「本当に血を分けた兄弟になったふたりの音」ファンファーレ!ふたつの音 カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
本当に血を分けた兄弟になったふたりの音
フランス映画
幼い時にそれぞれ別の里親に出されて生き別れた兄弟。
兄は世界的な指揮者になり超多忙。弟は学食のコックをしながら炭鉱町のオンボロ楽団でトロンボーンを吹いていた。
幼い頃から英才教育を受け、音楽一筋だった兄は白血病を発症し、骨髄移植のドナー適合検査で妹とは適合せず、彼は養子だったことをいい歳して初めて知ることになり、荒れる。
一方、弟は幼くして母親と死別後、叔母に引き取られてつましく暮らしていた。
弟を探し出し、彼からの骨髄幹細胞移植により白血病を克服した兄は、弟も音楽の天賦に恵まれていることを見抜き、好きなジャズプレイヤーも一緒で意気投合。弟の楽団の指導にも力を注ぎ、弟をアマチュア楽団の指揮者に育てあげ、アマチュア楽団のコンクール出場をサポートする。SNSに仲間が投稿した厨房でお玉を指揮棒に練習する動画がバズり、出番直前に他の楽団員からからかわれ、弟たちは暴力沙汰を起こしてしまい、カントリーダンス派でクラシック楽団の存在を疎ましく思っていたテンガロンハットにウエスタンシャツ姿の市長から学団は解散命令を出されて、炭鉱会社工場の練習場所も失ってしまう。
フランスの田舎町でカントリーダンス???
元々、アイルランド民謡が新大陸に渡り、ブルーグラスから発展したカントリー·ウエスタン。
先日鑑賞したアンドレア·アーノルド監督の映画アメリカンハニーでもクソ母親が居酒屋でカントリーダンスに興じたり、カウボーイ姿の成金オヤジたちに一泡吹かせる場面があり、どうやら、ドナルド·トランプのあの出で立ちから、最近の映画では嫌われ者の権力者のアイコンとして利用されることが多いようだ。
浅草のウエスタンカーニバル世代のカウボーイ、カウガールたちの年齢を感じさせない傍若無人なエネルギーを老害と感じ、眉をひそめることもちょくちょくある。
どうやら、ジョン・ウェインらが出演していた頃のハリウッドにノーを突きつける風潮が生まれてきているのだろう。
骨髄移植拒絶反応が出始めた兄は新作曲の発表を急ぐ、アンコールでのラスト、弟たちの軍団は合唱隊となって、弟が二階席から指揮する。ステージ、観客席一体となるボレロは感動的。




