人生ではなかったんだよ(ティボと違って)」ということの暗喩のようでとても切ないセリフでした。
また、恵まれた経済状態の里親の元でなに不自由なく育ったかに思われる兄ティボも、妹の骨髄が適合しなかったという結果を受けて育ての母が実子である妹にティボが居ない場で「(実の兄妹ではないことがわかってしまうのに)どうして検査を受けることにしたの?」と問う場面があり、ティボ自身は養子であることを知らずに育った一方で実子である妹は兄が養子だと知っていたということが感じられて、これもやはりやりきれない場面でした。
ティボの出現によりジミーの人生への向き合い方が好転していくのと同時に、ティボはジミーのアマチュア吹奏楽団に関わっていく中で音楽への愛情を新たにすることができたように思える。
また、登場する人みんながそれぞれに善良であたたかい。
最終的にはティボは移植後しばらくしてから拒絶反応が出てしまったり、ジミーの所属する吹奏楽団がある工場は閉鎖されてしまったり、ハッピーエンドとはいかなかったけれども、心がほんのりとあたたかくしみじみとする良い映画だったと思います。
ラストシーンはティボの新曲の御披露目コンサート。マーラー風味のなかなか前衛的な交響曲で、えっ!この曲調で終わっちゃうの!?と思いましたが、そこからのボレロでしっかり分かりやすく感動させてもらえて安心しました(笑)。
余談ですが、ジミーがティボについて「金持ちの名前」というようなことをいい放つシーンが複数回登場したので気になってネットで軽く調べたところ、「ティボ」(Thibaut)という名前は「高貴な」「輝く」の2つの意味から成るそうで、爵位を継承した貴族の名前にもあるようです。
しかし日本だと家庭環境のいかんに関わらずこの手の漢字を名前につけることはよくあるかと思いますが、フランスは家柄次第でつける名前が異なる慣習が現代でもあるのでしょうか???
やはり、外国映画で台詞一つ一つの持つ意味合いを理解するのは困難ですねぇ…
セ・ラ・ヴィ
お約束ですよね…
総じて辛口に言えばベタですよね…
泣かせに来てませんか…
映画・ドラマ擦れっ枯らしの「詰まんねえヤツ」としての内なる自分は、いっぱしの素人評論家みたいにポジショントークしようとする。
いや、ホントにそれでいいのか?ともう一人の内なる自分が首を傾げ、余韻の直感に素直に従えと言う。
それは、血を分けた兄弟でありながら異なった人生を歩んで永く離ればなれだったがために、再会してもこじらせまくったティボとジミーのようだな。
私は、そんな内なる二つの自分を和解させ、シンプルに統合させなければならない。
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この映画の最も優れた美点は、脚本とともに、圧倒的に編集でしょう。
冗長な背景説明や経過を潔く削ぎ落としながら、それでいて鑑賞者の受容を妨げないスピード感とペーソスの深みを保っているのは、とてもクォリティが高いと感じた。
そして余計な「伏線」やら「回収」やらが無い。
優れた「物語」というのは、「ありふれた人生」、つまり「誰にでもある人生」という普遍性を、多様なエピソードでフィクションに変換して届けてくる。
この作品のエピソードとは、生き別れた兄弟が経済的にも文化的にも社会的地位でも真逆の育ち方をしたこと、その兄弟を結びつけたのは骨髄移植であること、そして弟も生来的に持っていた絶対音感という絆が判明すること、などだ。
それを田舎の炭鉱楽団の仲間たちが遠景で際立たせてくれる。
しかし、創作者のそのようなエピソード設定に惑わされてはいけない(決して惑わすつもりではないにしても)。
その普遍性たる「骨」は、こう言ってしまえば平板過ぎておもしろくも何ともないのだが、人生に勝ち組も負け組もない。希望と絶望、期待と失望が等しくやってくる。禍福は糾える縄の如し。
それが人生さ。
って、フランスが時折り見事にみせるまさにセ・ラ・ヴィだ。
だから、寿命の折り返し点はとっくに過ぎた小生のような年頃の人間には、やたらと「身につまされる」。
そう言えば、昨年末の『ネネ エトワールに憧れて』にも通ずる。主人公のアフリカ系の少女のほうではなく、才能あふれるその子を排除していくバレエ団の女性年配ディレクターのほうに深い哀しみがあった。
『クレオの夏休み』もそうだ。アフリカに帰った乳母を夏休みに訪ねたフランス人の幼児が主人公のようであって、実は乳母の哀しみが深く描かれていた。
昨今のフランス映画って、こんな感じなのでしょうか? 好ましいという意味で。
佳い映画を観た、という余韻に浸りながら席を立つことができたのは、幸福である。
音楽は心を豊かに育んでくれます。
大まかに病気に生き別れの兄弟に廃れた町に生きる人々とベタな感じですよ。
でもちょっと重たく見せたのはよくある不景気に事業縮小だったりデモだったりに対して従業員の優しさや人柄の良さとのメリハリ。
それによってこの作品のメインのキーワードとなる”格差“が際立ちます。
兄と弟はお互いに音楽のセンスや絶対音感にと共通する部分がありながら育った家庭環境の違いから才能が開花し世界的に活躍する者と日の当たらない影で誰にも知られず生きてゆく者。
病気をきっかけに離れ離れの2人が交差し悩みや苦しみを乗り越えようとします。
ストーリー展開がとても良くできていて飽きさせません。
ラストはとても刺さります。
ベタなんですよ。ベタ。
なのに曇天がパァーッ!と晴れわたる感覚
ただのベタなら本国でもそれほどヒットはしなかったでしょう。
しかし格差はかなり深く根強くそして広範囲に広がっています。
タイトルにあるファンファーレはこんな重く暗い格差に苦しむ人々の気持ちを晴れやかに、そして背中を後押ししてくれる素敵なメッセージです。
音楽が溢れてくるとても良い作品でした。
シンデレラ・ストーリー的には展開せず
ダブル主演の弟役のピエール・ロタンが好きなので観に行きました。
前半は、よくある感じの生き別れの兄弟の再統合のお話しで、かなり良い感じで進むのです。
しかし、イメージしていたシンデレラ・ストーリー的にはすんなりとは展開せず。
後半は、中々に厳しい現実を突き付けられ、気持ちがどんより。
とって付けたように、ちょっと盛り上げてエンディング。
物語としては、エンディングに救いを入れる意図は良く分かるのだけれど、モヤモヤとすっきりしないお話しになってしまいました
爽やかな佳作
難病+音楽ものかと思って観たのですが、病気ネタは導入部分だけでした。
兄弟が生まれ育った環境の違いによる異文化衝突があるのかと思ったら、そこも焦点ではなかったようでこちらも拍子抜け。
ジミーの周りの人は事あるごとにputin(ピュタン=売女の意味)と言いまくっており、なかなかにガラが悪い人たちなのですが気の良いオジサンオバサンの集団で憎めない。
(特にサブリナが良いキャラ)
工場閉鎖になったのにあまり悲壮感もない。
フランスは移民問題はあれど、白人社会は貧困もさほどではなく平等ということなのでしょうか。
(映画なのでマイルドに描いているのかもしれませんが)
中盤は炭鉱ブラスバンド再生の話とジミーの自己実現、ティボの育ての家族との軽い軋轢の話などが混ざり、とっ散らかってしまった印象。
ラストは工場労働者の救済もティボの病気も宙ぶらりんのまま「ボレロ」の勢いで押し切ってしまったのが残念。
ボレロは確かに良い曲ですけれどね。
ジミーがプロオケのオーディションにちゃんと落ちたのにはホッとしました。
過去のフランス製作音楽映画を思い起こすと嫌な予感しかしなかったので…
イギリスの炭鉱ブラスバンドは有名ですが、フランスにも同じ文化があるとは知りませんでした。
それからフランスではティボ、は気取っている名前なんですね。
色々発見がありました。
素敵な兄弟
兄弟でありながら異なる運命を歩んできた2人。
世界的な指揮者である兄、片や…寂れた田舎で燻っている弟…すべてが正反対。
けれど2人のただ一つの共通点は"音楽"
ものすごく"ベタ"であるけど、またそれが良かった。
フランス田舎の共同体ゆえの楽しさと煩わしさ、フランスっぽいなと思うようなデモだったり、ほんのりとある生きづらさも映画では垣間見えて面白かった。
共通点の音楽が離れて生きてきた兄弟の絆をどんどん強くしていき、最後、ラヴェルの「ボレロ」が心温まる人間関係を優しく紡いでいてさ、
結局様々な問題が解決しないし、明るく終わる作品ではないけれど、不思議な勇気がもらえた。
クラシック音楽が心地よく、また天気も秋晴れだったから尚更ハートフルに思えた映画だった。
【”人生のボレロ。そして生き別れだった兄弟の絆の芽生え。”今作は白血病になった世界的指揮者が、生き分かれになっていた弟と出会い、兄弟が夫々の人生のボレロを歩む姿を描いたムネアツな物語である。】
ー ラヴェルの世界的名曲”ボレロ”は劇中でも触れられるが、彼が工場を見学に行った際に、その機械的でリズムの乱れなき所にヒントを得て作られた曲である。この過程は「ボレロ 永遠の旋律」で詳細に描かれている。-
■世界的指揮者のティボ(バンジャマン・ラベルネ)は、オーケストラの指揮をしている際に倒れ、白血病と診断される。
妹に骨髄提供をして貰うが、血縁関係が無い事を知り、ドナーを探す過程で自分が幼い時に生母と別れた養子であり、生き別れた実の弟ジミー(ピエール・ロタン)が居る事を知り、彼に会いに行く。
ジミーは寂れた炭鉱の町で、給食の配膳係をしつつ、炭坑会社の仲間達とおんぼろオーケストラでトロンボーンを担当していたのである。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・オーケストラの映画に外れなし、と私は思っているが、今作もそうであった。但し、オンボロオーケストラが陽の光を浴びる「ブラス!」(この映画も炭鉱夫たちのオーケストラの話であった。)とは、ラストが異なるが粋なラストであり、且つムネアツであった。
・ティボとジミーが、環境は違えど音楽を愛し、その交流の過程でティボがジミーが”絶対音感”を持つ男と見抜いて、ジミーに新しいトロンボーンを贈り、ジミーも立派なオーケストラの一員になろうと、懸命に練習をするシーンからの、厳しい現実にぶち当たるジミーが荒れるシーン。
それでも、ティボは忙しい中、素っ気ない態度を取るジミーの所により、運河の川べりでビールを飲みながら語り合い、最後は二人ともベロベロに酔っ払うシーンなど、楽しい。
・ティボはジミーに、空席になった指揮者の指導をするが、上手くいかない。だが、その過程でジミーはティボの苦労と偉大さを知るのである。
・ジミーに思いを寄せる楽団の女性エリーゼとの恋や、ジミーがティボに自分が育ったアパートに連れて行き、別れた妻との娘と会わせるシーンなども良いのだな。
若い頃から音楽漬けだったティボが、初めて実の弟とゆっくりと話しをする時の、リラックスした嬉しそうな顔。
■ティボは斜陽の炭坑会社のオーケストラを立て直すために、自ら吹奏楽と合唱を組み合わせたボレロを編曲し、炭坑会社のオーケストラの仲間達も、最初は半信半疑だが最後は彼に付いて行こうとする。
だが、実はティボの骨髄移植は上手くは行ってはおらず、彼の体調は良くない。
病を抱えたティボがオーケストラを指揮し、見事に演奏を終えた時に万雷の拍手が起こり、深々と客席に頭を下げる疲労困憊のティボの姿。
だが、その時に、客席からボレロの”トン、トトトン”のリズムが起こるがのである。まるで、ティボを勇気づけるように・・。
ティボが驚いて振り返ると、客席にはジミーが指揮を執る炭坑会社のオーケストラの面々が正装をして、ボレロを合唱しているのである。
それに合わせて、ティボが指揮を執るオーケストラは、管弦楽でボレロを演奏するのである。正にティボが編曲した吹奏楽と合唱を組み合わせたボレロが、大観衆の中で奏でられ、観客たちも席を立ち、ボレロを口ずさんで行くのである。
その姿を見たティボは目に涙を浮かべながらその風景を見渡すのである。勿論その視線の先にはジミーが指揮を執る姿があるのである。
<今作は白血病になった世界的指揮者が、生き分かれになっていた弟と出会い、兄弟が夫々の人生のボレロを歩むムネアツな物語なのである。>
エンドロールの楽曲は「Valse Pour Thibaut(ティボへの円舞曲)」でした
2025.9.20 字幕 MOVIX京都
2024年のフランス映画(103分、G)
白血病を患った名指揮者と初対面の実弟との関わりを描いたヒューマンドラマ
監督はエマニュエル・クールコル
脚本はエマニュエル・クールコル&イレーヌ・ミュスカリ
原題は『En fanfare』で「ファンファーレ」、英題は『The Marching Band』で「管弦楽団」という意味
物語の舞台は、フランスのムーボン
世界的に著名な指揮者であるティボ・デゾルモ(バンジャマン・ラベルネ)は、ある日の練習にて体調不良で倒れてしまった
診断の結果は急性白血病というもので、治療のためにはドナーが必要だった
妹のローズ(Mathilde Counrol-Rozes)に検査を受けてもらうものの、主治医のロレンス医師(Annette Loecay)からは不適合だと言われ、さらにDNAも兄妹を示すものはなかったと言われてしまった
母(Ludmila Mikael)に問いただすと、生後間も無く養子に出たと言い、さらに弟がいるという
そこでティボは、弟のジミー(ピエール・ロッタン)を訪ねて、田舎町に向かうことになった
ジミーは、ティボとの対面に戸惑いを見せるものの、彼の養母クロディーヌ(クレマンス・マサール)のアドバイスを受けてドナーになることになった
そして半年後、病気を克服したティボは、ジミーの元にお礼を言いに尋ねることになったのである
物語は、ジミーの友人サブリナ(サラ・スコ)の提言によって、ティボがジミーを教えることになり、その指導風景が描かれていく
ジミーは絶対音感の持ち主で、それは遺伝的なものではなく、幼少期の父の影響だった
彼の秘密の部屋にはびっしりと名盤がコレクションされていて、音楽に関する造詣も深かった
ティボはジミーに才能があると感じていて、プロ仕様のトロンボーンを贈ったりするのだが、彼は勘違いをして、リールにあるオーケストラのオーディションを受けてしまう
そこでレベルの差を見せつけられたジミーは塞ぎ込むようになり、そのマインドを引きずったままコンクールを迎えてしまい、そこで大失態を演じてしまうのである
ジミーは兄の存在を感じて、自分の今の境遇を恥じていく
そして「何でもできる」という言葉を鵜呑みにして無謀な挑戦をしていく
彼自身は変わりたい、現状を変えたいと焦るのだが、努力の階段を知っているティボの目線とは違った景色を見ている
ジミーは境遇を「当たりくじ」と言ってしまうのだが、そう思わざるを得ない日常もある
それらの突破口として「ボレロ」が登場するのだが、それは意外な形で観客の耳に届くことになるのである
映画は、エンドロール後に曲がぶつ切りになってしまうのだが、これが意図的なのかどうかはわからない
だが、ティボの予後とジミーの未来を考えるならば、そこには予期せぬ意図があるように思える
それは、白血病の予後不良として描かれるティボは、真のアンコールの途中で倒れてしまったのではないか、という懸念である
「ボレロ」が飛び入り参加のワランコール炭坑楽団の送辞であり、ラストの楽曲はティボのアンサーにも思える
そうして紡がれた楽曲は予期せぬところで終わりを遂げてしまうことを考えると、深読みをせざるを得ないのではないだろうか
いずれにせよ、そのような意図があろうがなかろうが余韻を壊すというのは現実に起こっている
工場の問題に関しても、ティボがテレビへの出演をしたことを機に市長側が強硬策に出たようにも思えてくる
結局のところ、ジミーはこれまでの生活を一新する必要があり、それもティボを頼らないという覚悟が必要となっていた
サブリナとの新しい生活を始めるとしても、彼には相応の覚悟が必要となっていて、そういった現実的なものへの回帰というものを強いているように感じた
なので、後味の悪さというものには、何らかの意味があったのかなと思った
ボレロ!
冒頭のオーケストラの音が美しく、一気に惹き込まれた。その後の炭鉱町の労働者たちの吹奏楽団が絶妙に下手で思わず笑ってしまう。
下手な楽団が新たな救世主を得て次第に上達してゆくという、よくあるパターンかと思っていたら、なんと上手くならないのだ笑。
現在のフランスが抱える様々な問題を、さりげなく配置しながら物語は進んでゆく。
ラストのボレロは圧巻だった。
吹奏楽団ではなく合唱団の方がよかったんじゃないか?!という下馬評はさておいて笑
エンドロールの最後、BGMがブチッと終わるのは興ざめだった。
幸福感と悲しみ
期待していた通り、それ以上に面白かった‼️
最初からチンタラと説明する場面はカットされいてさっさと話は進むから爽快でした。
白血病で恵まれた兄と、工場で働きながら演奏楽団に所属する弟との突然の再会から、一気に2人の絆までちょっと笑い挟みながらちょっと泣け、幸福感にも包まれながら挫折も味わい、最後は悲しい。
神様はいるようでいないのか。
きっと皆んな観終わったら、面白かったーって言う映画だと思います。
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